5000円、人生のやり直しに賭けて
2015年7月のある日、夜勤の現場作業アルバイトが終わり帰宅途中の出来事です。電車の始発がまだの時間帯でしたので、現場から上野駅の始発に向けて歩いている時のことです。
■出会いは突然
突然1人の男性に話しかけられました。困った様子で何か助けて欲しそうな状態でした。詳細なやり取りは省きますが、記憶を辿り概ね以下の内容。
・汗だく、汚れた服装
・大きめの荷物を背負っている
・秋田県由利本荘市出身
・住所と電話番号も紙に書いてもらいました
・若林さんと名乗る
・当時36〜37歳(と言っていた記憶)
・東京に出稼ぎに来たが仕事がなくなった
・東京で酷い仕打ちを受けたというような内容
・秋田の家に戻りたいがそのお金がない
・とりあえずは近くの日雇いの仕事に行ってみようと思っているが、仕事探しも難攻している
・服は近くの公園に水道があったので洗いながら着ている
・お金を貸して欲しい
・家に戻って仕事を始めたら口座に振り込んででも返しますと言う
・目や表情を見た感じもさすがに演技ではなさそうな雰囲気
■どうしたのか
そんな状況ある!?と突っ込みたくなる気持ちもありながら、本当にそうなんだとしたら大変だと感じ、見ている状況からも疑いようもありませんでした。
結局財布に入っていた内、自分の交通費を残して5000円を渡しました。人生をやり直すことができるように祈って。すごく感謝されましたし、握手を交わし、2ショット写真も撮りました。
このスマートフォンで撮った写真のバックアップが残っていたこともあり、位置情報も記録されていたので日時・場所を特定することができました。
⇒「2015年7月14日午前4時40分頃、台東区東上野五丁目交差点付近」
場所はうっすら記憶がありますが、日付を正確には覚えていませんでしたので、便利と言いますか、恐ろしいと言いますか。
■しばらくの後
ふと思い出し、ちゃんと戻れたのかどうか気になり、教えてもらった番号に電話をかけましたが、鳴りっぱなしで誰も出ません。
「まだ戻れていないのかなぁ」
と半分信じたい気持ちと、諦めの気持ちが入り混じります。
その数ヶ月後に思い出しては2、3度電話をかけてみましたが、鳴りっぱなしです。行く末は気になったものの、お金は問題ではないので、忘れることにしました。
■思わぬ展開!?
それから5〜6年経った、2021年10月のある日、1人の知人の投稿によって明らかになります。
同じような体験をしたと報告されていましたが、場所も年齢も内容も酷似していることから同じ人なのでは、と突然に思い出すことになったのです。
SNSで話題になっているということで調べてみますと色々出てきます。写真付きもあり、まさに同一人物で同じ体験をした人が他にもいます。
「生きていたんだ」という喜び半分と、話は嘘だったのかという落胆の気持ちが半分。それで生計を立てているのかなと思うとそれもまた人の生き方。色々な人がいて、色々な生き方があります。
■演技力が素晴らしい!
にしても、演技力が飛び抜けています!疑う余地ありませんでしたから。