K-POPカバーアート研究 【人物大人数編】
K-POPの多彩なカバーアートについて考えてみた自由研究です。以前Twitterで書いた内容に加え、最近のデザインも紹介しつつ加筆してnoteにまとめてみました。
分類
まずカバーアートは何を指すかというと、そのアルバムのメインビジュアル、いわゆるジャケットデザインですね。サブスクで再生した時に画面に出てくるそれです。まず大きく2つに分かれるのは人物が写っているか、いないか。K-POPのカバーアートの主流としては多分半数ぐらいは人物が写っていないタイポグラフィメインのデザインが用いられている。そこがまず日本と大きな違いで興味深いのですが、今回は人物が写っている場合のデザインに焦点を当ててみます。その中でも今回は人数の多いグループのカバーアートが研究テーマです。先に言っておきますと特に何か答えが出ている訳ではありません…。色々見てみるとおおよそ6パターンぐらいに分類できそうです。
無背景に全身
背景ありの全身
人物が重なって上半身
写真トリミング
グリッド
コラージュ
人数の多いグループは構図的にどうしても似てくるので、どう個性を出すかがアートディレクターの腕の見せ所ですね。全員を入れようとすると自ずと顔が小さくなるので、顔を見せるのか、全体でデザインとして見せるのかで方向が分かれます。ひとつずつ見ていきましょう。
①無背景に全身
顔の視認性は重要視せず、立ち姿の存在感と立ち位置のバランス+スタイリング+タイトルという最小限の要素で構成する1番ストイックな表現だと思います。個人的にはこれがハマった時が1番好きです。特にSTAYCの"STEREOTYPE"、TWICEの"Eyes wide open"は立ち位置や姿勢のバランス、タイトルの配置が秀逸です。
最近だとaespa "GIRLS"やNCT DREAM "Beatbox"などがありました。この2枚は特にタイトルのタイポグラフィに特徴を持たせていますね。アルバム全体のアートディレクションにもかなり活かされていました。
②背景ありの全身
①の要素に背景のセットや屋外の景色が絡んだ表現です。①との大きな違いは背景に意味を持たせることができることでしょうか。世界観を表現する上で1番コンセプトが現れるのが背景やセットな気がします。
最近でいくとこの辺り。2022年はこの手法が多い印象でした。背景があることでひとつストーリーを持たせることができ、コンセプトやそのアルバムが持つイメージを伝えることができます。アイコンとしての特徴も出やすいですね。どれもタイトルの入れ方が秀逸です。
③人物が重なって上半身
これもかなり多く取り入れられる手法。バストアップと言われる構図です。これは人物が重なってクローズアップしてるので単純に顔が見えやすいのが特徴だと思います。大人数でも顔をしっかり見せたいとなるとこの手法になるのでこの構図を選択する事務所は多いと思います。そんな中NCT 127の"STICKER"はシルエットで勝負してるのがすごくチャレンジングだと思います。①の手法に限りなく近い④ですね。シルエットのバランス、人物と空間の構図、背景の色ベタ、タイポグラフィ、完璧です。そして唐突に置かれたバーコードが全てを成立させています。近年でも最高のカバーアートのひとつだと思っています。
最近好きだったのはHIGHLIGHTの"DAYDREAM"。4人のバランスが絶妙で、シックな色味の中にネクタイや花のビビッドな差し色が効いています。目を瞑っているのもいいですね。タイトルを入れないのも最近よく見るようになりました。サブスクの画面に出る時は基本文字情報は端末側に出るのであえてカバーアートから外すということだと思っています。
④写真トリミング
近年よく目にするのがこのトリミングの手法。人物を入れることと、周りの色面やタイポグラフィデザインで個性を作るのいいとこ取りの表現ですね。小さい表示でも識別しやすく特徴を出しやすいです。
人物よりも背景と文字の色味が印象に残りますよね。スマホでアイコンとして小さくなった時も認識しやすいように思います。
⑤グリッド
全員の顔を均等に大きく見せる手法として1番ベーシックな手法だと思います。顔を覚えてほしいデビュー初期の頃や日本版のアルバムなどによく用いられる気がします。
とにかく顔がよく見えます。下のAcid Angel from Asiaのカバーアートはこの後の⑥コラージュの要素も少し入っていますね。
⑥コラージュ
デザインの手法としてはよく用いられる表現ですが、K-POPのカバーアートでは意外とあまり多くは見ないです。アート性が高くインパクトがあり、印象に残るデザインが多い気がします。人物を自由に配置できるのも特徴ですね。
最近はトレンド的にコラージュは少ない印象です。こちらのTO1の"WHY NOT??"も⑤グリッドに近いコラージュですね。
まとめ
冒頭にも記したように特に何か答えが出ている訳ではないですが、時代とともにカバーアートもトレンドがあり、その時代のデザインが象徴されています。これだけたくさんのアイドルグループがいる中で個性を作り、印象に残すのはとても大変なことだと思います。もちろんこの分類に当てはまらないものもありますが、総じて音楽と同様にK-POPの写真表現・デザインは本当にレベルが高いと思いますし、何より見ていて楽しいです。カバーアートの役割が、CD売り場で1番価値を持ち、その後棚にしまわれるCDジャケットの時代から、サブスクで曲を聴くたびに画面に現れるカバーアートに変わったことで、その価値は全く変わった気がします。
次回は【人物なし】のカバーアート自由研究をしてみたいと思っています。最後までお読みいただきありがとうございました。
こちらの記事で2022年K-POP総まとめをやってまして、「Best Cover Art」部門もありますので興味があれば覗いてみてください。
普段はこちらでK-POPのことを中心につぶやいています。
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