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化学問題4
以下の実験1と実験2についての文章を読み,問1~問7に答えなさい。
【実験1】
操作1:
ビーカーに 0.500 mol/L 塩酸を 2.00 L 入れると、その温度は $${t}$$ K であった。そこへ $${t}$$ K の 0.800 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液 0.500 L をよくかき混ぜながら加えた。その際の温度変化を記録したところ、図1のようになった。

操作2:
操作1のあと、混合溶液の温度が再び $${t}$$ K になったことを確認後、28.0 g の固体の水酸化ナトリウムを加えてよくかき混ぜたところ、溶液の温度が再び上昇した。
これらの実験において、生じた熱エネルギーは全て溶液の温度変化に利用されるものとし、溶液の混合や固体の溶解、その他の化学反応によって生じる体積の変化は無視するものとする。また、水やその他すべての溶液について、それらの溶液の密度を 1.00 g/cm³ とし、溶液 1.00 g の温度を 1.00 K 上昇させるのに必要な熱量を 4.20 J とする。
問1
操作1の結果から反応熱を見積もる際の温度変化量 ($${\Delta T}$$) をグラフから求める場合、どの値が最も適切か。以下のア~キから1つ選び、解答欄に記号で答えなさい。ただし、$${t, a, b, c, d}$$ のそれぞれはグラフで示した各温度である。
ア. $${a - t}$$
イ. $${b - t}$$
ウ. $${c - t}$$
エ. $${d - t}$$
オ. $${a - d}$$
カ. $${b - d}$$
キ. $${c - d}$$
問2
操作1における反応に伴う温度変化量 ($${\Delta T}$$) は 2.10 K であった。塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和熱は何 kJ/mol か、有効数字 3 桁で解答欄に答えなさい。
問3
操作2において、溶液の温度変化の測定から $${Q}$$ kJ のエネルギーが発生したことが分かった。水酸化ナトリウムと塩酸の中和熱を $${x}$$ kJ/mol とすると、この操作で固体の水酸化ナトリウムが溶液に溶解することで生じた熱量は水酸化ナトリウム 1 mol あたり何 kJ か。最も簡単な文字式を用いて解答欄に答えなさい。ただし、文字式には小数は用いないこと。
【実験2】
7種類の金属イオン ($${\text{Na}^+}$$, $${\text{Zn}^{2+}}$$, $${\text{Ag}^+}$$, $${\text{Ba}^{2+}}$$, $${\text{Cu}^{2+}}$$, $${\text{Pb}^{2+}}$$, $${\text{Fe}^{3+}}$$) を含む混合溶液を用意し、下の図2の手順に従い系統分析を行った。
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また、この系統分析で得られた沈殿や溶液を用いて、以下の3種類の分析を行った。
分析1:
$${\underline{①沈殿 D に希硝酸を加えて加熱すると沈殿は無色の気体を発生して溶け、}}$$
$${\underline{溶液には沈殿 D とは明らかに異なる淡い黄色の沈殿が生じた。}}$$
分析2:
分析1の反応後、沈殿を取り除いた溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えていくと青白色の沈殿が生じた。そこへ過剰量のアンモニア水を加えてよく混ぜると、沈殿は全て溶けて$${\underline{②溶液の色は深青色に変化した。}}$$
分析3:
ろ液Gの少量を白金耳につけて,ガスパーナーの炎に入れたとこ
ろ,$${\underline{③発色}}$$が確認された。
問題 4
沈殿C、沈殿F、沈殿Gの各化合物を化学式で表し、解答欄(ア)~(ウ)にそれぞれ答えなさい。
問題 5
下線部①を化学反応式で表し、解答欄に答えなさい。
問題 6
下線部②の溶液の色を呈する原因となっているイオンの名称を解答欄に答えなさい。
問題 7
下線部③の発色は何色か。解答欄に答えなさい。
$${\large📊 難易度評価と解答時間目安 📊}$$
$${\boxed{🔹難易度:★★★★☆(やや難)}}$$
この問題は、熱化学・溶解度積・系統分析(無機化学)・定性分析(化学反応) の知識を組み合わせる必要があり、やや難しい。
$${\underline{\large✔理由}}$$
・問1~問3では、熱化学の計算(温度変化・エンタルピー計算)が求められる。
・問4~問7では、系統分析の知識(沈殿反応・イオンの定性分析・炎色反応)が問われる。
$${\underline{\large✔どのレベル向け?}}$$
・標準レベル~難関大学向けの化学受験生向け。
・化学反応の熱力学的考察や、無機化学の知識をしっかり学んでいる人向け。
$${\underline{\large⏳解答時間目安}}$$
・化学が得意な人:30~40分
・一般的な受験生:50分以上
・化学が苦手な人:時間内に解答するのは困難
$${\underline{\large💡難所ポイント}}$$
・問1:温度変化の読み取りが正確にできるか。
・問3:文字式を用いた熱量変化の考え方を理解できるか。
・問4~問7:系統分析における各沈殿の化学式や炎色反応の色を適切に答えられるか。
$$
{\begin{Vmatrix}✨\\
\bold{熱化学と無機化学の知識を}\\
\bold{組み合わせて解こう!}\\
✨\end{Vmatrix}}
$$

