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1x.com 挑戦記: 70 - 1x.com から得たもの -
最後は私が 1x.com に受けた影響や学んだ事、またそこからどのような成長をしたのかについてまとめます。
写真に対する向き合い方
いわゆる写真の量産
2023 年 3 月に Leica Q2 を買って以降、1x.com を始めるまでは撮って出しや Lightroom を使った簡単な現像だけでした。最終確認はインスタの小さい画面のみで携帯で見た時に「目につくか」が基準でした。
それは悪いことでは無く、ただ選択肢を持っていなかった感じです。以下は現像を始めた頃の写真達。もちろん全て思い入れがあり好きです。
写真から作品へ: ファインアート
1x.com を始めて「写真」から「作品」への昇華や「ファインアート」という概念を強く意識するようになりました。インスタや雑誌に載っている多くの写真の一枚ではなく、壁に単独で飾るための「作品」を意識した時、主題の選択や現像の手法は大幅に変わりました。
小さいころから写真展や絵画展によく連れて行って貰ったり、ファッションが好きだったり、建築好きだったり、「クリーンでミニマムなアート」作品は潜在的に好きだったのかもしれません。
どれも現像は甘いですが、当時のインスタを見ても片鱗は感じます。
鑑賞サイズの変化と真剣さの向上
それまでインスタの画面で見てた写真を急に PC の大きな画面で見た事で、より多くのことを考える様になりました。
Lightroom で編集するなら PC で見ていたでしょ?と思うかもしれませんが、完成形がインスタの意識であっため、拡大の仕方や詳細の考え方が全く違いました。
また仕事でも経験があるかもしれませんが、誰かに対して成果物を「提出」すると、その直後にミスや改善点に気付くものです。その繰り返しがより細かく、丁寧に自分の作品を見る機会となりました。
現像とレタッチの許容範囲
また 1x.com を始めてしばらくしてから、多くの公開作品に触れ、クリティックフォーラムで意見を交わしたことにより、自分の中で「許容」できる現像やレタッチの範囲が大きく変わりました。
初めの頃:
クロップ
回転による水平・垂直の修正
トーンの調整
1x.com を始めた後:
色温度の変更
各色の彩度、色相、輝度の変更
不要なものの除去、ノイズ除去
拡大/縮小、水平、垂直変形などあらゆる変形
マスクを多用した編集
撮影したものをできるだけ「そのままの状態」で仕上げるより、「意図した状態」に近づけることが目的となったことが大きかったです。これまでのシリーズの before/after を見ていただいた方には伝わると思います。
撮影や編集技術
技術というほど大した事ではありませんが、撮影時も編集時もより多くの事を考える様になりました。10年くらい続けていれば、性格上最終的には同じ結果に辿り着いたと思いますが、大幅に期間を短縮できたと思います。
書ききれませんが、一部をメモとして残します。
編集を前提とした仕上がりを意識した構図
後から変えられる要素と変えられない要素の区別
光や影をより意識した撮影
立体的に意識した垂直、水平
写りの綺麗さと解像を優先にした撮影
マスクを使う前提での露出の決め方
後から選択できるように複数の選択肢ををカットで残す
AI 削除を前提とした人物や車の入れ方
鑑賞者の見方を想定したクロップ
意図したポイントを上手くマスクする方法
各パラメーター変更時における像の変化がどうなるか
色の出し方や消し方、モノクロとカラーの使い分け
具体的な話を書くと無限なので、興味ある人は個別に聞いて下さい。
発表の場の拡大
インスタが全てだった以前とは違い、1x.com を始めてから急に発表の場が増えました。
1x.com ギャラリー
もちろん初めは 1x.com のギャラリーです。審査をパスした作品のみが公開される方式であるため、自分のギャラリーに初めはなにもない状態から始まりますが、だんだん増えていくのは最高の体験だと思います。
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プリントと個展
大きな画面で見る作品は迫力がありますが、プリントには勝てません。真剣に作品を作る様になった事で、個展もできました。
zine の制作
個展では毎回数名の方に作品を購入いただけますが、もっと気軽に、また違う形式で何かを作りたいということで zine の作成もやりました。文章を書ける友人である @masaki_timeless とコラボで制作し、物理本も Kindle 版も作って楽しかったです。
なぜ 1x.com を辞めたのか
これほど多くの事を学べた、最高に楽しい 1x.com を辞めた理由はいくつかあります。
自分の好きなジャンルが見つかった
初めは何を撮ればいいのか、何が好きなのか分からず、様々なものを撮影していましたが、インスタ公開後の振り返りが無さ過ぎて自己分析が出来てませんでした。
しかし 1x.com で真剣に自分の作品を振り返らざる得ない状況になったことや、他の公開作品を沢山見た結果、自分が何が好きかが改めてはっきりしました。これで 1 つ目的が達成できました。
ある程度の技術が身についた
イタリアの写真を審査に出すころには、Lightroom にもだいぶ詳しくなり、編集という観点からは技術が身についてきた気がします。また撮影も Leica Q2 単体だけを持って外で撮影するという条件に限れば、遥かに上達したと思います。
公開される作品の傾向が分析できた
日々進化する 1x.com ではありますが、ある程度どのように撮影して編集すれば公開されるか、アワードが取れるかなど分かる部分も増えてきました。1x.com に合わせた作品作りをしていた目的が 1 つ達成できました。
方向性の違い
なんかミュージシャンみたいな言葉ですが、イタリア撮影旅行で思い出したスナップ撮影の楽しさや、ファインアートとはまた異なった写真の楽しさ。自分の好きな作品が必ずしもアワードにならず、アワードになる作品が必ずしも最高に好きと言う訳でもない。
やりたい写真と 1x.com のズレを正しく認識できました。
復帰はいつするか
street/architecture 分野は好きですし方向性もはっきりしてきた一方、その他多くのジャンルは全く経験がありません。2025年はポートレートや動物、風景や物撮りなど、これまで経験がないジャンルをしっかり勉強して、その後で作品を作れると思えるタイミングが来たら、また挑戦したいと思います。
最後に - 人とのつながり -
1x.com を始めて一番良かったなと思う事は、人とのつながりです。これまでは「作風」や「テーマ」などが良いなと思った人をインスタでフォローする程度の交流でしたが、1x.com が 1 つのキーワードとしてより多くの人と意味のある繋がりが出来たと実感してます。
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個展を開いた際も、1x に挑戦している他の写真家の方が多く遊びに来てくれました。1x.com をやっていなければここまで多くの人とつながらなかったと思いますし、私も多くの展示にお邪魔しました。
2025 年に一緒に展示したい人も数人いますし、スレッズ上も 1x.com をきっかけに繋がっている人が沢山いますしこれからも増えるでしょう。
数えきれない人に感謝してますが、特に 1x.com を始めるきっかけになった @ryuta と、このシリーズを書くきっかけになった @egout_hs の二人には特に大きな感謝を。
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1x.com 挑戦記 61-最後まで
1x.com 挑戦記の 61 - 最後までのまとめマガジンです。全部読みたい方は是非こちらをご検討ください。
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