映画レビュー『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
シネクイント先行公開作品。
『14歳の栞』チョコレートの竹林亮監督。
これは、完全にナーメテーター案件。
「またタイムループものかよ」とか、そんなレベルでは説明が付かない良作。
激務に追われ、毎日が繰り返しのように感じる日常。
それが、もし本当に繰り返しているとしたら…
中堅(弱小?)広告制作会社の社員・吉川(円井わん)は、
あるタイミングで自らがタイムリープしていることに気づく。
同じく「繰り返す同僚たち」のが導き出した答えは、上申制度。
この一週間を抜け出すには、会社の縦関係を制覇して
上司にタイムリープである事を気づかせなければいけない。
「鳩のポーズ」を起点にした、そのバカバカしいミッションは、
回数を重ねるうちに壮大な計画へと変化する。
小気味よく進む序盤、主演・吉川の一人称ドラマから
徐々にバディものへと速度を増して行く。
個人的には、映画マニアの同僚・三河悠冴がすごく良い。
『さかなのこ』で、ナイフを大事にしていたヤンキーの彼。
あと、永久部長(ながひさと読む)は、
もはや「マキタスポーツ以外にはハマらない」と思わせるほどの必然性がある。
この手の”抜けた上司”役には、適任すぎる配役だった。
ほとんどのシーンがオフィス(および、その周辺)で完結する
シチュエーション・コメディでありながら、
音楽と映像効果で魅せる展開力。
中盤に訪れる、『バクマン』さながらの漫画的画面構成とその描写は圧巻
スペクタクルが押し寄せる。
シンプルに涙があふれた。
「同じ日を繰り返せたら、もっと上手く仕事できるのに」。
誰しもが一度は感じた願いは、
同時に「働くとは何か?」、「目の前の大事なものを忘れていないか?」と問いかけてくる。心が痛い。
三部構成の二部あたりで完全K点超えの名作。
全国民、前情報なしで見てほしい。
「カメラを止めるな!」を見た時と同じような
驚きと“やられた…!”感が心地よい。
この方法論、流行りそうで、何気に一筋縄で出来ない感じ。
『12人の優しい日本人』とか『キサラギ』みたいな
シットコム”風”の雰囲気を完全なオリジナル作品たらしめるのは、
主演の円井わんの芝居と、愛すべき同僚たちのキャラクター、
そして、竹林監督の手腕なのだろう。
ジャマにならないギャグの入れ方も素晴らしい。
80分でこれをやり切る、それが一番恐ろしく、素晴らしい。
★4.3
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