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マニラKTV☆カラオケ物語11
【前回までのあらすじ】
ショッピングセンターで何でも買ってあげるとラーニャに言うも
何も欲しがらない。あまりにも拍子抜けした健太であるが
この後に厳しい現実を思い知ることになる・・
さあホテルに戻ってこれからと思った矢先、突然帰られてしまう。
すっかり傷心となった健太は、部屋に帰ってふて寝をする。
そしてその後に藤田さんから、彼女の従妹を食事に連れてって
くれないかと頼まれる。とんだお荷物を背負込んだと落込むが
グレイスのあまりの可愛さに健太は驚く。そして明るく人見知り
しない性格に徐々に惹かれつつも苦悩は続く。
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ホテルの玄関からロビーに入った、俺はグレイスにちょっと話があるからと
ソファーに座るよう促した、そこで俺はグレイスに言った。
『ミシェルはいつ戻れるか分らないそうだ、いったん家に帰りなさい・・』
グレイスは首を横に振った。
『ダメなの、私の家は近くまで車やトライが入れない所なの』
『夜は酔っ払いがたくさん居ていつも喧嘩が絶えない場所なの・・』
グレイスは悲壮感漂う表情を見せ言った。
嘘をついている感じには見えなかった。
俺は心の中でため息をついた・・そして心の内は表情に出さずに言った。
『俺なんかと一緒だと危ないよ、マリボック(スケべ)だから・・』
それに対してグレイスは微笑を浮かべながら答えた。
『kenは、優しいでしょう・・そんな人じゃないってわかるわ』
やれやれ・・俺は覚悟を決めた。
『 君の好きにしなさい(バハーラ カ)』
そうひとこと言って、ソファーから立ち上がり歩きだした。
グレイスは黙って付いてくる、部屋に入ると俺は言った。
『この部屋は、自由に使っていい』
『冷蔵庫の飲み物もそこのお菓子も食べて構わないよ』
『でも俺は、ちょっと出かけて来るから、戻るのは朝になると思う』
『kenは、私のこと嫌いになったの?・・』
『ははは、それはないって、朝になったら、ちゃんと家に帰るんだよ』
グレイスは不服そうな顔をしながら、しぶしぶ頷いた。
俺は携帯をチェックした、バッテリーが切れてる・・
予備のバッテリーを入れた、多数の着信履歴だ。
ラーニャとサラからだった、はやる気持ちを抑えてバックから着替えを出して
シャワールームに入り急いでシャワーを浴びて身支度をした。
グレイスが口をとがらせて『彼女に会いに行くんでしょう?』と聞いてきた。
『さあ、どうかな~片思いだからな、どうせまた振られるよ』
俺は笑顔でグレイスに言った『まずは俺達、友達から始めよう(マグ カイビガン ムナ タヨ)』
『明日は帰国しなければならないし』
『今回はあまり時間がないからね・・』
『kenは次いつフィリピンにこれるの??』
『2か月後かな・・その時またゆっくり食事にでも行こう』
俺は口から出まかせを言った。
俺は部屋を出てエレベーターで一階に降りフロントへと向かった。
フロントの女性スタッフに俺は尋ねた。
『ウォーレンかデニスは今日は出勤してますか?』
『デニスはいます、少々お待ちください』
一分もしないうちにデニスは現れた。
『お久しぶりです』と、笑顔で握手を求めて来る。
彼は日本語が堪能で、他の日本人客からの信頼も厚い男である。
『すまん、ちょっと頼みがあるんだ』
『いま部屋で友達の親戚の子を預かってるんだが』
『何かあったらすぐに連絡をもらえないか?』
俺は、自分の携帯番号のメモと一緒に300PのSMARTカードを手渡した。
デニスは、『えっ、こんなにいいんですか』と笑顔で受け取った。
『タクシーですね? 』デニスは通りに出て一台のタクシーを捕まえてくれた。
俺はデニスに礼を言って、タクシーに乗り込み行き先を告げた。
目的地はマラテの「ライムライト」である。
一方通行の通りを何度か右左折しながら、アドリアティコ通りを進むと約5分で到着した。
お店の外には、店長とスタッフの二人が立っていた。
シーズンオフの今は比較的店が暇なんだろう、店長が笑顔で声を掛けてきた。
『ラーニャがずっとお待ちですよ』
俺は、スタッフが開けてくれたドアから店内へと入って行った。
つづく