異質な本質。~県立浦和高校公開授業~
※この記事は,きのしたが運営する学習塾《教学館》のブログに6/22に掲載した記事を加筆・訂正したものです。※
正直なところ,教室に戻って数時間が立つが,脳内で今日のことが処理しきれていない。
そのくらい情報量が多く,刺激的で,かつ楽しい出来事だった。
6月22日に開催された,県立浦和高等学校の土曜公開授業+ミニ説明会へうかがった。
本来は,生徒保護者向けのイベントだが塾の先生も参加できるとのことだったのと,教育ジャーナリストの梅野弘之先生(浦高卒業生)に「浦高の授業は一度見ておくといいぞ。」とすすめていただいていたため,ちょうど時間も作れたので,うかがった次第。
見学後,興奮のあまり土曜日なのに梅野先生に電話までかけてしまった。w
しかも,お出かけ前の忙しいときに。(申し訳ありません。m(_ _)m)
そのくらい,楽しかった。
そんな陳腐な感想しか出てこないくらいの衝撃だった。
授業の進み方がとにかく早い。
でも生徒さんたちは当然のようにその授業に食らいついている。
ゴリゴリと板書している先生も少なかった。
黒板に授業しているの?みたいな先生は皆無だ。
最小限の板書で解説や発問をする。
とにかくテンポが良い。
発問も,当てられた生徒だけが考えているのではなく,隣同士の生徒がこそこそっと答えを言い合ったり,分からない生徒が近くの生徒に質問していたり。
そんな光景が教室のあちこちで見られる。
先生が投げた質問に誤答した生徒に対して,別の生徒が正しい答えと「△△だから○○なんだよ。」と解説までしていたり。
特にすごいなと思ったのは,授業に向かうときのメリハリだ。
先生が授業に入るのに,前説をしないのだ。
「いやぁ,先生昨日さぁ…」とか「この間,電車に乗ってたらね…」みたいな部分がない。
何なら,「今日どこからだっけ?」みたいなのもなかった。
授業時間前に先生は教室に来ていて,チャイム・号令が済むと,スッと授業に入っていく。
だからと言っておとなしいだけの授業ではない。
先に挙げたような光景も見られたし,ワッと盛り上がって笑い声が上がることもある。
何なら,その笑い声はむしろうるさいくらいだ。w
当日,校舎内の会議室?でミニ学校説明会があったのだが,そこまで笑い声が聞こえてきていた。
だが,それが後を引かない。
普通の感覚なら,そのあと少し盛り上がらせておいてから「さ,授業戻るぞ。」となるところだが,そんなのもない。
これまた当然のように,そのまま授業に戻っていく。
ONのときの集中力というか真剣さがものすごい。
授業に熱量は当然だが,緊張感があった。
ピリついた嫌な緊張感ではなく。
正しい表現か分からないが,『真剣勝負』って感じだ。
私が見た授業がそうだっただけなのかもしれないが,いくつかの授業でそうだったんだからそういう授業が多いのだろうと思う。
休み時間の光景にも驚いた。
体育戻りの生徒が,上半身裸でうろついているのだ。w
それも,一人二人じゃない。
クラスの半分くらいの人数が上裸だった。w
確かに天気も良く蒸し暑い日だったけど。
見学に来ていた生徒(中には児童らしき子もいた)や保護者がいようとお構いなしだ。
休み時間の廊下もかなり騒がしい。ギャーギャーしている。
おいおい,さっきの授業は何だったんだ?と思うくらいに騒がしい。
え?今日,公開授業だよね?
