プレイヤー自身が音源のクオリティーを考える 〜アレンジ編〜
そもそも、音源を作成するのはエンジニアではなく、バンド・プレイヤー本人ですし、おすし。
いくら、エンジニアが頑張ってもねぇ;
音源にするための加工技術は、やはりエンジニアの技術による所が大きいと思いはするんだけど、プレイヤーからはどんなアプローチがあるかを、孤独に考える。
無骨でカッコいい架空の駆け出しロックバンド「TOMOKI」
TOMOKI の代表曲「ゴハンデスYO」は、ライブハウスのPAにすら「あの曲いいよね!」と言わせ占めるロックの名曲。
パワーコードとベースが爆音で鳴り響き、そこにグッと来るボーカルのシンプルなメロディーが、オーディエンスの心を鷲掴みにします。
もちろん、ライブでは一番盛り上がる曲であり、見に来たお客さんは口々に「すげー迫力だ!」「TOMOKI かっこいい!」と興奮しきり。
ライブ後、「音源ないんですか?」と聞かれる事も多くなったTOMOKIのメンバーはついに自主制作音源の作成を決意します。
メンバー構成と録音方式
TOMOKIは、ボーカル・ギター・ベース・ドラムの一般的な構成。
ギターを録音する際、パイセン達のアドバイスを受け、同じギターフレーズを二回録音し、LチャンネルとRチャンネルで振り分けました。
音源の完成、そして公開へ!
音源完成後の初ライブ。TOMOKIはついに音源をリリースしました。
ライブ後、笑顔で音源を手に取るお客さん、数日間SNSの「#TOMOKIなうぷれ」タグが消える事はありませんでした。
A君はそんなナウプレツイートをしていた一人。
今日はTOMOKIの音源を友達のB君に聞かせるために部屋に遊びに来ています。
A君「これ、最近買ったTOMOKIっていうバンドの音源」
B君「へー、聞かせてみてよ」
(・・・再生中・・・)
B君「へー、ライブで盛り上がりそうな曲だね。所で昨日の、パンチェッタジローラモーンズ見た?」
A君「(あれ。あんまハマんなかったかな。好きだと思ったんだけど)」
あれれ;予想していたリアクションと違う・・・
おかしいなー。おかしいよ!
確かにTOMOKIのライブは大盛況で、お客さんは今でもヘビロテ真っ最中なはずなのに、B君にはあまり響かなかった。
A君は音源を聞いた際、ライブの情景を思い出すという付加効果があったのかもしれない。
B君は違う(・・・と思う。)
純粋に初めて聞いた音源を客観的にとらえた結果、ハマる事はなかった。
上に記載した内容は、一例であって全てがその通りではないし、B君の音楽の好みも、もちろんあるけどさ。
ゴハンデスYO を音源として分析すると
トップ画像のマトリクスを見て。
ゴハンデスYO のサビ部分を可視化したマトリクス。
「高音・中音・低音」、そして、「L・R・真ん中」とざっくりですが分かれてます。
1マスに対して、2つのパートまで入れる事が可能!
3つ目も入れる事は可能ですが、音が重なり肥大化すると、、、
MTR内部で「マスタリミッター」という恐怖の門番に捉えられ、コンプレッサー(圧縮)が作動、業火に焼かれ、地獄の苦しみを味わう事になります。
(要するに圧縮されるので音がこもりがちに。)
それを知ってか知らずか、ゴハンデスYOはこのマトリクスを一度も変更する事なく、イントロからアウトロまで演奏する曲でした。
何だって!!マトリクスを変更しないだって!!!
そう、マトリックスを変更していない。
(一概には言えないんだけども)それはすなわちイントロもAメロもサビも「全部同じ調子にきこえる」という事だ!!!
