しんきらり やまだ紫
本書は漫画本である。ストーリーとして大きな山があるわけでも谷があるわけでもなく夫と子供のいる主婦としての女性の日常を描いていている。
奥付をみると、私が購入したのは高校時代。受験で上京して神田で購入したような記憶がかすかにある。
そして手放せなく今も手元にある。
本は、漫画本も含めて、読むタイミングによって様々な感想がある。だから月日を置いても繰り返し読み、新たな視点や印象が自身に生まれる。まるで時々の自分の心を映す鏡のようだ。
作者の やまだ紫氏は 残念ながらすでに他界している。女性目線の作品だと思うが男性の私にもなぜか染みる。
80年代、女性が社会に出ることについての問題意識が世間的にも顕在化していた時代だが、その表現するところは今も共感を得るところだろう。
なにげない日常の中のチクリと刺さるストリーとデッサン調の絵が心に響く。
しんきらりと鬼は見えたりし菜の花の
間(あわひ)に蒼きにんげんの耳
「河野裕子歌集」-しんきらり冒頭より-
本書冒頭、歌人 河野裕子氏(この方もすでに他界されています。)の「菜の花」をテーマにした短歌が複数掲載されている。
私には本書の全体の印象は、どういうわけか曼珠沙華が結びつく。
※見出し画像 ちびまゆさんの曼珠沙華のイラストを使わせていただきました。ありがとうございます。