小手返しは何を稽古するのか?
徒手、武器、転換棒、打撃、バランス、あらゆる稽古法から小手返しを考察し、その共通点を探ってみました。
文章と写真、あるいは映像だけではどこまで伝わるかはわからないけれど、日々の稽古の感触から推察していって貰いたい。
小手返しの中に流れる論理を知ることで、合気道全体の理解への手助けにもなると思われる。
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中心で動かす小手返し
徒手での正面打ち小手返し、相手の中心を抑えながら行う。
小手返しの動作のポイントは棒で考えるとわかりやすい。棒であっても同様の動きで崩す。自分の肚、中心を動かして相手の中心を制する。
棒の末端は自分の中心から動かさず、先端側を動かして相手の首筋を狙った軌道で崩す。
崩した後の切り返しが小手返しになる。
棒の先端を相手の頭を通って反対側へと移動させ、そこから首を切るような軌道で返す。
これが小手返しの一連の動き。
正面打ち小手返し
最初から最後まで常に自分の肚が両腕の中心にいることがポイント。
肚で中心を動かしていく。
この棒の動きを徒手でも同じように行うことで、技が作用する。
一教的な抑えの後、返すのは攻撃であり、徒手なら打撃となる。
小手返しと打撃
小手返しとは当身でもある。
小手を返すときには当身も同時に入っている。
崩した所へ打撃を入れる意識で動くと当たっていなくても、動作で崩せる。
最初に抑えた手を当てたまま、回し返す。相手の掌と自分の掌をピッタリくっつけたように動かす。
相手の圧力を維持したまま回る。
棒である場合も相手の押し込みを受け止めて下がらずに方向を変えて、回し返す。
棒で見る中心の返し
小手返しの返しの時の肚の動作は棒によって再現できる。
中心の腰の操作で相手を動かす。だから形が手の時と変わらない。
肚を動かしてフォロースルーで相手が倒れる。
剣の理による小手返し
抜剣までの流れはまず抜剣の気配を見せて誘い、相手に腕を握らせると共に腰を切って剣を抜く。
抜剣したら相手の手を伸ばした所で固定して掴まれた手首を外す。
ここで相手を固定しないままだと、相手は手首を掴んだままついてきてしまう。
抜剣したら横に薙ぐように振ったりするのではなく、中心から最短距離で首側に剣を落とす。
この時は相手の奥の肩に剣を置いてしまってもいい。剣と一緒に相手を崩していく。
常に剣を両手で自分の中心で構えて扱える位置取りを心がける。
小手返しの基本動作
基本に忠実な合気会的な突き小手返しの動き方を極めまで。
相手が取りにこようとする所に腕をぶつけるように取らせに行く。
手を合わせた瞬間に並ぶように入る。
そこから自分が降りて相手が降りきったら反動で上がる。そこを返して倒す。
倒したら相手の腕が伸びるように動く。
極めは肩と地面を挟み込む。
小手返しのかけ声
田中万川師範の天業のように個々の技にも発声が存在する。その一例が以下。
手を合わせた瞬間に小手を取って、回り込む、ここまでが一連の動作。
そこから「イエイ」で自分が下へと降りながら相手を送り出し、「ア」で上がる。後は降ろすだけ。
振り下ろしは剣による小手返しのように首を切り落とす意識。
突きのへの入身
良い位置で相手に接触しないと回ることができなくなる。
この近さで相手に手を取らせると詰まってしまって回れない。
自分も前へと進むことで相手が取りたいと思うよりも先に取らせてしまう。
相手を前に出させてからその場所で回る。回り終わった時に相手は既に前に崩れている。
手は自分から出さないといけない。出せば相手も出る。両方の手をほとんど同時に出している。
転換の方法
相手の突き手を取って並んでからは、転換するが同時に下に引くわけではない。
転換した時点では手はまだ上にあり、下ろしたりしない。
しっかりと並んで入ることで、相手を前に崩して自分の前に連れてくることができる。
