直接介入する前に~スクワットを題材に考える~【自分棚卸】
トレーニング経験が浅い、そして感覚がまだ十分にとらえきれていない選手に対して実施することのあるプロセスです。トレーニングに限らず、なかなか指示に対して改善できない選手、「何度言っても」なかなか変えられない選手には確認してみてもいいかもしれない項目。
フォーム改善アプローチが伝わらない
トレーニングや競技を実施していく中で適切なフォーム獲得は重要です。
そこには、可動性や安定性、協調性が関わっており、どれかが欠如しても無理がかかるものになります。従って、それを修正していく必要があります。
すんなり改善できるケースもあります。ただ、なかなか修正できないケースもあります。そこで考えられる要因としては、
①改善できるだけの能力を現時点で有していない
ということもありますが、もう1つは
②修正する気がない
もあります。これはやる気がないとか、信頼されていないではなく(そうだったらもう、、、)
自分ではできていると思っている
これって結構多いと思うんです。
自分ではできていると思っているから修正の必要がないし、指示も間違っていると思っている。
このズレがあるとなかなか改善できません。そして、多くの選手が
自分の動作を思っている以上にわかっていない
ということも起きています。
そんな経験を通じて色々なことを試行してきました。
動作改善試行演習
授業の中でこんな試みをしています。
例)スクワット
1.講義の中で基準となる動作を示す(動画、実演)
*細かいチェックポイントはあまり説明せずに全体像みせる
2.その動作を再現するようにスクワットを実施→フォーム撮影
3.自分のフォームと基準フォームを比較
4.違いを認識したうえで、基準に近づくように再度実施→フォーム撮影
この一連の過程において周囲からのアドバイスや評価は一切なし。自分の動作を自分で観察して修正するという作業になります。
これだけで結構フォームはかなり変わります。
できない部分に対してすぐに介入したり、原因を探るという流れになりがちですが、認知の部分にズレがあるとどんどんいらない介入になります。
実際にやってみると多くの学生が自分のフォームにビックリします。こんなはずじゃない、って。でもこのプロセスを経なければなかなかそれに気付けないので、適切な指示をしていたとしてもなかなか入りません。
自分のフォームを認識していないままで修正できる選手は感度が高いということにもなるんだと思います。そういう部分も選手の能力、ということになるのではないかな。
何でも得意分野に持ち込まない
トレーニング指導をしていると、ついトレーニングに関連する介入で解決しようとしてしまいます。スクワットの例で言えば股関節の動かし方を改善しようとしたり、「ランジ」などを用いて段階的に指導しようとします。
しかし、それより前にやれることは色々あります。自分の頭の中の選択肢がほんとうに有効な手であるか。それはコンディションという広い部分からも時に俯瞰していくことも大事。
フォームの話は一例ですが、
共通理解を得ているようで、実はズレていたということは往々にしてあり、それがあるゆえに全然かみ合わないという残念な結果にもなります。そのためには基準を明確にすること。そしてズレを共有すること。
先ほどの演習では、4.までやった後にグループやペアで意見交換したり改善策を試行したりします。
そういうプロセスを経て結果を検証していく課題。
その先に何ができるか、これは学生の知識とか経験によっても変わるので目指すところまで到達できないところもあります。それでも他の講義などでやったことをフル回転して絞り出す時間にできているかなと手前味噌ですが思っています。対象学生が理学療法士や作業療法士を目指す学生だから、というのもあります。
こういった段階を踏まずに介入して一気にできることもあります。
共通理解なんかなくても修正できることはありますが、その場合どこかに無理がかかったままになりやすい。さらに体力面で高い人の方が無理がかかるプロセスでもできてしまう、という問題に繋がっていきかねないのではないかなと考えています。
トレーニングの実際の場面ではここまで時間が取れないこともあるので、とにかく自分のフォームを見てもらう時間を確保するようにしています。
なんでできないのか?ではなくて、前提が違う可能性がある。そこが埋まらない状態は互いにストレスも強くなる。
その先により専門性というか色々なアプローチがあって、そこに繋がる道筋は持っておきたい。
もちろん、トレーニング云々じゃなくて立ち姿とか歩くとかそういう部分からの話もありますが、すぐに指摘しないで一旦自分の中に落としてもらう時間は大事にしたいですね。