音像・音圧を引き出す ステレオエンハンスという謎の造語
今年、最後の note 。
今回は音圧の話を記していきたい思います。
音圧といっても、「はちきれんばかりの」「ぱんぱんになった」「波形がツチノコよりも棒状」、「加藤鷹よりも」みたいなやつじゃなくて。
空気感や音像を大きくする。
ナチュラルに作用する方面の話です。
僕なりのステレオ化の定義
ステレオエンハンスの話をする前に、ステレオ化の明確な定義を決めたいね。
MTRやDAWの中で「うむ、ステレオ化してますね」って言える時は、どんな時でしょう。
まずは、モノラル。
モノラル(センター)の定義は、「LR2つのチャンネルから全く同位相の音源がなっている状態」だと思います。
・・・ということは
ステレオの定義は、「LR2つのチャンネルから全く同位相ではない音源がなっている状態」だと思います
全く同位相にならないと言う事は、0.1 Hz から 41.1 kHz まで(その時のサンプリング周波数による) 、全ての帯域・全ての周波数の位相が異なっている、ということを示していますです、はい。
ステレオ化の定義が決まった所で
完全なステレオ化を考える。
シンセで狙った周波数をピンポイントで出すなら、まだ可能だけど。
自然発生する音をマイクで集めて、LRで全く別位相にするというのは、到底無理な話だ。
まずは、完全なステレオ化などありえない、と頭に焼き付けておく。
あ、あのー
本当、いつもいつも記載していて申し訳ない気分になるんですが・・・
「なんでお前ごときが、ステレオの定義を語るんだ」って話になると思うんです。
これは僕の備忘録であって、間違っている事もやチラシの裏に書いとけよって言う内容も沢山あります。
この note はそういうやつだ。(ビッグダディ風)
その上でのステレオエンハンス
「ステレオエンハンサー」というエフェクターはあるみたいだね。
ステレオエンハンスは、自分がミックスを進める中で勝手に作った造語だ。
大抵の人には意味が通じる・・・はず。
この、ステレオエンハンス。
テッド・ジェンセンの編集方法を分析する note から連呼しているんだけど、「造語だとしたら全く意味が通じていないかもしれない」という恐怖が出てきた;
なので、ステレオエンハンスの定義も確認しておこうと思う。
意味合いは簡単で、モノラルの音源をステレオにエンハンス(高める・強める)する、という事になる。
例えば、モノラルの音源にLR異なったディレイやReverb等のエフェクトをかけることで、ステレオの要素を追加する事を意味している。
「LR異なった」、っていうのがポイントですね。
※ポイントが今一理解できなかった時は、ステレオ化の定義の部分をもう一度読みなおしてちょ。
MTR録音
話は変わって、MTR録音の話。
なんでMTRでオリジナルを作ると音圧がない音源が出来上がるのかな?
なんでかな?どうしてかな?
高いマイクを使わなかったから?
MTRで録音・編集したから?
演奏が下手だったから?(アレンジがよくなかった?)
ギター・アンプにJCを使ったから?(冗談す
まぁ、全部が正解ではなかろうか。(あれれ、JCは冗談じゃない??
その理由は、昔のノートを見てください。
でも、順番をつけるとするなら一番は「アレンジが良くなかった」からだよ。
その次は何かな。
ギター・アンプにJCを・・・って言いたくなるけどw
そこは、ぐっとこらええてw
「MTRで録音・編集したから」じゃないかな。
MTRで完結すると、音圧は引き出しづらい?
そうなんですよ、奥さん。
絶対とは言わないけど、多分無理です。
・・・とは、言いつつもコツさえ掴めれば、MTRでも可能なのかな。
でも、MTRだけでやるには、相当面倒な手順になると思う。
録音時の音像を見る
音圧・音像の様子を図を用いながら、見ていきたいと思います。
まずは、王道パートを録音すると、下記のような音像になるはずです。
ベース・ドラム・ボーカルは当然だけどモノラル(センター)が多いね。
意図しない音像の出現
・・・あれれ。このボーカルやドラムに隠れている音像はなんだろう;
よくよく、見るとこれはギターだ。
「ギターは左右に振ってあるからステレオだ」
そんな、甘っちょろい考えはなかなかに通用しません。
特にギターのバッキングのような、似たような周波数のフレーズは、完全なステレオ化などありえない。
必ずモノラル成分が現れる。
録音してLRにPANを振った。
だから、音像の割合は下記のようになっている・・・っと思っていた。
L 100 : Center 0 : R 100
実際の所は、全然なっていなかったんだ!
