患者説明ツールを考える
はじめに
患者さんの疾患に対する理解が乏しければ、治療が中断されるリスクは高くなる。もし、疾患について写真やアニメーションなどを用いて説明できれば、患者さんの疾患に対する理解度は向上し、治療にも積極的になってくれるはずである。
一部の製薬メーカーは、患者さん向けの小冊子を配布しているが、説明が必要なすべての疾患が揃っているわけではなかった。そこで、疾患についてまとめたコンテンツを自ら作成し、それをiPadに表示させて患者説明に利用することにした。
方法
コンテンツの作成には、プレゼンテーションソフトのKeynoteを使用した。「水疱性類天疱瘡」や「尋常性乾癬」など治療を中断されると困る疾患について、①概要、②発症機序、③臨床写真、④治療法についてまとめたものをMacで作成した。
スライドは、高齢者でも見やすいようにグラデーションの背景に白文字の組み合わせとし、フォントにはヒラギノ角ゴを選択した。また、発症機序の説明はアニメーション機能も使ったイラストで表現し、患者さんが理解しやすいように工夫した。
作成したスライドは、iCloud上に保存した。iCloud上に保存したファイルは、同じアカウントでログインした端末であれば自動的に同期されるため、外来に置いてあるiPadからでも閲覧・再生することが可能になる。
結果
12の疾患のスライドを作成した。iPadのKeynoteアプリでスライドを再生すると、画面全体にスライドが表示されるようになる。画面をタップするだけで次のスライドが表示されるため、患者さんに説明しながら操作することも簡単である。
考察
様々な情報を扱うことのできるiPadは医療現場においても普及しており、日常診療に欠かせない存在となっている。このiPadに自ら作成したコンテンツを表示させることによって、患者さんへの疾患説明をより効率的に行うことが可能となった。
コンテンツの内容は、今のところ疾患に関するものしか用意していないが、スライドさえ作成すれば、手術やレーザー治療などの説明にも利用できる。また、作成したコンテンツは、外来を見学する実習生へ説明する際にも役に立つと思われる。
Keynoteスライドは、たとえMacを持っていなくても、WindowsパソコンやiPadでも作成することができる。もし診察室でiPadを使用しているのであれば、オリジナルのスライドを作成して患者説明に利用してみてはいかがだろうか。