社内恋愛をした時の話①
営業になる研修の時、
後に恋愛をする女性と出会います。
本気で一人の女性を好きになったのは、
中学生の時以来です。
それだけ、彼女にのめりこみました。
彼女は仮名で美樹さんとします。
美樹さんは短大を卒業して、
ショールームの営業として入社。
年齢は私と同い年です。
最初の第一印象は可もなく不可もなく、
特に気にも留めませんでした。
タイプでいうと原田知世で、
化粧も下地と薄い口紅をする程度の
さっぱりとしたさわやかな感じの女性でした。
私は研修で彼女と一緒に行動することになり、
色々と話をしました。
美樹さんは営業を希望したとあって、
落ち着いた話し方。
そのせいか、気軽に話せました。
話下手な私に対して色々と質問をして、
話を引き出してくれます。
そんな気配りのできる美樹さんのやさしさに、
次第に惹かれていきました。
美樹さんのことを思うと胸が苦しくなり、
居ても立っても居られなくなって、
彼女の同期から連絡先を聞いて
デートに誘うことにしました。
美樹さんは実家暮らしであることから、
連絡先は自宅の固定電話。
ここで、問題が生じます。
電話に出るのが、
常に美樹さんのお父さんであることです。
その都度、自分の名前を言って
職場の同僚であることを告げても、
一向に取り次いでくれません。
もちろん、美樹さんは私が何度も
自宅に連絡していることを知りません。
当時はまだ、誰もが携帯電話など
持っていない時代。
彼女の家に電話をした際に
居留守を使われるのは、
誰もが辿る通過儀礼のようなものでした。
いつも「お父さんが電話に出ませんように」
と祈りながら、電話をかけ続けました。
これが約1ヶ月続いたある日、
とうとうその時はやってきました。
受話器から聞こえる声は
不機嫌そうな男性ではなく、
聴き慣れない女性の声。
美樹さんのお母さんです。
私にはそれはまるで
女神の声のように思えました。
美樹さんは不在でしたが、
お母さんは私の連絡先を聞いてくれ、
ようやく取り次いでもらうことが
できたのです。
その後美樹さんから連絡がきて、
「一緒に食事に行ってくれませんか?」と
尋ねたところ、沈黙が少しありましたが、
彼女は小さな声で「喜んで」
と言ってくれました。
生まれて初めてのデートができることに、
私は最高潮の幸せを感じていました。
(つづく)