結論「プレイイントーナメントは廃止でよくね?」
インシーズントーナメントはレブロン・ジェームズとアンソニー・デイビス率いるレイカーズが優勝しましたね。
でも。
推しとか関係なくこんなに真剣に戦う姿を引き出せるならプレイイントーナメント要らないよねと思ってしまいました。
その理由について述べさせていただきたいと思います。
そもそもプレイイントーナメントって何?
『プレイイントーナメント?何それ??』と思った方もいらっしゃると思うので、よく理解できていない方向けに簡単に説明すると。
NBAのプレイオフに出場する7位と8位シードのチームを決める戦いのことを指します。
そもそもNBAではプレイオフが4月中旬から6月下旬にかけて行われます。
NBAはイースタンカンファレンスとウェスタンカンファレンスに分かれていて、それぞれのカンファレンス1位から8位を決める仕組みになっていて、7戦4勝先勝方式で全てを戦う仕組みになっています。(1983-84シーズンから1位から8位まで戦う仕組みが作られ、2002-03シーズンから7戦4勝先勝方式になっています)
2019-20シーズンから意図的な敗戦の減少、先発メンバーの不出場などによって試合の面白みが減少し、ファーストラウンドのGame 1をアウェイで戦うことになる、カンファレンスの5位から8位チームがプレイオフを真剣に闘うベネフィットがないという意見が相次ぎ、下位チームの奮起を促す目的で導入されたのがプレイイントーナメントでした。
スポルティングニュースさん
https://www.sportingnews.com/jp/nba/news/nba-play-in-tournament-format-live-streaming-tv-schedule/nng3tl4pjgnamaamtzlbmaaz
NBAレポーターさん
https://nbareporter.net/2021/05/18/01-56/
何故プレイイントーナメントは廃止が正解なのか?
この見出しを見ると、『仰々しい言い方?!』と思われた方もいると思います。実は賛否両論が分かれていたので、結構な私見や偏見になるところもあるのですが、試合の母数を増やすことによる怪我のリスクのみを増大させることのみならず、レギュラーシーズンを真剣に戦うための要素を充実させる方が意図的に敗北するチームの減少や健康管理に気をつけることが出来るからだと考えます。
その一つが2023-24シーズンから導入され、冒頭でもお話しした『インシーズントーナメント』と呼ばれるものです。
インシーズントーナメントとは、レギュラーシーズン中に行うカップ戦のことで、まずは東西のカンファレンスで5チームの3グループに分かれて総当たり戦のグループプレー戦を行います。その後、各グループの最高成績チームと両カンファレンスからワイルドカードの1チームの計8チームが一発勝負のトーナメントを戦います。
その結果、優勝したチームにはそれぞれ50万ドル、準優勝チームには20万ドルの賞金を貰える仕組みです。
2023-24のレイカーズはディフェンシブレイティングが100前後と良い数字を残していました。
ディフェンシブレイティングとはオフェンス100回あたりの失点のことを指します。失点は少なければ少ないほど良いものであるので、このレイティングが低ければ低いほど守備が良いチームであることの証拠となります。こうした真剣度の向上も『プレイイントーナメントの廃止が正解』となる理由と考えます。
二つ目は『クリスマスゲーム』の存在。
これも実は最初に行われたシーズンが1947-48シーズン。つまり、76年前から毎年12月25日に行われていて現在も継続されている伝統あるゲームです。
このゲームは高い視聴率が期待される対戦が多い傾向があります。
2023-24シーズンはニックス対バックス、ヒート対76ers、レイカーズ対セルティックス、サンズ対マーベリックス、ナゲッツ対ウォリアーズが組まれています。
個人的な注目としては、長年のライバル関係にあって、優勝回数が共に17回を誇るレイカーズ対セルティックスが組まれている点。クリスマスゲームにこの試合を行うのは2008-2009シーズン以来であり、レイカーズのエースでもあるレブロン・ジェームズは怪我さえなければクリスマスゲームの出場記録を18に更新する見込みとなっているので、ここもレギュラーシーズンに対する真剣な戦いを期待できる1戦ではないかと思料しています。この仕組みはまさにレギュラーシーズンの仕組みを整えて解決することにつなげる努力になっているので、『プレイイントーナメントの廃止が正解』となる理由かと。
三つめは『ライバルウィークの存在』。
これは2022-23シーズンから1月中旬に導入されたゲームであり、導入初年度となった昨季は、レイカーズ対クリッパーズ、ニックス対ネッツなどが行われていました。
盛り上がりが予想されるゲームには以下のゲームが挙がっていました。
5位にグリズリーズ対ティンバーウルブズ
4位にレイカーズ対クリッパーズ
3位にナゲッツ対76ers
2位にレイカーズ対セルティックス
1位にウォリアーズ対グリズリーズ
という具合なのですが、このスケジュールの組み方にもレギュラーシーズンでの真剣な戦いを重視している様子が窺えました。
2023-24シーズンもネッツ対ニックス、レイカーズ対クリッパーズが初日に組まれていて、昨季のプレイオフでGame 7に縺れたウォリアーズ対キングスやGame 6の激闘になったウォリアーズ対レイカーズなども組まれているので、レギュラーシーズンの仕組みを整えて解決する努力の一つであることが『プレイイントーナメントは廃止が正解』と感じた理由です。
四つ目は『個人タイトルのルールの改正』にあります。
少し話が脇道に逸れますが、従来のプレイオフを決める戦いにおいては上位チームによる意図的な先発外しや敗北が目立つなどしていたことで試合の面白みが激減していた実情がありました。
