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テキサス州弁護士会への入会手続き

はじめに

前回、テキサス州司法試験に出願するまでを書きました。今回は、晴れて司法試験に合格したとして、その後に控えている州弁護士会(State Bar of Texas)への入会手続き(アドミッション)について書こうと思います。また、一度入会した後、翌年以降資格を維持するのに何が必要かについても書きます。

日本からLL.M.留学する方は、ニューヨーク州やカリフォルニア州の司法試験を受験し、それぞれの弁護士会に登録することがほとんどではないかと思いますが、前回記事と同様、今後テキサス州資格の価値も高まるのではないかと思うので、記事にする次第です。本記事が他州と比較する際の材料になればと思います。


入会手続き

10月上旬に司法試験の合格発表がある際、テキサス州司法試験委員会(Texas Board of Law Examiners)及び州弁護士会から入会手続きの案内が来ます。同月末に新規入会者向けのInduction Ceremonyがオースティンで開催されますので、合格からCeremonyまでの2週間くらいで手続きを完了させるのが基本的なタイムラインです。

もちろん、入会するには、司法試験合格に加えて、いくつかアドミッション要件を満たす必要があるので、以下で説明します。

アドミッション・チェックリスト

アドミッション要件は、州最高裁(Supreme Court of Texas)が策定するルール(Rules Governing Admission to the Bar of Texas)に依拠します。

日本法弁護士がLL.M.修了後に受験することを想定すると、以下が満たすべき要件になります。Rule 2 "General Eligibility Requirements for Admission to the Bar"を参照しつつ、問題がありそうなものだけ抜粋し、概ね時系列順に並べました。これらを司法試験合格後5年以内に満たす必要があります。

  1. Character and Fitnessの審査

  2. OPT等、米国に適法に滞在するための資格(いわゆるRule 2(a)(5))

  3. MPRE (Multistate Professional Responsibility Examination)で85点以上を取得(Rule 5も参照)

  4. Texas Law Component (Rule 5も参照)

  5. ライセンス・フィーの支払い

  6. 宣誓(oath)

以下、それぞれについて詳しく書きます。

Character & Fitness

C&Fの審査は、司法試験の出願完了直後から走り出します。詳細は、出願関連の記事に書きましたので、そちらをご参照下さい。多くの場合、司法試験受験時までに審査完了しているのではないかと思われます。

いわゆるRule 2(a)(5)

LL.M.卒業後もう1年研修で米国滞在する場合は、F-1 OPT(Optional Practical Training)に基づきEmployment Authorizationを取得することになると思いますが、これをもって要件を満たすことができます(Rule 2(a)(5)(D)に該当)。私はこれで満たしました。OPTの詳細は本記事の対象ではありませんが、私は2024年3月31日に申し込み、8月第1週にようやく就労許可が下り、その直後には、司法試験委員会のウェブサイト(ATLAS)から許可証をアップロードしたという経緯です。

ただし、OPTがマストというわけでもないようです。Rule 2(a)(5)(E)は、入会申請時に米国外に居住することも許容しており、この場合、FAQ(https://ble.texas.gov/faq.action#1761)によると、Statement of Residence Outside the U.S.を提出することが求められるようです。一方で、同FAQのNoteでは、Rule2(a)(5)のwaiverをリクエストすることも可能とされています。このwaiverと(E)の関係はよくわからないですが、実際にLL.M.の友人の一人(日本からの留学者ではないです)はwaiverを提出した上で、問題なく入会できたとの頃です。

MPRE

以前、MPREの受験記録を書きましたので、そちらをご参照下さい。タイミングとしては、留学直後の11月か、あるいは翌年の3月に受験することが多い気がします。もちろん、司法試験後の8月の受験でも問題ないと思います(MPREは年3回チャンスがあります。)。

Texas Law Component

Texas Law Courseとも称されるなど呼称が一定していませんが、要は、Multistate方式のUBEではテストできないようなテキサス固有の法制度・判例についても履修することが求められています。オンラインでビデオを視聴し、各科目の視聴後に3問クイズに答えて2問正解すれば、当該科目をパスできます。テキサス州の司法制度に始まり、家族法やらReal Propertyやら州固有の要素が強いトピックが含まれます。なかなか退屈ですが、決して難しくはないです。トータルで12時間が目安とされています。

詳細は、以下のFAQをご参照ください。

司法試験受験に先んじて着手することもできますが、まずは合格しないと意味がないので、司法試験受験後の時間があるときに済ませるのがいいと思います。合格発表後でもいいとは思いますが、注意点として、新規入会者向けのInduction Ceremonyで配布されるプログラムに名前を載せてもらうには、9月25日までに完了する必要があります。このタイムラインも念頭に置きつつ、私は、9月の第1週にビデオを見始め、9月16日に完了しました。

詳細は、以下のFAQをご参照下さい。なお、私の記憶が正しければ、このFAQは、受験準備をしている段階では存在せず、気づかぬ間に質問一覧に追加されていて、今、ウェブサイトを見たらまた忽然と姿を消している、という謎の扱いです。

ライセンス・フィーの支払い

州最高裁に、以下のフィー合計325ドルを支払う必要があります。合格直後にNew Attorney向けの登録ページの案内が来るので、その中で手続きします。

  • Basic Dues 235ドル(毎年)[1]

  • Supreme Court License Fee 25ドル(入会時のみ)

  • Legal Services Fee 65ドル(毎年)

以上の他、個々のInterestに基づいて分科会にも所属でき、その場合は追加でかかります。私は、Oil, Gas & Energy Resourcesや、Asia Pacific Interestなどに参加しました。

宣誓

研修先が法律事務所である場合、そこに有資格者(引退した判事など)がいれば、事務所内で宣誓をすることができます。もしいなければ、10月末にオースティンで行われるInduction Cremonyで宣誓できます。このCeremonyには、州弁護士会が主催するものですが、そこにはSupreme Court of TexasとTexas Court of Criminal Appealsの全裁判官が出席していました。30分ほどで終わります。 

宣誓の際には、宣誓文言が書かれた紙が配られ、それに署名する必要があります。その上で、その署名付きの紙をライセンスの裏に貼る必要があります。ライセンスは、11月中旬頃には手元に届きます(想像以上にでかい)。

入会後の資格維持

一度入会してしまえば、資格を維持するのはそんなに難しくなさそうです。まずは上述のライセンス・フィーを支払う必要があります。

また、MCLE(Minimum Continuing Legal Education)の受講が毎年15時間必要になります。ローファームが無料で提供するウェビナー等がMCLEの認証を受けていれば、それをカウントすることができるので、これもそんなに難しくないです。MCLEの一般的な説明は以下をご参照下さい。

他方で、プロボノに関しては、毎年一定時間従事することが奨励されているものの、資格維持のための義務ではない理解です。

まとめ

本記事が、テキサス州弁護士会への入会を検討している方の参考になりましたら幸いです。


[1] なお、Basic Duesの金額は、実務経験年数に応じて上がっていきます。この点、日本での実務経験がカウントされるのか明確でなかったので、州弁護士会に照会しましたが、どうやらカウントされるようです。


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