米CDCはPCR検査を変更するわけではない
某氏が自身のサイトに「米CDCがPCR検査を変更する」という記事をアップしていて、それを見た人がやっぱりPCR検査はダメなんだとツイートしてるんだけど、これは明らかな誤解。
米CDC(米国疾病予防管理センター)が2021年12月でPCR検査をやめる!って騒いでいる人がこのnoteにもいますけど、それも誤解です。
某氏が引用しているニュースから米CDCの元記事を見てみると
タイトル部分はGoogle翻訳で翻訳しちゃうと「SARS-CoV-2検査のためのCDCRT-PCRへの変更」って変な訳になっちゃうけど、これはChange toが頭にきているので「~の変更」かな。つまり「SARS-CoV-2検査のためのCDCRT-PCRの変更」となる。
After December 31, 2021, CDC will withdraw the request to the U.S. Food and Drug Administration (FDA) for Emergency Use Authorization (EUA) of the CDC 2019-Novel Coronavirus (2019-nCoV) Real-Time RT-PCR Diagnostic Panel, the assay first introduced in February 2020 for detection of SARS-CoV-2 only. CDC is providing this advance notice for clinical laboratories to have adequate time to select and implement one of the many FDA-authorized alternatives.
「2021年12月31日以降、CDCは、CDC 2019-Novel Coronavirus(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネルの緊急使用許可(EUA)を求める米国食品医薬品局(FDA)への要求を撤回します。 SARS-CoV-2のみを検出するために2020年2月に最初に導入されたアッセイ。CDCは、FDAが承認した多くの代替案のいずれかを選択して実装するための十分な時間を臨床検査室に提供するために、この事前通知を提供しています。」(Google翻訳)
※Assey:アッセイ→試験方法
※「SARS-CoV-2のみを検出するために2020年2月に最初に導入されたアッセイ。」部分が途切れちゃってるけど、原文からすると「2021年12月31日以降、CDCは、SARS-CoV-2のみを検出するために2020年2月に最初に導入されたアッセイであるCDC 2019-Novel Coronavirus(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネルの緊急使用許可(EUA)を求める米国食品医薬品局(FDA)への要求を撤回します。」となるのかな。
ぱっと見、米CDCが米FDAにEUA(緊急承認)を要求したPCR検査を別の検査に12月末から変更する…ように読めてしまうけど、ポイントは、この文章の中の「the CDC 2019-Novel Coronavirus (2019-nCoV) Real-Time RT-PCR Diagnostic Panel」の部分。
Googleさんで訳すと「CDC 2019-新規コロナウイルス(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」。
んん?リアルタイムRT-PCR診断パネル?なんだろ?
で、これを調べるとちゃんと米CDCに情報があります。
ページタイトルは
CDC’s Diagnostic Test for COVID-19 Only and Supplies
「CDCのCOVID-19のみおよび消耗品の診断テスト」(Google翻訳)
原文からすると「CDCのCOVID-19限定診断テストおよび消耗品」が正解かな。
冒頭部分は、
The CDC 2019 Novel Coronavirus (2019-nCoV) Real-Time RT–PCR Diagnostic Panel detects the SARS-CoV-2 virus in upper and lower respiratory specimens. It is designed to be used with an existing RT-PCR testing instrument commonly used to test for seasonal influenza virus.
「CDC 2019新規コロナウイルス(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネルは、上気道および下気道の検体でSARS-CoV-2ウイルスを検出します。 これは、季節性インフルエンザウイルスの検査に一般的に使用される既存のRT-PCR検査機器で使用するように設計されています。」(Google翻訳)
つまり、この「CDC 2019新規コロナウイルスリアルタイムRT-PCR診断パネル」は、既存の季節性インフルエンザウイルス用のRT-PCR検査機器で新型コロナウイルスの検査ができるように開発された試薬などの診断キットのこと。
日本語的に書くと「CDC製2019新型コロナウイルスリアルタイムRT-PCR診断キット」かな。
これを米CDCが米FDAにEUA(緊急承認)するように求め、2020年2月に承認されていたみたい。
→このEUAされたCDCの診断パネルの使用説明書は米FDAのサイトからダウンロードできる。https://www.fda.gov/media/134922/download
ここまで理解して、今回の発表を読むと、今回「その要求を撤回して、別の検査方法・診断キットに変更し、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザウイルスの検査のリソースと時間の節約をはかりましょう」という内容に読み取れる。
CDC encourages laboratories to consider adoption of a multiplexed method that can facilitate detection and differentiation of SARS-CoV-2 and influenza viruses. Such assays can facilitate continued testing for both influenza and SARS-CoV-2 and can save both time and resources as we head into influenza season.
「CDCは、SARS-CoV-2とインフルエンザウイルスの検出と識別を容易にすることができる多重化された方法の採用を検討することを研究所に奨励しています。 このようなアッセイは、インフルエンザとSARS-CoV-2の両方の継続的な検査を容易にし、インフルエンザの季節に向かうときに時間とリソースの両方を節約することができます。」(Google翻訳)
つまりPCR検査を別の検査に変更するのではなく、「CDC製2019新型コロナウイルスリアルタイムRT-PCR診断キット」を使った検査から米FDAが承認した他の検査・診断キットに移行してインフルエンザの季節に備えましょうねという話じゃないかと(どこにも精度が悪いとか、信頼度が低いとは書いてないし、米FDAが承認している他の検査・診断キットには多くのRT-PCR検査も含まれる)。
いまは同時に新型コロナウイルスと季節性インフルエンザウイルスを検査できる診断キットもあるんですね。→たぶんOnlyじゃなくてMultipulexってのがそうなのかな?
確かに「Real-time RT-PCR Diagnostic Panel」って何か知らないと勘違いするかもしれないけど、それって専門家に取材すればすぐわかることじゃないだろうか?
自分の主張に合うニュースを世界中から引っ張ってくるだけで、自身では取材しないスタイルなんだなぁと。
まあ、おかげでいろいろ知ることもできたし、感謝しよう。
追加:
ロイターによるファクトチェック
ちょっとGoogleさんでは翻訳しづらいのが難点。
追記:
一応、日本語のも
余談ですが、「公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター」はルイ・パスツールとはなんの関係も無い日本の研究所です。
ちなみにフランスのパスツール研究所ではRT-PCR検査について以下のようなページを公開しています。
タイトルは、
FONCTIONNEMENT ET FIABILITÉ DES TESTS RT-PCR POUR LA DÉTECTION DU SARS-COV-2
「SARS-COV-2を検出するためのRT-PCRテストの機能と信頼性」(Google翻訳)
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