マニラKTV☆カラオケ物語4
天使のような笑顔をたたえて現れたラーニャに
思わず引き込まれてしまい、しばらく言葉を発せずにいた・・・
神秘的な瞳を携えた表情で、『ラーニャです、はじめまして』
と言われ、俺は、やっと我に帰った。
お互いに自己紹介して、何となく最初は当たり障りない話をしていた。
でもやはりお互いの過去の話に自然となる。
『あなたフィリピン人の奥さん居るでしょう?』
『えっ居ないよ~でも何でそんなふうに思ったの?』
『あなたタガログ語が少し話せるでしょう、絶対居ると思ったわ』
『実はね1年前はフィリピン人の彼女が居たんだけど・・』
『じゃあ今は居ないのね?』
『うん、そうだよ』
するとラーニャが体をぴったりと密着させてきた
ラーニャは俺の耳元に唇を寄せて
『良かった・・私ちょっとラッキーかも』
と一言つぶやいた
はっ!と思い自分の心臓が高鳴るのがわかった。
そしていたずらな瞳を湛えて、『私ね、いま好きな人が居ないの』
『でもそれは今日までの話よ、今は違うの』
『健太のこと好きになりそうだから・・』
思いもよらぬことを言われて、かなり動揺した。
するとお店のボーイが近づいてきて
『すみませんラーニャさんにご指名が入ったので』
お借りしますと、申し訳なさそうに言ってきた。
昨日、ヘルプで付いたお客さんからの場内指名であった。
そこで俺は、わざとすねた振りをして、反応を窺って見た。
『え~やだよ、もう帰ろうかな・・』
するとラーニャは自分が想像もしなかった、思いもよらぬ行動に出たのだった・・
ラーニャ微笑を浮かべながら顔を近付けてきた。
一瞬だけ唇が重なり、ラーニャの舌が俺の唇を掠めた・・
それは甘いカクテルの入り混じった、奈落の味がした。
わずか1秒程度のことであったが、とてつもない長い時間に感じた。
そして耳元で、『ディト ヤンサ プーソ コ イカウ ラン』
(私の心の中にはあなたが居るわ あなただけ)
屈託のない笑顔で白い歯をみせるラーニャ・・
そうつぶやくと、すっと立ち上がり、指名客の元に行ってしまった。
つづく
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