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亡くなった冤罪死刑囚・赤堀政夫さんが訴えていた「林眞須美さんは無実」

 いわゆる「四大死刑冤罪事件」の1つ、島田事件で、1989年に再審で無罪判決を受けた赤堀政夫さんが昨日(22日)午後に亡くなったことが各メディアで報道された。
 
 実はこの赤堀さんも、林眞須美さんがまだ世間的に和歌山カレー事件で真っ黒なイメージだった2008年3月20日、和歌山市民会館で行われていた林さんの支援集会に参加し、参加者たちの前で「林眞須美さんは無実です」と訴えていた(※タイトル上の画像は、その時に私が撮影したもの)。
 
 正確に言えば、赤堀さんの介護者だった大野萌子さんという女性が林さんを冤罪だと見抜き、赤堀さんは集会の場で大野さんが「林眞須美さんは無実です」と書いた文章を朗読していたというのが実際だ。ただ、赤堀さんが公の場で「林眞須美さんは無実です」と訴えていたのは紛れもない事実だ。そして、その場には、和歌山や大阪に本社や支社がある新聞、テレビの多くが取材に来ていた。
 

 しかし、赤堀さんのご逝去を受け、メディアでは、赤堀さんが生前、袴田巌さんの支援活動に携わっていたことは報道されている一方、林眞須美さんの支援集会でそのような発言をしていたことを伝える報道は見受けられない。そこで、その赤堀さんの発言をこの場で紹介しておきたい。

・・・・・・・以下、赤堀さんの発言・・・・・・・

※実際は、介護者の大野萌子さんが書いた文章の朗読です。

 刑事裁判の汚点は、無実の人々のフレームアップを見抜けず、多くの犠牲者たちを長期拘置した誤判にあると思います。
 
 林眞須美さんの冤罪も、また、その汚点につながるものと深刻に捉えています。上告中の最高裁はこの冤罪を認め、白日の下にさらすべきでしょう。
 
冤罪死刑囚は、いうまでもなく究極的な人権問題であります。冤罪はあまりにも多くの人権が失われます。ご参集くださいました皆様と、その点を是非確認したいと思っています。
 
 では、「冤罪の構造」について以下にお話します。
 
第一の問題:見込みの捜査
 私は逮捕中に浮浪であったため、「不在証明」はなく、そのすきを警察・検察に利用されたケースです。特筆すべきは、逮捕状も示されなかったことです。
 緊急逮捕でない限り、「令状逮捕」が妥当であり、私の場合も違法と言わざるを得ません。この問題で見えてくるのは、「見込み捜査」だと指摘できます。
 
第二の問題:予断と別件逮捕
  私の逮捕理由は「賽銭泥棒」でした。「島田事件」と呼ばれた幼女強姦殺人と、私は何の関係もなかったのです。
 警察・検察は「やりそうな人間」や、市民感情に照らして「犯人としても違和感のない者」を差別的に狙い撃ちします。
 警察・検察は、市民感情に潜む予断を極力利用するのです。
 
 私の場合は「精神病院出」の、偏見・差別が逮捕の背景に横たわっていました。
「島田事件」も、予断で多くの人が逮捕されました。一説によると、その数は二百数十人だったと聞いています。
 被差別部落民・前科者・変質者・ヒロポン中毒者・浮浪者・精神障害者などがリストアップされたと聞いています。
 
 それらすべての人にアリバイが証明され、「迷宮入りか」と捜査の行き詰まりが噂されたとのことです。逮捕連行された一人は「自殺」したと聞いています。
「自殺者」は、過酷な取り調べや、逮捕・連行の対象者として、市民の厳しい眼差しに耐えきれなかったのだと想像されます。
 
第三の問題:メディアと報道
  私は岐阜県鵜沼で不当逮捕後、汽車で浜松駅へ送られましたが、そこには大勢の新聞記者が待ちかまえていました。
 私と「島田事件」とは何の関係もないにも関わらず、その翌日、新聞には「犯人逮捕される」と報道されたのです。濡れ衣とは、こうしたことを言うのでしょう。冤罪によくある手だと聞きます。
 
「メディアの犯罪性」は警察の発表を何ら検証せず、それを鵜呑みにして報道することにあると思います。
 
第四の問題:拷問・誘導
  私はいわゆる「代用監獄(誰にも見られない島田署の官舎)」に連れ込まれ、連日連夜、「殴る」「蹴る」「腕をねじ曲げる」「便所にも行かせない」と、あらゆる暴行で締め上げられました。それらに耐えられるものではありません。
 今も冤罪が多発しているのは、そうした「拷問」に耐えられないからに他なりません。
 
第五の問題:強制自白調書
  私は警察・検察の「作文(自白調書)」をオウム返しに反復させられました。
 決して任意ではありません。無理矢理、身体をつかまれ、「名前」の「サイン」をさせられました。
  その後、「証拠となる物を何にするか」と、警察官は私の前で検討しました。そして、「君、頭を使えよ。大井川で手頃な石を拾ってくれば、事足りる」と、いとも簡単に「証拠の石」をねつ造したのです。
 こうした問題を回避するには、取り調べの「全面可視化」しかないでしょう。
 
第六の問題:証人の変遷
 
「島田事件」の真犯人を3回も見た人は、私の実家の一件隣の「Ky」さんでした。私の家にもたびたび訪ねてきていました。そんな「Ky」さんが真犯人と私とを間違えるでしょうか。
 警察・検察は「Kyさん」に対して、圧力・強制を加えたと思わずにおれません。最初の証言とは違う「証言の変遷」でした。
  林真須美さんの「事件概要」を、1から6までの冤罪の構造と比較してみてください。必ず、不自然な事件概要に直面します。冤罪の構造には、以上の問題が内包されているものと確信します。
 
 林眞須美さんは無実です。

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片岡健
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