それって一見個人タイトルに関係ないという見方をされがちですが、そんなことはなくて、高いチケットを購入したのに目当てになる選手が見られないだけではなく、試合に出場することでチームに貢献できているという事実の母数が少なくなることにもつながっています。何なら試合出場数が足りないからタイトルが獲得できないことにもつながっていました。
それを是正するために2023-24シーズンから個人タイトルを獲得するためには65試合以上出場しないと与えないというルールを設けました。
これであれば選手も意図的に欠場することが減少する見込みと踏んでいるようで、レギュラーシーズンの仕組みを整えて解決することにつなげる努力の一つなのでやはり『プレイイントーナメントは廃止が正解』。
五つ目は『チーム作りで10位を目指すことに対する依存が生まれる懸念』があります。
先ほども言いましたが、プレイイントーナメントはプレイオフでの7位と8位シードを決めるトーナメントです。9位と10位を目指すトーナメントではありません。
9位や10位でプレイオフには進出できないのですが、プレイイントーナメントによって、9位と10位のチームにも2回勝つことでプレイオフ進出のチャンスが与えられることになっています。
蓋を開けたらどうなったかをここで見てみましょう。
2020-21シーズンの9位10位戦はどうなったでしょうか。
イースタンカンファレンスから。
この年はペイサーズが9位、ホーネッツが10位でシーズンを終えました。
その結果は144-117でペイサーズが勝ちました。
ウェスタンカンファレンスはというと
この年はグリズリーズが9位、スパーズは10位でシーズンを終えました。
その結果は100-96でグリズリーズの勝利。
賢い方はお気付きだと思いますが、この年だけでのデータとはいえ、10位のチームが勝ち上がっていないのが分かりますよね。
つまりは、順位以上にディフェンスが良くないチームはプレイオフに出られても勝てないことの証左になってしまっていることが結果で裏付けられただけに過ぎない。
因みに僕はバスケットボールの競技経験は全くありません。NBAを20年近く観戦していて思ったのが、コーチがそもそも多忙な時間を割いて準備しても5人がコートの上で噛み合わないと、全てが思い通りにうまくいくわけではないのに、勝てないチームってコーチの起用法や采配、選手の一つのターンオーバーやシュートミスなど複雑な要素が絡み合って敗北になってしまうと理解しています。下位に甘んじているチームは『今いる戦力で勝つにはどうしたらよいのか』を考え、実行に移すことが求められるのに、それをやらずにプレイイントーナメントを目標にチーム作りをすることが習慣化することにつながる可能性もあるので、長い目で見たときにはやはり『プレイイントーナメントは廃止が正解』としか思えません。
文章の冒頭でお伝えしたように、プレイオフはカンファレンス1位から8位までしか進出が認められないのであり、9位10位を目指すものではありませんので。
六つ目は『5位から8位のチームは1位から4位のチームに勝てないと思い込んでいて、それを掴み取る大変さに対してリスペクトを欠いている』
これも懸念点の一つで、1994年のナゲッツが当時カンファレンス1位だったシアトルスーパーソニックスに3-2で勝利したことで『5位から8位は上位シードに勝てない』という思い込みはすでに壊れています。
それをきっかけに、1995年のロケッツが第6シードながらファイナルに進出して優勝を果たす結果になり、1999年のニックスが8位シードで史上初のファイナル進出。2007年のウォリアーズが67勝したマーベリックスに4-2で勝利し、2011年にはグリズリーズが61勝したスパーズを4-2で勝利し、2012年の76ersがブルズに4-2で勝利し、2023年のヒートも58勝したバックスに4-1で勝利しファイナルへ進出を果たしました。
この例を見るだけでもカンファレンス5位から8位のチームは仮にプレイオフへ進出しても1位から4位のチームには勝てないという思い込みは愚かな考えであるかは一目瞭然ですよね。
因みに8位シードを掴む大変さを観戦している側として肌で実感したのは、カリーを中心としたウォリアーズが最初に優勝した2014-15シーズン。
2015年2月6日の試合で当時ペリカンズのアンソニー・デイビスが3Pシュートでゲームウィナーを決めたことがありました。
この年のサンダーはデュラントが怪我に苦しんだシーズンであり、8位シードを続く戦いが激化していて、サンダーは最後の2試合を連勝で終えて45勝するものの、同じ45勝をしたペリカンズに対戦成績で上回られてしまったことでプレイオフを逃すことに。
ということからすると、7位シード、8位シードを獲得するにも、怪我での長期離脱で采配や選手の動きなどの変化が生じると、いつ勝てなくなってもおかしくないし、余計に試合の母数を増やして怪我のリスクを大きくするのは違うと言うことをリーグが理解しているのかというと甚だ疑問。だとすれば『プレイイントーナメントは廃止が正解』となるしかないと思った次第です。
終わりに
私見偏見が色々混じった長文となりましたが、要は
レギュラーシーズンの仕組みを整えて解決することにつなげるのが正解
ということでございます。
先ほどのインシーズントーナメントが支持された理由は、僕が考えるにNCAAと一緒で一発勝負にすることでゲームに臨むことに対する真剣度の向上につながったことが大きな要因と考えます。もう一つは個人タイトルのルールが改正され65試合以上出場しなければタイトル獲得は認めない方針にしたことで、個人タイトルを狙う選手たちが怪我のリスクを最小にするには何が必要かを各々が考える仕組みにしたのもポイントではないかと考えます。高いお金を払ってNBAを見るからすれば応援している選手が観たいと思うのはファンの自然な感情だと思うので。
今季はどこが優勝するのかは予想もつかないけれど、レギュラーシーズンの仕組みがどこまで整うかにも注目しながら見守りたいと思います。
お付き合いありがとうございました