見出し画像

米FDAの文書に「PCR検査のプロトコルは人の細胞と風邪ウイルスの断片を使って設計された」と書かれているわけではない

米FDAの文書に「PCR検査のプロトコルは人の細胞と風邪ウイルスの断片を使って設計された」と書かれている!

こういうニュースが流れてきたら、え?まじ?じゃ、原文をチェックしてみよう…と思うたちなので、調べてみました。

ニュースからリンクが張られているのはPDFファイル
https://www.fda.gov/media/134922/download

PDFファイルは厄介なんですよねぇ。コピペすると行ごとに改行が入っちゃうから、一旦テキストエディターにコピーして、改行を取るところから始めないと。途中改行はスペースが入ってるとかだったら自動で整形できるんだけど…。

この文書は何かというと、

CDC 2019-Novel Coronavirus (2019-nCoV) Real-Time RT-PCR Diagnostic Panel

For Emergency Use Only

Instructions for Use
CDC 2019-新規コロナウイルス(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネル

緊急使用のみ

使用説明書
(Google翻訳)

2020年2月に米FDAに緊急承認(EUA)された、米CDCが設計したリアルタイムRT-PCR診断パネルの使用説明書ですね。

このリアルタイムPT-PCR診断パネルについては前記事参照

で、だいたいのニュースや記事には、「ヒトA549細胞」とか、「全長RNA(N遺伝子;GenBank accession: MN908947.2)」と書かれているので、まずはこれで検索してみる。

すると文書の41ページが該当部分と分かったので、見てみると、ページのタイトルと続く見出しは、

Performance Characteristics
Analytical Performance:
Limit of Detection (LoD):
性能特性
分析パフォーマンス:
検出限界(LoD):
(Google翻訳)

続く文章は、

LoD studies determine the lowest detectable concentration of 2019-nCoV at which approximately 95% of all (true positive) replicates test positive. The LoD was determined by limiting dilution studies using characterized samples.
検出限界(LoD)研究では、2019-nCoVの検出可能な最低濃度が決定されており、すべての(真陽性)の約95%がテスト陽性を再現しています。 検出限界(LoD)は、特性化されたサンプルを使用した限界希釈研究によって決定されました。(Google翻訳)

※LoDは、検出限界(LoD)としてあります。

「新型コロナウイルスのRNAが最低どのくらい含まれていれば検出できるか」をどうやって調べたか書かれていることが分かります。

続けて問題部分(翻訳精度を上げるため、ピリオドごとに改行)、

Since no quantified virus isolates of the 2019-nCoV were available for CDC use at the time the test was developed and this study conducted, assays designed for detection of the 2019-nCoV RNA were tested with characterized stocks of in vitro transcribed full length RNA (N gene; GenBank accession: MN908947.2) of known titer (RNA copies/µL) spiked into a diluent consisting of a suspension of human A549 cells and viral transport medium (VTM) to mimic clinical specimen.
Samples were extracted using the QIAGEN EZ1 Advanced XL instrument and EZ1 DSP Virus Kit (Cat# 62724) and manually with the QIAGEN DSP Viral RNA Mini Kit (Cat# 61904).
Real-Time RT-PCR assays were performed using the Thermo Fisher Scientific TaqPath™ 1-Step RT-qPCR Master Mix, CG (Cat# A15299) on the Applied Biosystems™ 7500 Fast Dx Real-Time PCR Instrument according to the CDC 2019-nCoV Real-Time RT-PCR Diagnostic Panel instructions for use.
テストが開発され、この研究が実施された時点では、2019-nCoVの定量化されたウイルス分離株はCDCで使用できなかったため、2019-nCoV RNAの検出用に設計されたアッセイは、in vitroで転写された完全長RNAの特性評価されたストックでテストされました(臨床検体を模倣するために、ヒトA549細胞の懸濁液とウイルス輸送培地(VTM)からなる希釈液にスパイクされた既知の力価(RNAコピー/μL)のN遺伝子; GenBankアクセッション:MN908947.2)。
サンプルは、QIAGEN EZ1 AdvancedXL機器とEZ1DSPウイルスキット(カタログ番号62724)を使用し、QIAGEN DSPウイルスRNAミニキット(カタログ番号61904)を使用して手動で抽出しました。
リアルタイムRT-PCRアッセイは、CDC2019に準拠したAppliedBiosystems™7500FastDxリアルタイムPCR装置でThermoFisher ScientificTaqPath™ワンステップRT-qPCRマスターミックスCG(カタログ番号A15299)を使用して実施しました。 nCoVリアルタイムRT-PCR診断パネルの使用説明書。

