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宇多田ヒカルが『First Love』をリリースして20年が経ったわけですが

先ほどTwitterにも投稿した通り、宇多田ヒカルの1stアルバム『First Love』がリリースされて、本日2019年3月10日で丸20年が経過。日本歴代トップである765万枚のセールスを記録した、文字通りモンスター級のアルバム。僕にとっては間違いなくJ-R&Bの原体験の一つであり、そんなアルバムが日本で最も売れたという事実が今でもとても誇らしい。友人、親戚、そして親と、自分の周囲だけでも大体の人は所持していたもんなぁ。

1999年、それはJ-R&Bバブル

上記の理由もあり、1999年というのは個人的にとても印象深い思い出の詰まった一年でして。この頃、新人のR&Bアーティストがとにかく頻繁に各所からお披露目され、前年にブレイクしたMISIA、そして宇多田ヒカルの決定打がいかに絶大だったのかを幼心にも悟らざるを得なかった。興味が新たな興味を呼び、R&Bという得体の知れない音楽が世間にも加速度的に浸透。商業ヒットも数多く生まれ、差し詰めバブルの様相でした。

<1999年の主なデビュー組>
MINAMI(1月)
MIO(2月)
bird(3月)
Showlee(3月)
Tina(4月)
wyolica(5月)
AN-J(5月)
PUSHIM(6月)
Crystal Kay(7月)
m-flo(7月)
葛谷葉子(8月)
Kirari(9月)
小柳ゆき(9月)
Calyn(9月)
F.O.H(現Full Of Harmony)(10月)
J Soul Brothers(10月)
Tyler(10月)
倉木麻衣(12月)

ざっと思いつくアーティストだけでもこんなに。ほぼ毎月、誰かしらがデビューしているという状態でした。これ、あくまでも1999年デビュー組に絞った話で、実際には彼らに加えてMISIAや宇多田ヒカル、さらにはSugar Soul、嶋野百恵、DOUBLEといった面々も猛威を振るっているわけです。最高じゃねえか。

もちろん、まともに知られることなくフェードアウトしたアーティストも、付け焼き刃のクオリティでそもそも相手にされなかったアーティストもたくさんいたのだけど、その玉石混淆なラインナップすら余裕を持って楽しめたのが1999年だったなと。きちんと消費されるかどうかは別として、あんなにも明らかな供給過多、後にも先にもきっと出くわせないと思うし。

さらに言えば、かようにド派手で混沌とした黎明を経たからこそ、J-R&Bはある程度までアーティストの絶対数を確保しながら繁栄出来たと言えるでしょう。このムーヴメントがなければ発生し得なかった事象、結構たくさんあるんじゃないかな。

プレイリストを作りました

で、『First Love』の話に戻りますが、やっぱり1999年を代表するシンボリックな一枚なので、その時代を回顧するなら『First Love』が節目を迎えた今がふさわしいような気がしまして、プレイリストを作りました。

「1999年のJ-R&B」
https://itunes.apple.com/jp/playlist//pl.u-V9eYNsZWql3

誰もが知るヒット曲から、すっかり埋もれてしまっているナンバーまで50曲ほど選びました。猫も杓子も新譜に熱心なので、たまにはクラシックを聴いてゆったりしましょうや。

では以下、補足も兼ねていくつかピックアップ。

Tina「Magic」
イラストジャケも強い印象を残したTinaの2ndシングル。同曲収録の1stアルバム『Colorado』はオリコン初登場1位を記録。商業的に成功した四天王(MISIA、宇多田ヒカル、小柳ゆき、倉木麻衣)を除けば、おそらく同時期で首位を獲得した唯一のR&Bアーティスト。

葛谷葉子「TRUE LIES」
プレイリストを作っている最中に何がびっくりしたって、いつの間にか葛谷葉子のアルバムがサブスク解禁されていたってこと。ほんの数ヶ月前は確かに未配信だったのに。両作とも松尾潔がプロデュースを手掛けた涼しい名盤ですが、Groove Theoryネタのデビュー曲はやはり外せない。

宇多田ヒカル「Addicted to You」
当時、初動ミリオンを記録したことでも話題に。その割にライブでは毎度のごとくセットリストから外されるなど、不遇な運命を背負った一曲。まあ、彼女のクリエイティビティありきというよりは、完全に世のR&Bの勢いに乗っかった作風なので致し方ない部分もあるか。

F.O.H「BE ALRIGHT」
記念すべきデビュー曲。MVはご愛嬌。今年は20周年イヤーということで、何か大きな動きがありそうな予感。

SPEED「Long Way Home」
解散前ラストシングル。個々のソロパートも含め好きな楽曲なんですけど、曲調は「Addicted〜」と同様、完全に流行に引っ張られた感がある。

ゴスペラーズ「熱帯夜」「パスワード」
翌年、「永遠に」がヒットする彼らですが、今思うとそこに至る導火線はこれらの楽曲でちゃんと敷かれていたように思います。特に「パスワード」はアラビアン風情もある秀逸チキチキソング。

PUSHIM「STRONG WOMAN」
ACOの「悦びに咲く花」と並んで、1999年を代表するディープ・メロウ。この曲の印象が強いお陰で、レゲエに身を置く彼女に毎度のようにソウルフルな歌唱を期待してしまう。

FUNK THE PEANUTS rated “R”「you go girl!」
DREAMS COME TRUEの吉田美和と、サポートを務める浦島りんこからなるユニット。本作のみ、R&BシンガーのROBIN CLARKが参加。スクラッチも取り入れたシックなノリで従来の”ファンピーっぽさ”を払拭したものの、商業的には失速。当時こぞって出演した「うたばん」が超面白かった記憶。

SKOOP「Over & Over」
現Skoop On Somebody。男性R&Bが脚光を浴びるのは翌年以降の話なので、この時はまだ知る人ぞ知る存在。

bird「空の瞳」
「SOULS」よりもこの曲って人、実は多いんじゃないかと思う。CMでめっちゃ流れてたしね。

globe「MISS YOUR BODY」
Kiss Distination「DEDICATED TO YOU」

かつて「宇多田ヒカルが僕の時代を終わらせた」と発言した小室哲哉が、宇多田ヒカル台頭時に送り出したのがこれらの楽曲。うん、地味です。ただやはり、一時代を築いた彼のような人物がR&Bに挑んだという功績は努めて評価するべきだし、実際R&Bが”来た”のだから確かな先見の明の持ち主だった。

井手麻理子「〜Seek〜 それが愛かもしれないから」
「There must be an angel」がスマッシュヒットしたハスキーな歌姫。ちなみに、いまだに現役です。

Folder featuring Daichi「Everlasting Love」
変声期へと本格的に切り替わるギリギリ=三浦大知の成長過程が味わえることでおなじみ。前シングル「I WANT YOU BACK」から一転、チリチリパーマを当てた大人っぽい風貌もトピックでした。

KAANA「Dreams Come True」
この時期は”早すぎたディーバ”が何人も浮かんでは沈んでいったわけですが、彼女もその一人か。クラブ界隈では早くに名の知れた存在だったものの、その後のリリースがややもたつき、長続きしなかった印象。

SAKURA「Oh I・・・」
あえて「First Love」の一つ前に配置した。純粋にメロディが美し過ぎて。幕引き感すげぇよ。

以上でございます。1999年に関しては全くもって書くことに困りません。込み入った話はまた別の機会に、ゆっくりと。

プレイリスト「1999年のJ-R&B」
https://itunes.apple.com/jp/playlist//pl.u-V9eYNsZWql3

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