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エネルギーの400年史

再生可能エネルギーやバッテリー技術の向上、化石燃料由来の発電所規制など大きく揺れ動くエネルギー業界。どのエネルギーが今後の主流になっていくのか先が見通せない状況です。

現状から先を見通すことは難しくても、歴史を知ることでエネルギーにまつわる普遍的な原則を見つけられるのではと思い、「エネルギー400年史」を読んでみました。

内容としては木材から始まり、石炭、石油、原子力と人間がエネルギーを獲得していく平坦ではない道のりが事細かに記されています。今日の生活が過去のたゆみない進歩によって支えられていることを実感させられる1冊です。

本書のなかで、特に印象的だったのが以下の3点です。

・エネルギーのコスト優位性低下または環境汚染が顕著になったとき、エネルギー源の主流が変わる

・技術普及のうえではインフラ整備がカギを握る

・すべてのエネルギーは市場の1-10%のシェアをとるまでに4, 50年かかり、50%となるまでほぼ1世紀かかる

順に解説していきます。

・エネルギーのコスト優位性低下または環境汚染が顕著になったとき、エネルギー源の主流が変わる

16世紀のロンドンでは暖房や調理に使う木材を得るために近郊の森林を伐採していました。その結果、森林は街から後退していき、輸送コストがかさむようになっていきます。その結果、薪のコスト上昇により、石炭がコスト面で優位性を持ちはじめ、エネルギーの転換が起こりました。

面白いのは19世紀のアメリカ、当時灯りに使われていた鯨油(クジラの油)でも同様の出来事が起こっていたことです。鯨油のために近海のクジラを乱獲したため、北極海のような遠方に行かないと鯨漁が成り立たなくなりました。その結果、移動・輸送コストがかさみ鯨油から代替燃料への転換が起こりました。

エネルギー転換のきかっけとしてもう一つ印象に残ったのが環境汚染です。代表例として馬、石炭からの脱却が挙げられます。19世紀後半移動手段として馬が主流でした。しかし、もちろん馬のトイレまでは整備されておらず、街は馬糞であふれいました。そして衛生面への懸念に端を発し、徐々に自動車へのシフトが起こりました。

また、石炭に関しても似たようなことが起こっています。20世紀に入っても石炭を使用していた都市部では、燃焼時の大気汚染が酷く、日中でも松明が焚かれていたようです。あまりにひどい大気汚染を抑えるため、大気汚染の影響が比較的小さい石油・天然ガスに石炭はとってかわられていきました。

以上の話は、現在の再生可能エネルギー普及と重なるところが多いのではないでしょうか。再生可能エネルギーの発電費用の低下がコスト面、CO2排出量が環境面で19世紀の馬糞や石炭の大気汚染とリンクしていると感じました。

・技術普及のうえではインフラ整備がカギを握る

20世紀初頭、アメリカでは内燃機関、蒸気機関、電気自動車が競合していました。お分かりの通り、この争いを制するのは内燃機関つまりエンジンです。この勝負のカギがインフラでした。

まず、蒸気機関は蒸気の力で駆動するため水が必要になります。当時アメリカの道路わきには多数の水桶が設置されており、容易に蒸気機関に水を供給することができました。しかし、1914年に発生した口蹄疫を抑え込むために水桶は廃止されてしまい、蒸気機関はインフラの利を失います。

また、電気自動車には電気インフラが欠かせませんが、郊外には電力が普及しておらず、ひとたび街から離れると充電ができないという問題を抱えていました。

一方、内燃機関はガソリンで駆動します。ガソリンは洗浄剤や溶剤として、土地土地のペンキ屋や雑貨屋で簡単に手に入れることができました。また、農家でも固定式のガソリンエンジンを使用していたため、ガソリンは手に入れやすい環境が整っていたようです。

このような背景があり、インフラに利のある内燃機関が自動車の動力争いで勝利を収めたわけです。技術普及を考える際には世の中のインフラの現状を注視する必要がありそうです。

・すべてのエネルギーは市場の1-10%のシェアをとるまでに4,50年かかり、50%となるとほぼ1世紀かかる

これは文のままの意です。歴史的に見て、新しいエネルギー源はそのシェアを伸ばすのに長い年月を要するようです。ちなみに現状の再エネのシェアはまだ全世界のエネルギー源の1%にも達していません。脱炭素を短期的に完遂させることは難しく、腰を据えた長期的な取り組みが必要であることがわかります。

まとめ

以上が「エネルギー400年史」を読んで特に印象的だった部分です。今回の読書を通して、歴史を学ぶことは今を知ることにつながるんと感じました。

気になった方はぜひ読んでみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

友人や家族に贈り物をさせて頂きます。