$${\large📝解答・解説📝}$$
【問1】 温度変化量 $${\Delta T}$$ の適切な値
グラフから 温度上昇のピークと最初の温度の差 を求める。
最も適切な温度変化:
$${\Delta T = c - t}$$
答え:ウ. $${c - t}$$
【問2】 中和熱の計算
(1) 溶液の質量の求め方
溶液の総質量:
$${(2.00 + 0.500) \text{ L} \times 1.00 \text{ g/cm}^3 = 2.50 \times 10^3 \text{ g}}$$
(2) 吸収熱の計算
$${Q = mc\Delta T = (2.50 \times 10^3) \times 4.20 \times 2.10}$$
$${= 2.205 \times 10^4 \text{ J} = 22.1 \text{ kJ}}$$
(3) 1 mol あたりの中和熱
$${\text{HCl の物質量} = (2.00 \times 0.500) = 1.00 \text{ mol}}$$
$${\text{NaOH の物質量} = (0.500 \times 0.800) = 0.400 \text{ mol}}$$
反応物の少ない NaOH が制限試薬 なので:
$${\text{中和熱} = \frac{22.1}{0.400} = 55.3 \text{ kJ/mol}}$$
答え:55.3 kJ/mol
【問3】 固体水酸化ナトリウムの溶解熱
発生熱量:
$${Q \text{ kJ}}$$
水酸化ナトリウムの物質量:
$${n = \frac{28.0}{40.0} = 0.700 \text{ mol}}$$
1 mol あたりの溶解熱:
$${\frac{Q - 0.700x}{0.700}}$$
答え:$${\frac{Q - 0.700x}{0.700}}$$

【問4】 各沈殿の化学式
沈殿C(クロム酸カリウム反応):
$${\text{PbCrO}_4}$$
沈殿F(硫化水素を通す):
$${\text{CuS}}$$
沈殿G(炭酸アンモニウム反応):
$${\text{BaCO}_3}$$
答え:
(ア) $${\text{PbCrO}_4}$$
(イ) $${\text{CuS}}$$
(ウ) $${\text{BaCO}_3}$$
【問5】 化学反応式
沈殿Dに希硝酸を加える反応:
$${\text{PbS} + 2\text{HNO}_3 \rightarrow \text{Pb(NO}_3)_2 + \text{H}_2\text{S}}$$
答え:$${\text{PbS} + 2\text{HNO}_3 \rightarrow \text{Pb(NO}_3)_2 + \text{H}_2\text{S}}$$
【問6】 深青色の溶液の原因となるイオン
銅(II)イオンがアンモニアと錯イオンを形成:
$${\text{[Cu(NH}_3)_4]^{2+}}$$
答え:テトラアンミン銅(II)イオン
【問7】 炎色反応の発色
ろ液Gに含まれる金属イオンは Ba²⁺(バリウム)。
バリウムイオンの炎色反応は 黄緑色。
答え:黄緑色
$${\large🌟ワンポイントアドバイス🌟}$$
✅ 熱化学の計算では、
・吸収熱の計算式 $${Q = mc\Delta T}$$ を確実に使う!
・制限試薬を考慮して 1 mol あたりのエンタルピー変化を求める!
✅ 系統分析では、
・イオンの反応と沈殿を正確に把握する!
・炎色反応の色は暗記しておく!
$$
{\begin{Vmatrix}✨\\
\bold{熱化学と無機化学の基本を押さえ}\\
\bold{得点源にしよう!}\\
✨\end{Vmatrix}}
$$
