潜水艇タイタンの事故についてエンジニアとして思うところ

先日、2023年6月22日に潜水艇タイタンの乗員乗客5人の死亡がアナウンスされました。ニュースを見ると潜水艇そのものは外部組織の認証を受けていないものであると報じられていています。私は機械系のエンジニアなので、設計がどうであったか、品質保証や認証行為がどうであったかという点が気になるのですが、潜水艇が未認証と聞いて背筋が凍ってしまいました。また、タイタンが潜るのは国際水域のため、各国の安全法に従わなくてよいというのもも驚くべき点と思います。
何か物を作れば、特にそれが人が使用するもの、人が乗るものであれば安全で安全であるかどうかを確かめる必要があります。その確かめる先は、設計、製造、運用など、製造するものに関する様々な点で、問題がないことを確かめることがものづくりの基本なのですが、報道を見る限りそういった点をほとんどすっ飛ばしているような印象を受けます。つまり、どんなに細部まで作り込まれていたとしても(実際には作り込まれていなかったのかもしれませんが)問題ないことを確認していないので、素人のクラフトワークと何も変わらないということになります。
ものづくりにおいて安全性は一つの大前提です。例えば車について考えると、単に道路を走るだけではなく、事故が起きた時に乗っている人を守るような強度や機能を備えています。また、今の車は事故を事前に防ぐような安全に配慮された機能がついているものも多くあります。もし速度を出す、燃費を良くするだけを意図して車を作れば、事故を起こした時にどうする、事故を起こさないようにどうするなどの機能や機器は邪魔で重りにしかならないのですが、安全でなければならないという大前提があるのでわざわざ機能をつけています。潜水ツアー会社のオーシャンゲートは、冒険を提供するベンチャー企業ということもあり、安全性について能力が不足していて、それを犠牲にしないとやっていけない部分があったと思われます。しかし、それを考えても、世の中に存在する認証行為を受けていないという点は単に手抜きで努力が足りていなかった考えるべきと思います。おそらくオーシャンゲートは存続することは不可能でしょう。安全性を蔑ろにして消えていった企業はいくつもありますが、オーシャンゲートもその一つになるのではないでしょうか。
以下の記事を見ると、タイタンは実験的な乗り物であり死んでも文句を言わないという誓約書にサインをしているので、遺族は潜水ツアー会社のオーシャンゲートを訴えることは難しいとあります。感情的にはそんなことがあるのかという気がしてしまいますが、文書で意思表示を残しているので仕方ないことなのかもしれません。

https://toyokeizai.net/articles/-/683918

今後、事故の原因究明が進められ、もしかしたら潜水艇の強度は全く問題なくて、別の要因により事故が発生したという結論になるかもしれません。それでも認証行為がなされておらず問題ないことを確認できていなかった点は、乗り物を扱うという会社としてあるべき姿ではないと思います。


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