まだカッコの位置とか、調整が必要そうなので、原文を確認しつつ調整すると、

テストが開発され、この研究が実施された時点では、2019-nCoVの定量化されたウイルス分離株はCDCで使用できなかったため、2019-nCoV RNAの検出用に設計されたアッセイは、臨床検体を模倣するために既知の濃度(RNAコピー/μL)のin vitroで転写された特性評価された株(ストック)の完全長RNA(N遺伝子; GenBankアクセッション:MN908947.2)を添加(spiked)したヒトA549細胞の懸濁液とウイルス輸送培地(VTM)による希釈液でテストされた。
サンプルは、QIAGEN EZ1 AdvancedXL機器とEZ1DSPウイルスキット(カタログ番号62724)を使用し、QIAGEN DSPウイルスRNAミニキット(カタログ番号61904)を使用して手動で抽出しました。
リアルタイムRT-PCRアッセイは、CDC2019に準拠したAppliedBiosystems™7500FastDxリアルタイムPCR装置でThermoFisher ScientificTaqPath™ワンステップRT-qPCRマスターミックスCG(カタログ番号A15299)を使用して実施しました。 nCoVリアルタイムRT-PCR診断パネルの使用説明書。

となる感じでしょうか。

この中の完全長RNA(N遺伝子; GenBankあセッション:MN908947.2)をネットで検索すると、データベースがヒットします。(検索は原文のN gene; GenBank accession: MN908947.2で)

タイトルは

Wuhan seafood market pneumonia virus isolate Wuhan-Hu-1, complete genome

これをGoogleさんに訳してもらうと、

「武漢シーフードマーケット肺炎ウイルス分離武漢-Hu-1、完全なゲノム」

…、思いっきり新型コロナウイルスですね。

あと、「in vtro」ですが、Googleさんで検索すると

「in vitro(イン・ビトロ)とは、“試験管内で(の)”という意味で、試験管や培養器などの中でヒトや動物の組織を用いて、体内と同様の環境を人工的に作り、薬物の反応を検出する試験のことを指します。 分子生物学の実験などにおいて用いられます。」

と出てきます。

これらの情報を理解して読むと、「試験に使う模倣臨床検体は新型コロナウイルスの遺伝子情報を使って、培地と希釈したヒト細胞を使ったin vtroで作った」という感じでしょうか。

ん?ちがうかな。もしかするとin vitroで作った新型コロナウイルスのRNAと、ヒト細胞を混ぜた液を検体に模して検査したということか…。

ちょっと文が複雑(of多すぎ)で、不正確な部分があるのは否めませんが。

続きの部分は、

A preliminary LoD for each assay was determined testing triplicate samples of RNA purified using each extraction method.
The approximate LoD was identified by extracting and testing 10-fold serial dilutions of characterized stocks of in vitro transcribed full-length RNA.
A confirmation of the LoD was determined using 3-fold serial dilution RNA samples with 20 extracted replicates.
The LoD was determined as the lowest concentration where ≥ 95% (19/20) of the replicates were positive.
「各アッセイの予備的な検出限界(LoD)は、各抽出方法を使用して精製されたRNAの3つのサンプルをテストして決定されました。
おおよその検出限界(LoD)は、invitroで転写された完全長RNAの特徴的なストックの10倍段階希釈を抽出してテストすることで特定されました。
検出限界(LoD)の確認は、抽出された20の複製を含む3倍段階希釈RNAサンプルを使用して決定されました。
検出限界(LoD)は、複製の95%以上(19/20)が陽性である最低濃度として決定されました。」(Google翻訳)

※LoDは、検出限界(LoD)にしてあります。

読んだ限りでは風邪ウイルスではなくて新型コロナウイルスのRNA情報を使って、最低どのくらいの新型コロナウイルス量で検出できるかがテストされていることがわかります(少なくともこの文書の中では)。

追記:

他の人の翻訳を見ました…、すごくキレイに翻訳されてて、ああ、やっぱりGoogle翻訳に頼ってるとキレイには翻訳できないなぁと反省><。

誤解、誤訳しないように気をつけないと^^;


いいなと思ったら応援しよう!