このマトリクスを空席にしたり満席にしたりする事で、音源は時に竜巻のように荒々しく、時に小川のせせらぎのように優しく、鳴り響く・・・と、僕は何度も録音していくうちに思うようになっていたんだ。
でも、あのバンドと同じ構成で録音してるんだけどな・・・
それってもしかして ONE OP ROCK のことかい??(ワンオペロック)
凄腕のエンジニアはひとつの楽器に対して、あの手この手を使ってエンハンスを施して、マトリクス上を縦横無尽に行き来させることが出来るんだ。
だから、シンプルな楽器構成でも、表情豊かな音源が出来上がるんよ。
でも、僕はそんなエンハンス技術は持っていないし、MTRにもそんな機能は一切ついてない。
(例えば、エキサイタとかステレオコーラスとか、waves の RBASSとかね。)
じゃあどうすればいい??
プレイヤー自身がマトリックスを埋めたり、削除したりすればいいのさ!
マトリックスにパートを追加・削除しよう!
ようやく、ここまで辿り着いた。今までは全て前振り;
そもそも、真ん中は常に混戦地帯だ。
ボーカル・ベース・バスドラ・スネアと、ロックミュージックの柱が腰を据える。だから真ん中に追加するのは難しそうだ。
LRの高音域・中音域のを埋めるのは割と簡単。
ギターのハイフレットのアルペジオやオルタネイトリフ、オクターブ奏法、上にハモるコーラス、タンバリン、トライアングル、雄叫び、慈悲の声等を、「オーバーダビング」すればよいのさ。
あと、歪みを与えれば与えるほど、その上のマトリックスにエンハンスされる事になる。
歪みのあの「じゃりじゃり」感が、高音のマトリクスを埋めてくれるのさ。
(だから、逆に上のマトリクスに空席がない場合は、注意が必要ってこった。)
LRの低音はちと難しい。
低音へのエンハンスツールがない場合は、きっぱり諦めようw
(僕はたまに、ギターを低域にエンハンスさせたりとか、ベースをLRにほんのちょっとだけエンハンスして満席にしてます。)
なにも、満席でワイドにするだけがパターンじゃない。
ボーカルがソロになり静寂が訪れるアレンジがあったとしたら、その前のアレンジで満席にしておいて(騒がしくしておいて)、落差をつけるとか。
3つ目のパート追加
1マスに2つのパートしか入らないことを説明したけど、LRの中高音だけは工夫次第で3つでも4つでも入れることが出来る。
それは、「重複していない(周波数の)音」
もし、パワーコードを一つ録音していたとすると。
パワーコードはルート音と5度の音で成り立っている。
なので、その場合は「ルート音と5度が満席」と考えることにする。
曲構成にもよるけど、ルート音に対して3度・7度・9度の音ならば全然入る。(もちろん、コード・スケールの都合で全部入ることは確実にないけど。)
逆にテンションコードや、7th/9th を駆使したアレンジだと、ルート音がすっぽぬけている事があるので、一本真を通すためにルート音や3度音を入れることが出来る。
アニソンの主題歌とか、最近のテクノ・ポップな楽曲って、やけにワイド感凄いじゃん?シンセサイザーは狙った周波数を出せるから、ピンポイントでマトリクスを埋めることが出来るんじゃん?
マトリクスだか可視化だかしらねーが、音楽はそんなもんじゃねーよ
本当にその通り。
ワイドな音源でなくても、その辺りのテレコでとったような音源であっても、よい音楽はたくさんあるし、名盤と言われるCDだってごまんとある。
ただ、
たまたま平坦になっちゃった音源
と
「こういう方法があるんだ!」と知った上であえて平坦にした音源
絶対に違いが生まれてくると思うんだよね。
特に曲数が増えてくるならばなおさら。
だから、
「こういう音源にしたい。だから、パートを増やそう!(または減らそう!)」
そういうポリシーを持って常にアレンジや作曲をしたいもんです。
そのポリシーは必ず音源だけじゃなくて楽曲そのものの良さを必ずアップさせるはずだしね。