手を水平に開いて張ることでアソビをなくして前に送り出す。
中心への意識
技は先に入身して、常に手が自分の正面にくるように動いていく。
両腕を広げる時も両手の中心へと相手を送り出すために広げる。
打撃への小手返し
小手を制する方法について、さらに細かいテクニックを解説する。
小手返しだからと小手にこだわりすぎていると相手が崩れない。
相手の腕の稼働範囲から出ていないからだ。
相手の腕にアソビがあるままではかからない。
効かせる為には小手への回転をかけつつ、自分の身体を回していくこと。
小手を崩そうとするのではなく、小手に回転をかけながら体を移動する。
この時に小手を返すために上から乗ろうと体重をかけたりしてはいけない。
足が居着いてしまう。
圧を与えつつ動く。これを最も端的に感じられるのが打撃への小手返しとなる。
ジャブへの小手返し
ジャブはすぐに引かれるので、その引き手に自分の腕を引っかける。
腕に引っかけた手を離さずに、抵抗せずそのまま入身していく。
相手の腕に引っかけたままついていって、その方向に進めば相手は崩れる。
ジャブへの小手返しの理屈
①②相手の打撃に合わせて手を出す。この時、体重をまだ前にかけない。
③相手の引き手についていって体重が前に。
④そのまま相手の腕が引かれるのに合わせてその方向へ移動し続ける。
ストレートへの対処
ストレートの場合は押し込んでくる為、対処がかわる。
相手の突き込みに合わせて身体が回っているだけ。相手の手を抑えようとしているわけではない。
これと同じ理屈で小手返しもかかる。
相手の手を捻ったり握ったりする必要はなく、引っかかる程度でかかる。
要は自分が移動すること。
相手の圧力に合わせて下がるなども必要。あくまで相手の力に沿っていく。
転換棒による突きへの小手返し
まず前提として何もしなければ相手に攻め込まれてしまう。
相手に間合いを取られないためには棒を張っておかなければならない。
そこで相手の攻撃をいなす。横を向くようにして自分の中心を横へとシフトする。
この後の小手返しにおける問題点が相手と並んで右下に落とそうとする点。
崩さないまま並んでも相手を動かせない。
並んでから相手を崩そうとしても相手が動かないので、崩してから動かしていく。
徒手での場合も、ただ何もせずに並んでからかけようとしてもかからない。
並ぶ時に相手を引き出しておく。
崩す方法としては、並ぶ前に相手の突きをいなす。
転換棒でやると次のような理屈になる。まずはいなして、その方向に相手を伸ばしながら転換する。
続いてさらにしゃがんで相手が上がってきた所へ小手返しへと移る。
常に自分前で腕力ではなく距離で動かす。
倒れた後は極めへと移行する。
小手返しの力の方向性
動画:【崩すテクニック】忖度無しの小手返し おむすび会20180303
これまでの説明と同じく、小手返しは当身を入れる力の方向性がポイントになる。
当身の方向を間違えれば相手は崩れない。
小手返しをする時に相手の小手を引いて突きを押しこんだりしてはいけない。
両腕の方向が一致していないと、バランスが崩れて相手を崩せない。
当身と小手返しは同じ力のまま回ればいい。
横から正面へと回る。
3枚目のように右手と左手の力の方向性が逆だと崩れない。
突きの意識が強すぎると前に出て押し込んでしまう。
あくまでバランス良く回らないといけない。
当身があっても前のめりになるわけではない。
隙のない早い当身
当身のタイミングは小手返しと同時でなくてはならない。
小手を回してからその空いた所に当身を入れるのでは遅い。動作が二つになってしまう。
小手返しがはじまると同時に当身もはじまっている。
一挙動の動作ですべてが完了する。一連の動きになっていること。
両腕の軌道も直線的ではなく回っていく。
手はふたつ一緒に動く。片方が遅れるようなことはあってはならない。
腰を回せる軌道で当身も入れていく。
当身は押しつけになってはいかない。
