見出し画像

安齋はすごい。

 伊坂幸太郎さんの「逆ソクラテス」を読みました。感想が、安齋はすごい、の一言に尽きました。。
 この本は、ナレーターが小学6年生だった頃を思い出している中という世界観で物語は進み、そこで出会う安齋が大人たちの先入観を壊してやろうと画策し、ナレーターもそれに手伝う形で巻き込まれていくという内容です。細かなことを書くと、キリがないので今回は安齋の凄さについて書いていきます。

 安齋が最も凄い点は、小学6年生の時点で人の多様性を理解し、行動に移していること。他人の課題と自分の課題を一緒にしないことです。ある1つのシーンを紹介します。

土田「クサコちゃんは前にピンクの服を着てきて、女みたいだからクサコちゃんなんだよ!」
安齋「俺はそうは思わないな。ピンクの服を着たら女なの?というかさ、世界に何人いると思ってんの、ピンクの服を着る男の人なんてたくさんいるよ。服の色で性別なんて決まるわけないじゃん。」

 一言一句合っているかは定かではありませんが、上記のように彼は言っていました。(土田は登場人物で、いじめっ子です)草壁という、ある日ピンクの服を着たことで、あだ名を付けられてしまった子について話した内容でした。彼は口癖のように、先入観に囚われた人に対して、"俺はそうは思わない"と言って自分の意見を主張するんです。すごいですよね。。私もここまでハッキリとは言えないかもしれません。ハッとさせられました。加えて、性別を色や格好で判断することの浅はかさを指摘しています。やっぱりすごい。私が小学生の時は、ピンクを着ることは恥ずかしいと思っていました。ランドセルも青でしたし。

 安齋の凄さはこれだけでは無いんです。またまた、あるシーンを紹介します。

 安齋 「先生ってさ、なんでも自分が知っているというか、決めつけるところがあるよな。逆ソクラテスだよ。」
ナレーター 「逆ソクラテス?」
安齋 「昔凄い人がいて、ソクラテスって人。その人は自分が完璧じゃ無いことを知ることから始まるって言ってたんだよ。」

 彼らの担任の先生が、一種の恐怖政治を行っていて、言論や表現の自由を奪われていたんです。その担任に対して放った言葉が"逆ソクラテス"先入観に捉われた大人を指すんです。秀逸だ。。ここまで来ると、伊坂さんが天才ですね笑 自分がわからないことは認め、新しい知識としてどんどん吸収する安齋の人柄が分かりますね。彼はこの後、先生に対して、反抗し"俺はそうは思わない"と強く主張し従わない姿勢をとります。(個人的に最も興奮しました笑)

 話は少し変わりますが、現代の日本では、先生のような人が多く見受けられる気がします。私の周りにも思い当たる人が何人か。。こういう人たちは、自分の主観を相手に押し付けてしまう人なのだと思います。自分とは違う主観を持った人を弾圧し、表面上は自分と同様の主観に変えてしまうんです。ある種、主観の侵略とも言えますよね。 恐らくですが、この行為をしてしまう人は、他人の課題と自分の課題を混在してしまっている人なのではないでしょうか。安齋の言うように、自分と他人は違う存在です。考え方は違いますし、完璧に理解し合う、同意をすることは困難を極めます。しかし、先生たちは自分と違う意見を受け付けません。なぜなのか?私の推測ですが、他人の評価を過度に気にして生きてきた人なのではないかと思います。マジョリティが正しいと思い込み、自分の意見を大衆に埋没した結果、上手く人生を渡り歩いてしまったんです。社会的にも個人的にも成功して、自分の正しさを歪んで証明してしまった結果、それを色んな人に押し付けるのではないでしょうか。だからこそ、彼らは強いし、一般的に正しいように思える。私も、安齋の先生が自分の担任だったなら無思考に従っていたと思います。ですが、長くなりましたが、こんな"逆ソクラテス"な人と闘えるなんて、やっぱり 安齋はすごい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?