郷原信郎弁護士らによる兵庫県 斎藤元彦知事とPR会社社長への告発状を読んだが稚拙で杜撰な印象
まず、全体の構成。
上記のように
第1 告発事実
第2 罪名及び罰条
とあるのだが、続いて、
第3 告発の理由
がだーっと続いて、最後に「第4」ではなく、
第3 強制捜査の必要性及び捜査体制について
とある。
番号のシリアライズがおそらく間違っていて、全体の構成が非常につかみにくかった。それがこの告発状が「杜撰」と感じた第一印象だ。
第3 告発の理由 については論証部分であり長大であるため後回しにして、最後の部分
2と3番目のパラグラフの言及については1番目のパラグラフの主張が正しいとすれば当然妥当なので、1番目のパラグラフの妥当性を検討する。
まあモノは言い様で、70万円という小規模な額、「SNSと選挙運動」という従前から法整備もされてきた事象であることを考えると、「インターネットを用いた組織的な」「選挙運動をめぐる買収事件」「過去に例がない事案」という表現は捜査担当者や検察への単なる心象、印象操作であると思う。
真実がもし、被告発人(斎藤知事)側の弁解に正当性があるならば、折田氏が、斎藤知事や弁護士が指摘するとおり「事実ではない」「盛っている」記載が折田氏によって、事実に沿うように修正削除'される行為も準じて正当性がある、という事になる。
つまり、現状、単に疑いが払拭しきれない、という告発人の予断による可能性をもって強制捜査や大規模な捜査体制が必要だと要請しているに過ぎず、なんらかの非常に疑いが強い、誰が見てもファクトである可能性が強い事象があるから、その理由をもって捜査に着手すべきだ、という論理構成にはなっていない。
これがこの告発状の結論、総論部分を見た感想。
次は一個上に遡って、
単なる告発人のエッセイ、感想文。「旧統一教会」とか本件とまるで関係のない事が盛り込まれており、これは所謂、左翼活動家連中が唱える念仏に等しいので、本告発状がその系統の強い思想を持つ人の活動の一環なのだろうということがこの文書単体からも容易に伺い知れる。
直近のアメリカ大統領選挙のように巨額の報酬があるならばそうだろうし、実際に公職選挙法はそういう理念で原則ボランティアで、とやってるのだろうが、「なりかねない」という将来的な大局の原理原則論は、本件の個別の事案の悪質性や重大性の論証には「なりえない」。
こんな杜撰なロジックで「本件の悪質・重大性」とか書かれて大上段から刑事告発なんてされたらたまったもんじゃないな、というのが率直な感想だ。
「たかだか70万円だよね」というのがあくまで本件個別事案の「影響力」であって、今回の「SNS戦略」とやらがどの程度、現実のSNSの趨勢に影響力を奮ったのかは、まさに「盛っている」「盛りすぎている」というのが大方の人の評価だろう。
さらに、文書を一つ遡る
結論の先取りの詭弁。違法事実が確定していれば、当然違法なのだから許容はされない、という当たり前の理屈があるだけで、支払われた金額の多い少ないは本件の違法事実がそこにあるかないか、を判断するにあたって非常に大きな事由となる。
たとえば仮に本件で500万円とかのレベルの金額が支払われていたならば「いくらなんでもデザインその他の契約の金額としては多すぎるだろう?」という疑惑の妥当性が高まるだろうし、本件のように70万円ならば「デザイン料で妥当だよね?会社の数週間のフルの選挙活動のコミットメントとして見合う金額じゃないなー」という憶測が成立しやすい。
このパラグラフは要するに、同社=折田氏のPR会社が本件選挙活動を無償でボランティアで行った、というシナリオについて言及している。
ならボランティアなんで合法だよね、何が問題でも?となってしまう。
「先行投資」したから、Note記事でまるですべて自身の功績であるかのように盛ってアピールしてマネタイズしようとしたのではないのか?という憶測もこの裏側に成立する。
「問題となったことで、報酬の残額の請求の未了となっている可能性」とかなんでも言いたい放題で、この告発状にはそんな可能性を示すファクトの論証は一切存在していない。適当に書いてるだけ。
着目したいのは結構だが、繰り返しになるが、折田PR作戦による今回の選挙のSNS総体の挙動への影響力は極めて限定的であると見なされるし、それがボランティアであり、契約にない勝手な先行投資の思惑である、と告発人自らが示唆した直後に「有償で業務として行われた選挙活動」と身勝手な断定による結論の先取りに着目したい、というのは受け入れられない。
遡るが、遡った真上にまた(2)がある。
つまり、
3 被告発人らについての買収罪の成立について
というセクションの構成は(1)(2)(2)となっている。
プロによる告発状で、こんなシリアライズがデタラメな構成ってありえるのだろうか?杜撰すぎる。
一体だと告発者が感じようがなんだろうが、5項目の代金70万円は、まさに5項目の業務に見合う規模でしかなく、それ以上の「選挙の広報全般の請負い」金額としては不合理に少なすぎる。
「明らか」「明らか」と繰り返している割には「可能性もあり」「可能性が高い」と繰り返していて、非常に稚拙。
たとえば、ChatAIに批判的に論証させてみたら、以下のようになる。
ここでChatAIが分析しているとおり、この告発文は根本的に
- Note記事の内容を「信用性がある」と一方的に判断
しており、
- 代替的な説明の可能性を排除している
つまり、斎藤氏や担当弁護士がNote記事で削除されてしまったような「知事選挙での SNS 戦略を含む広報戦略 全般を依頼したこと」は事実と異なるので、それまでの経緯がどのようなものであれ、妥当な削除であったという可能性は排除されている。
これよりさらに事実の指摘が
第3 告発の理由
にあるが、ここですべて述べた枠組みの範囲内の事象の列挙だ。
この告発状は、極めて一方的で恣意的な論旨の運びで稚拙で杜撰である、という印象を強く持った。