どういう学校なの,ここ。w
今までに見たことないような学校だった。
でも,生徒さんたちの様子を観察していて分かった。
彼らにとって,公開日だろうが何だろうが,ただの日常なのだ。
誰が廊下をうろついていようが,授業を覗いてこようが,そんなことは彼らにとって関係ない。
そこには,いつもの土曜日のいつもの時間が流れているだけなのだ。
極端な話をすれば,我々見学者は彼らには見えていないのだ。w
そういえば,廊下で生徒さんたちとすれ違っても「こんにちは。」とか声かけられなかったな。
たまに霊感の強い生徒さんが「ンちは。」と,ごく短く声をかけてくれたが。
…キミ,私が見えるのか!?という気持ちになった。
どこの学校に行っても「ふむ,生徒さんたちはちゃんと挨拶してくれるかな?」などと上段に構えているが,浦高はそんな次元にはいない。
そんなことはどうだっていいのだ,きっと。
公開日だろうが何だろうが,いつもの自由を謳歌している。
見学中,とある授業で真ん中付近の生徒さんが突如立ち上がった。
え?今,この子,指名された?と混乱していると,そのまま授業が進む。
少しして,一番後ろの生徒さんも立ち上がった。
…え??
休み時間に思い切って声をかけて,立ち上がった理由を聞いてみると,
「あ,眠かったんで。」
なるほど。
浦高生は「フツー」の感覚じゃないのだ。
越北にうかがったときにも「変わった学校だな」「変わり者が多いな」と感じたが,浦高はそれ以上だ。
いい意味で「フツー」じゃない。
誤解を恐れずに言うならば,「変」だ。
某県立高校の先生ははっきりと「変人が多い」と仰っていたし。w
今まで公私問わずいろいろな学校の見学をしてきた(私立が多めだけど)けれど,こんな異質な学校は他にはない。
面白いなあ。
失礼ながら,先生方もフツーじゃないのかもしれない。きっと。
ミニ説明会の際に山盛教頭がお話しされていたが,学校行事であるサッカー大会やラグビー大会,綱引き大会など,先生方も教員チームを作って参加されるそうで,ラグビーや綱引きは教員チームが優勝の常連だそうだ。
…ん?ww
先生方,本気じゃん。w
本気と書いてマジと読むっていうやつじゃん。
ラグビーや綱引きに関しては「(教員チームが優勝する理由として)体重の差もあると思います。」と山盛教頭。
いやいや,そういうことじゃなくて。w
面白すぎる。
生徒さんたちも先生方も本気でぶつかり合っているのだ。運動にしろ,勉強にしろ。
先生方が本気で来るから行事にも手を抜かない。
生徒さんたちが本気で向き合っているから先生方も本気でそれに応え,授業に緊張感が生まれる。
だから毎日が『真剣勝負』なんだろう。
真剣勝負でぶつかり合うから,そこに本当に強い信頼関係が出来上がるのだろう。
そういえば。
山盛教頭の説明会での語り口に,他の学校の説明会にはない,なんだか妙な感じがした。
雨天だった体育祭(雨天決行の法則というのがあるそうで雨天の中実施された)で,どろどろの校庭で準備運動として背筋をしていた話。
新入生歓迎マラソン大会終了後に「どこが新入生『歓迎』なんだ?歓迎ってどういう意味だっけ?」と辞書を引いた生徒がいたという話。などなど。
そんなお話をされている山盛先生の口調の端々に
「やれやれ。まったくこの子たちは。」
みたいな,『あきれ』ではない,どこか優しい雰囲気を感じた。
と書いてて,今ふと気が付いたのだが。
もしかしたらそれって,「お母さん」的な感覚なんじゃないだろうか。(山盛先生は女性です。)
先生方が年の離れた兄姉だったり,父母だったり,おじいちゃんおばあちゃんだったり。
先生方が先生然としていなくて,生徒さんたちが好き勝手やっている(ホント,好き勝手やってる感じがしたw)のを,後ろから見守っているような感じ。
強い信頼感があるから,そういう関係性を作っているんだろう。
見学させていただいて,本当に良かった。
こんなに面白い学校だとは思わなかった。
確かに『学校』という集団としては異質だ。
だけど,こういう姿が学校の,というか教育の本質なんじゃないだろうか。
(*´-`) .。oO(もし共学になったとしたらこの異質さは失われてしまうんじゃ?
(*´-`) .。oO(それならこのままで良いんじゃなかろうか。という独り言。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?