下記の様なもんだろう。
L 30 : Center 140 : R 30
モノラル。センター成分が「断然and断然」多い。
だから、ベース・バスドラム・スネア、そしてボーカルに、どんどかぶってくるし、センター一箇所に音が集まるからすぐリミッタの餌食になる。
だから、僕は FACT の MV を聴いた時、心底驚いた訳です。
ドラムのトップマイクの音・ギターの音・コーラス。
とりあえず、分離感がすげーーーーー!!!!!ってね。
ステレオエンハンスを使用する
ステレオエンハンスを適用するとどうなるかな。
まずは、ベース。
そして、ドラム。
ボーカルは、パンニングディレイで一気にアンチフェーズの領域まで飛び越える。(アンチフェーズ=完全なステレオ領域。)
そして最後にギター。
LR異なったReverbやディレイを使用して、アンチフェーズの領域に入れ込む。
もう、一目瞭然ですね。どちらが音像が広いか・音圧がでるか。
MTRをディスっているわけではないんだよ
ステレオエンハンスするには、色々な演算処理が必要になるから、MTRではなかなかに難しい。
また、ステレオエンハンスはそんな簡単な技術じゃないから、使いこなすのも大変だね。
だから、MTR自体にステレオエンハンスの機能は、ほとんど具備されていない。
※でも、アレンジやフレージングを研究していけば、MTRでも音像を広げる事はもちろん可能だけどね。
M(モノラル)S(サイド/ステレオ)
モノラル成分。
そしてエンハンスやマイキングで得た、ステレオ成分。
こうなってくるとさ、ステレオとモノラルと、別々にEQしたりコンプかけたりしたくなってくるじゃん。
それを実現するのが、MS処理ってわけでございます。
内容はまた来年かな!
だけども、だけど
今回の note を通して、言いたかったこと。
それは、
ステレオエンハンスすると音圧が上がります、、、
っということでは断じてありません!!!
モノラルこそが至高。
モノラルこそが最重要事項であり
もっとも音源が輝く場所。
「最重要音源・とっておきの音源」を輝かせるため
それらをモノラルに配置し、寄せても良い音はステレオに寄せる。
音源の本質は、モノラルにある事を忘れない。
・・・ってこの名言。
有名エンジニアの受け売りだからw
ベースが重要でない曲だったら、右から流してみても良いんじゃない。
ビートルズもそうやってた訳だしw
あとは、「more punch, more 音圧」って言っているわけでもありませんよ。
音源にどの様な表現方法があるか知らないということは、もったいない事をしてるな、と思うわけです。
過度なステレオエンハンス
ステレオエンハンスしすぎた音源は、まったく芯がなくなるので、結局モノラル成分を上げるハメになる。
また、気をつけたいのは、アンチフェーズが増え過ぎた音源。
これは、ステレオからモノラルに変換して聞く機会を与えられた時に、位相ががったり崩れる可能性がある。
例えば、「俺の音源がラジオで流れるぞー」ってなった時とかね。
過度にステレオ化された音を聞くと、焦燥感や気持ちが休まらないと言った効果があることも、理証されているみたいです。
今年のまとめ
俺は素人童貞だから。
隠されたモノラル成分に気づくのに、めちゃめちゃ時間がかかりました;
これって、割と常識なんだろうなー。
誰も教えてくれなかったよw
それまでは、音響系の情報誌とか結構買ってた訳ですが。
これに気付いた途端、一切買わなくなりました。
やっぱり、みんな飯の種は公開していないね。
こんなニッチな内容を文章で伝えることが出来るか、っていう問題もあるしw
これが正しい・あれが正しくない。これが良い・これが悪い。
どの様な事にも耳を傾けず、淡々と進んだ一年だったな。
(うーん・・・、進んだかなwどうだろう。)
あ!そういえば!!
本から得た知識で、唯一今も心に残っている内容があります。
もし君がエンジニアやプロデューサーを目指すなら
100回マイクを立てて録音して
100回ミックスしろ
101回目が、君のスタートラインだ
別にエンジニアを目指しているわけではないけどw
取り組みが始まってから、30〜40回目位かな?
先はまだまだ長そうです!