顔面スレスレをなぞっていく程度の圧力をかける。
フックは顔面に直撃しても効かない。カスって頭を揺らさないとノックアウトできない。
自分の右手と相手の左手の掌がちょうど擦り合う程度の摩擦を維持できる圧力でないと、相手を倒すことはできない。
相手は二本足なので、崩れる方向へと移動させれば倒れる。
小手を返さない小手返し
小手返しは合気道に慣れた人ほど、その場で大きく小手を返しがちだが、本来はそこに隙ができてしまう。
大きく動いたり、小手を返そうとしてもうまく行かない。
大きく動かせるということは、それだけ相手に余裕があるということ。
力を受け流して緩衝できる。
吸収できないように伸ばす、捻る、当身の意識を使うなどして腕のアソビをなくす。
伸ばされまいと耐えるならそのままヒネる。ただしその場でやるのではなく相手と自分の距離、自分が動くことでかけていく。
小手を返すのではなく、腕そのものや全体を返すイメージ。
回し蹴りの意識で小手返し
基本的に小手返しは転換棒をまるごと動かして掛けようとすると相手に反応されてしまう。
このやり方では相手は動かない。
小手を軸に自分が回転して相手を巻き込むことで技がかかる。
小手返しの動きには当身、攻撃の意識が必要。
転換と小手返しはどちらも回し蹴りをするくらいの大きな攻撃の気持ちで出す。
相手に圧力を与えて相手の攻撃を誘っていなし、同時に打撃を叩き込む。
相手の攻撃の圧をいなして空いた所に回し蹴りを入れるイメージ。
常に相手を引き出している。これが最初の抑えにあたる動き。
そこから転換して小手返しする瞬間も小手を返す方向に回し蹴りをする。
これを徒手の場合でも同じように行う。
この小手返しで最も重要になるのが最初のタイミング、圧力が拮抗する時に意図的に抜いて相手に攻めさせる。
力を抜いた瞬間に出た圧力をいなして相手の正面を空ける、空いた瞬間には蹴りを入れて小手返しへ、小手を返す瞬間に再び蹴り。
小手返しの回転方向は相手の方に押し込むのではない、小手を押し込めば相手に反発され止められてしまう。
アソビを取った状態でぶつからない方向に自分の中心が回れば相手を崩せる。
商売と小手返しの共通点
商人は「べんきょうしまっせ」というけれど、技も実際に勉強なのだ。
だからまず強く掛けてみる必要がある。それから徐々にちょうどいい力加減を探っていく。
出し過ぎて偏ってしまったと思ったら少し立て直す、そしてまた少しだけかける。
そういうことをやっていれば、小手返しをかけている最中に後どれくらい掛ければいいかがわかってくる。
ちょっと損(崩れる)するくらい出して、立て直して掛けていく。
最初からケチくさく弱くやってもかからない。
最初は大きく出して立て直す、そうやっていけば後どれくらい出せばいいかがわかってくる。
片足は不安定だからこそ、相手に掴まっておく、そして崩れたのを立て直してほんの少し力を加えてやる。
相手は二本足で自分は片足、これで三番足の安定した物体になるので、それを少しずらして自分は安定させ、ずらす……これを繰り返して相手を崩していく。
自分が大きく崩れるのはNG。壁にもたれかかりながらズラしていくようなイメージ。相手が壁、そこにもたれてズラす。
ズラしながらその場で回転していく。
小手返しの手首を捻り過ぎると転換棒の横棒が相手に当たってしまう。当たりそうで当たらないところを円を描いて回っていくことが理想。
←バランスが取れていて崩れない
バランスが崩れて動く→
心情としては安定したい。しかし、安定する場所で止まってしまうと崩れない。ほんの少し崩れた場所までいってしまう。
崩れる・立て直す・崩すの流れで倒す。
最初に釣り合わずにわずかに超えて崩れるからこそ、立て直すことができる。頂点で止めてしまうのではなく、わずかな誤差が必要。自分もリスクを背負う必要がある。
自分にも損をするリスクがあるところまで行かないと商売はできない。
