表現の自由と「外圧」① ~女子差別撤廃委員会について~

 こんにちは、赤松健です。
 4月16日現在、日経新聞社の『月曜日のたわわ』の広告掲載について国連女性機関から抗議がなされ、広告掲載基準の見直しまで求められるなど、今まさに表現の自由に対して海外からの圧力、「外圧」が問題となっています。
 この「外圧」問題は、今に始まったことではないのです。日本の、とりわけマンガ・アニメ・ゲームに対する表現の自由に対しては、様々な形で「外圧」がやってきて、表現規制を行うよう求めてきます。とりわけ、子どもへの性的搾取を理由に、マンガ・アニメ・ゲームに描かれた非実在児童も児童ポルノとして規制しろとの主張が「外圧」としては多くなっています。

 私達は、こうした「外圧」について、「国連や外国政府等が言っているから従わなくてはならないんだ・・・」と単純に思い込むのではなく、何を理由として表現規制を求めているのか、その理由には合理性があるのか、きちんと見極めて、時には正面から戦わなくてはなりません。そうでなければ、日本が独自に発展させてきた多様性ある表現、それに基づく文化や経済圏を一気に失うことになりかねないのです。

 私は、マンガ・アニメ・ゲームの過度な表現規制に反対し、外圧から日本の文化・コンテンツを守るため、これらに一貫して抗ってきましたし、これからも徹底的に闘っていきたいと思っています。

 そこで、過去にどんな「外圧」があり、これからどう闘っていかなくてはならないのか、それをご紹介したいと思います。

 今回はまず、「女子差別撤廃委員会」に関して説明していきましょう。

〈女子差別撤廃委員会とは〉

 女子差別撤廃委員会とは、女子差別撤廃条約の実施に関する進捗状況を検討するため、同条約に基づき設置されている組織です。
 23人の徳望が高く、かつ、この条約が対象とする分野において十分な能力を有する専門家で構成されることになっていますが(条約17条1項)、メンバーは国等の代表ではなく、あくまでも個人の資格で委員となります。

 女子差別撤廃条約上、締約国は、少なくとも4年ごと(※)に条約の実施のためにとった措置を女子差別撤廃委員会に報告する義務を負っており(条約18条1項)、女子差別撤廃委員会は当該報告について対面審査を行い、勧告や要請を内容とする「最終見解」を発表します。
※ 締約国が増えたため、実際は4年に一度ではなく、7~8年に一度の報告となっています。

 前回の勧告や要請を含んだ「最終見解」は、2016年の第7回及び第8回報告についてのものです。この中で、日本に対して、マンガ・アニメ・ゲームに関する懸念・要請を出しています。

合同定期報告⓵
合同定期報告②

 「固定観念が引き続き女性に対する性暴力の根本的原因であり、ポルノ、ビデオゲーム、漫画などのアニメが女性や女児に対する性暴力を助長している」と懸念を表明しています。

 また、「差別的な固定観念を増幅し、女性や女児に対する性暴力を助長するポルノ、ビデオゲーム、アニメの製造と流通を規制するため、既存の法的措置や監視プログラムを効果的に実施すること」を要請しています。

 画像内で指摘しているとおり、マンガ・アニメ・ゲームが、差別的な固定観念を増幅させ、女性や女児に対する性暴力を助長していることについては、具体的な根拠はありません。また、「差別的な固定観念を増幅させ、女性や女児に対する性暴力を助長する」マンガ・アニメ・ゲームがどのようなものなのか、誰がどのように判定するのかも不明と、非常に問題があります。

 そして、重要なのは、この懸念や要請、勧告を含む最終見解は、女子差別撤廃委員会のメンバーが独自に作成したり、国内の団体から送付された意見をもとに作成されたりしており、法的拘束力がないことです。
 一切無視していいということではありませんが、あくまで女子差別撤廃委員会のメンバーの見解ですので、各部分で合理的な意見かどうか、精査する必要があります。

 そして、上記のような根拠なき懸念、要請に基づく表現規制に対しては反対していく必要があることは言うまでもありません。

〈実際にあった「外圧」に基づく国内での表現規制〉

 実際、近年こうした「外圧」を利用しながら、マンガ・アニメ・ゲームに対して表現規制を進めようとする動きが活発化しています。

 その一例が、去年2021年夏にあった、全国フェミニスト議員連盟によるVtuber戸定梨香への抗議です。

国連からの外圧に基づく国内での表現規制の動き

 当該抗議文は、松戸市ご当地Vtuberの戸定梨香を、その容姿や服装から女子中高生を性的対象物として描写されたものと主張し、公共機関である警察署が女児を性的対象とするようなVtuber(アニメキャラクター)を採用することはあってはならないと抗議するものです。
 この抗議文の中で、抗議を正当化する材料として、女子差別撤廃委員会の勧告という外圧を利用しているのです。

 「国連女性差別撤廃委員会の勧告(2016年)は、日本政府に対して『固定観念と有害な慣行』として『メディアが、性的対象とみなすことを含め、女性や女児について固定観念に沿った描写を頻繁に行っていること』に懸念を表明しています。」との一文があり、「外圧」の利用は明らかです。

〈女子差別撤廃委員会と表現の自由の今後〉

 先ほど述べた2016年の第7回及び第8回報告についての最終見解ですが、第9回報告が2021年9月には提出されています。この報告と女子差別撤廃委員会による対面審査を経た後に、最終見解が今年2022年中に出るものと考えられます。
 この第9回報告の時点でも、「女性及び女児に対する性的暴行を助長するポルノ製品の禁止のために講じられた措置を示されたい」といった質問が出ています。

「ポルノ製品」というあいまいな表現には、マンガ・アニメ・ゲームが含まれる可能性があり、ここを入り口として2016年と同様の最終見解を出され、また「外圧」として表現規制の材料として利用される恐れがあります。

 今後も、「外圧」とそれを利用した国内での表現規制の流れを抑えていかなくてはなりません。そのために、まずは「外圧」そのものに対する日本政府の対応がいかなるものとなるのか、弱腰対応をして表現規制の受け入れが既成事実とならないよう、声を上げ、戦っていかねばなりません。

 これからも、私、赤松健は声を上げ続け、表現規制と徹底的に闘います。


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