宅建士メールマガジン【無権代理】
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今回のメルマガのテーマは【無権代理】となります。
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■□■ 宅地建物取引士 ■□■
■□■ 無権代理 ■□■
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(質問) 親の不動産を無断で代理して売却すると?
(回答) 無権代理となります
【息子が勝手に不動産を売却したら?】
代理人として他人の不動産を勝手に売却すると、法的には、無権代理として責任を負うことになります。正確には、無権代理とは、代理権がないにもかかわらず、代理人であるとして行われた行為をいいます。与えられた代理権の範囲外の行為をする場合も無権代理となります。
【無権代理行為の効果は?】
無権代理行為が行われた場合、その効果は本人に帰属しません。前記の例では、息子が勝手に親の不動産を代理人として売却しても、父親はその不動産を買主に引き渡す義務がないということです。これは、本人の利益を考慮したものです。したがって、本人が効果を帰属させることを承認すれば、本人に効果が帰属します。追認は、原則として、行為の時にさかのぼってその効力が生じます。ただし、第三者の権利を侵害できません。
【無権代理人から購入した者は追認を求められる?】
無権代理行為の相手方は、相当な期間を提示した上で、本人に追認をするよう促すことができます(催告)。その期間内に本人が返答(確答)しなかった場合は追認を拒絶したものとみなされます。なお、相手方は、無権代理の事実を知っていた場合であっても催告できます。
【無権代理人から購入した者は契約を取り消せる?】
本人が追認しない間であれば、無権代理行為の相手方は、無権代理人との間で締結した契約を取り消すことができます。ただし、相手方は無権代理について善意(知らないこと)でなければなりません。
【無権代理行為の相手方は無権代理人に責任追及できるの?】
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権や本人の追認があったことを証明できなければ、相手方の選択に従い、履行(契約を果たすこと)または損害賠償の責任を負うのが原則です。ただし、次の場合は責任を負いません。
①他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
②他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、責任を免れません。たとえ相手方に過失があったとしても、無権代理人自身が代理権のないことを知ってたような場合には、無権代理人の
責任を免れさせる必要がないからです。
③他人の代理人として契約をした者が制限行為能力者のとき
【無権代理人が不動産を売却した後に本人が死亡したら?】
本人が、追認や追認拒絶をしないまま死亡し、無権代理人が本人を単独相続したときは、無権代理人の行った契約は当然に有効となり、本人から相続した追認拒絶権を行使することは、信義則に反するため許されません。したがって、無権代理人から不動産を購入した者はその所有権を当然に取得することになります。
【無権代理の後に無権代理人が死亡した場合はどうなるの?】
本人が追認や追認拒絶をしないうちに無権代理人が死亡し、本人が無権代理人を相続したときは、本人は、無権代理人が死ななければ普通に行使できた追認拒絶権を主張することができます。
図URL:
https://drive.google.com/file/d/15P4dksQVCgdxsuXU5lBFBdH_TQzbF3sX/view?usp=s
haring
図の本人Aが追認拒絶権を行使すれば、Cは不動産を取得できません。しかし、相手方Cが無権代理行為について善意・無過失であった場合で、無権代理人Bに対して、損害賠償請求を主張していた場合は話が別です。この状態で、無権代理人Bが死亡した場合、本人Aはこの無権代理人Bの相手方Cに対する責任を相続したことになります。この場合、本人Aは追認拒絶できる立場にあったことを理由に、この損害賠償責任を免れることができません。
(過去問題にチャレンジ!)
【問 題】
A所有の甲土地につき、Aから売却に関する代理権を与えられていないBが、Aの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、表見代理は成立しないものとする。(2021年度問4)
1 Bの無権代理行為をAが追認した場合には、AC間の売買契約は有効となる。
2 Aの死亡により、BがAの唯一の相続人として相続した場合、Bは、Aの追認拒絶権を相
続するので、自らの無権代理行為の追認を拒絶することができる。
3 Bの死亡により、AがBの唯一の相続人として相続した場合、AがBの無権代理行為の追
認を拒絶しても信義則には反せず、AC間の売買契約が当然に有効になるわけではな
い。
4 Aの死亡により、BがDとともにAを相続した場合、DがBの無権代理行為を追認しない限
り、Bの相続分に相当する部分においても、AC間の売買契約が当然に有効になるわけ
ではない。
正解:2
1○
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生じます(民法116条1項本文)。したがって、AがBの無権代理行為を追認するとBが行った契約は有効にAC間に帰属します。
2×
無権代理人が本人を相続した場合は、その無権代理行為は相続とともに当然有効となります(最判昭和37年4月20日)。したがって、Bは、自らの無権代理行為の追認を拒絶することはできません。
3○
本人が無権代理人を相続した場合は、本人が追認を拒絶しても何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に相続により当然に有効にはなりません(最判昭和37年4月20日)。したがって、表見代理が成立するような特殊事情がない限り、AがBの無権代理行為の追認を拒絶すれば、AC間に売買契約の効力が有効に生ずることはありません。
4○
無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではありません(最判平成5年1月21日)。本問の場合、共同相続人Dが追認を拒絶すれば、Bの相続分に相当する部分についても、Bのみでは追認できません。したがって、AC間の売買契約が当然に有効になるわけではありません。
筆:Kenビジネススクール代表 田中謙次
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