押し付けるのではない、回すために崩れる。立て直したらまた少し回る。膝を丸めて回る。ちゃんと自分が腰を落として回っていく。
釣り合っている所からわずかにズレる。そこから回っていく。
上がって行って越えてさらに落ちる所まで行ってしまう。崩れるのならしっかりと崩しておく。
出し方を知るためにはまずは大きく出してみること。
引くのではなく押していく。
本能的に引いてしまうことをやめる。
縦棒を固めてしまっては相手は動かない。相手が動いていくようにするためには固めてはいけない。
転換棒は同じ形のままひたすら動いていく。
①進めばぶつかる②上げることで通過する
転換棒もそのままでは相手の腕が邪魔で止まってしまう。きちんと上がることで相手の反発力の範囲を通り越すことができる。
全体が同時に回っていく。手首だけ固めていてはいけない。
どこか一部だけ動かせばいいのではない、全体を動かして回っていく。
転換棒自体の角度は変わらない。変わるのは動く側。
まずは大きく崩して、その崩れを立て直してから崩していく。
それに慣れてくれば、小手返しの時にどれだけ力を貸してやればいいのかがわかるようになる。
まずは勉強から。具合がわかればほんの少し足すだけで崩せるようになる。
真空の氣で小手返し
指先を掴ませて動かす。
これは力ではなくバランスを取ることでかけていく。
通常は相手を大きく崩して引き出した後、起き上がる所に小手返しをかける。
今回は指一本で行うので相手を崩した後、起き上がる所に体を変えて崩していく。
相手の稼働範囲内でどんなに回しても小手返しはかからない。
自分が移動することで相手を引き出し、力は繋げたまま自分が動くことで小手を返す。
(写真からはわかりづらいが、益多先生がめちゃくちゃ下がっている、畳の位置に注目)
遊びのなくなった状態で相手を崩す方向へと移動し続ける。
竹刀の小手返し
動画:「非接触合気道」剣4•四方投げ•小手返し おむすび会20200627
竹刀による非接触小手返しの型
相手の剣を切り落としして、上から下へ制していって切り返す。
その切り返しを相手に止めさせた所からが小手返しの動き。
相手は切られまいと塞いでいるが、その反発力を利用して相手を崩す。
自分の剣は相手の首筋を狙いながら動いていく。
首筋に食い込んだから相手は止める、そこを首を狙いながらズラしてやることで相手を動かす。
剣をあげる時は相手の剣を擦りあげればいい。
少し距離を離せば剣はあがる。低い位置で噛んだ場合は、自分から距離を離せば良い。
押し込むのではなく、角度で首を狙っていく。
腰を回すことでズラす。
首を狙う意識がなければならないし、防がれているのをどうすれば首を狙えるか考えて動かなくてはいけない。
1枚目のように首筋を狙えない角度でどんなに押し込んでも相手を動かすことはできない。
首筋を捉えていれば動く。
首筋を狙ったまま、腹を回転させていく。
力で押し込もうとすると相手にすかされてしまうので、脅威を与えられない。
スカせない位置で攻めていけば逃げられない。
まとめ
結局のところ、小手返しは小手返しそのものよりも、その前段階に重要な過程が存在する。
一教の抑え、入身転換といった相手の出す力を自分の中心に抑えることがまず重要だと思う。
それができない状態では小手返しなどの各種の技へと派生させることができない。
小手返しは小手にこだわり過ぎない所に重要性がある。
小手を意識しすぎるとバランスが崩れるし、最終的には小手返しと言いながら小手そのものを返す必要はない。
小手返しをかける時のポイントは小手以外の部分への攻撃にある。
攻撃の意識と適切な角度があれば小手返しはかかる。
素手だろうが転換棒だろうが剣だろうが、あるいは回し蹴りであったとしても、その攻撃精神こそが小手返しの本質なのかも知れない。
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