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マニラKTV☆カラオケ物語16


帰国後の1週間は、ほとんど毎日のように、ラーニャとサラの二人と、電話やメールで話をしていた。

国際カード(当時はlineやヤフーメッセンジャーなどは無い)を使っていたものの通話代は数万円は、ゆうに超えていた。

今度の渡比の日程について、俺はラーニャに嘘をついた。

実際より2日後の日を伝えていた。

ところがこれが後に、とんだ騒動を巻き起こすことになるのだが・・

二人は店は違えど、同じグループ店である。

何だかんだで、他のCCA(カスタマーケアアシスタントのことでありお店の女の子の意味)からのチツミス(密告)とかあり、結局気が付かれてしまう訳なのであるが・・

まあこの時の俺は、相当舞い上がっていたのだろう・・

そして当日、成田でサラに後で会えるのを楽しみにしているよとメッセージを送った。

午前9時半過ぎに飛び立ったPR431便は、定刻通りにマニラに到着した。

荷物もスムーズに出て来て13時過ぎにはタクシーの車内にいた。

さほど渋滞にもはまらずに、今回の宿泊場所であるマカティのヘラルドスイートに、チェックインした。

今回の宿泊ホテルの変更は、友人である池田サトシ君が仕事で取引先との折衝の為に、このホテルに滞在してるからである。

サトシ君は、パサイロードの「ファーストステージ」のCCAであるマリアと同棲中で、結婚を前提とした間柄である。

サトシ君のオキニが、この店にいるのは好都合であった。

俺はあわよくば、前回初日だけ行った「ファーストステージ」のCCAであるカイラともチャンスがあれば?などとスケベ心を出していたのは、言うまでもない。

俺はサラに電話を掛けて、17時にハリソンプラザで待ち合わせの約束をした。

空き時間にグロリエッタ(ショッピングモール)などを散策し、部屋でシャワーを浴びてくつろいでいたら、いい時間になったので出かけることにした。

この時間は渋滞するので、LRT(高架鉄道)でビトクルズ駅まで行き、駅からはタクシーでハリソンプラザ(ショッピングモール)まで行った。

待ち合わせ場所は、噴水のある石のベンチの所にしたのだが、時間通りにサラはやってきた。

清純で可憐な笑顔は、俺を一瞬で虜にするには十分であった。

一週間ぶりだが、相変わらず魅力的だ。

ラーニャとはまた別次元な美しさを秘めている。

俺は人目もはばからずに、サラを抱きしめ、ささやいた。

『イカウ ラマン アン グストコ アット ワラナ イバパ』(俺が好きなのは君だけ、他には誰もいない)

しかし、よくも口から出まかせが言えたものだと、俺は心の中で苦笑するしかなかった.。

いや、出まかせではなく、サラが好きだという気持ちには嘘や偽りなど微塵もない、動機は極めて不純であるが・・

俺の言葉に対しサラは、無邪気に笑いながら『え~、本当なら嬉しいけど』とはぐらかした。

とにかく掴みどころがない感じだ、一筋縄ではいかないだろう。

何しろこの美貌である、多くの男からチヤホヤされたり、たくさんのアプローチを掛けられているはずである。

俺はサラと色々話をしたり、観察しながら突破子を見いだして行こうと考えた。

それにしても私服姿のサラは、俺をとことん魅了した。

俺は、二階に行ってみようとサラの手を握った。

ハリソンプラザの二階では、携帯電話を売っている店が多く携帯コレクターの俺は、見てるだけでも楽しい。

こういう場所では、フィリピーナの目が輝くのは一目瞭然だ。

やはりサラがショップに陳列されている携帯を見つめる目は、俺を見つめる目とは、明らかに違い、笑ってしまった。

しかし相手が誰であれ、携帯ショップに長居は禁物である、うっかりしてると大散財は避けられない。

サラに一階のレストランに行こうと促した。

エスカレーターで一階へ降りる時に、サラの肩を抱き寄せた。

『マイ カリバル バアコ?(俺に恋のライバルは居る?)』

俺はサラの瞳を見つめ、クールに言い放った。

『ワラ ペーロ マアガ パ(いないわ、でもまだ早いでしょ)』

一瞬サラは、笑顔をこちらに向け言ったが、どこか遠くを見つめるような、陰のある表情に変わった。

『まいったな・・』俺は両手を広げておどけて見せた。

擬似恋愛については、ひとつのゲームとして捉えている。

でも恋愛ゲームが本気になり、家庭が崩壊した人を何人も知っている。

自分自身だって、どこでどう転ぶかわかったもんじゃない。

ラーニャとサラ、この二人に翻弄されつつある俺がいた・・

この日は、同伴でそのまま「デジャヴ」に入店する予定である。

一階のフィリピン料理のレストランで食事後に、ハリソンプラザの出口で、客待ちしているタクシーに二人で乗った。

そして「デジャヴ」には、5分ほどで到着した。

店に入り、サラが着替えている間に、ヘルプの子が席にやってきた

『ナンシーです、よろしくね~』その子は両手で握手を求めてきた。

可愛いな、それと何となく目元がラーニャに似ている。

この時はまだ、ナンシーがラーニャの従妹だとは、知る由もなかった。

10分ほど経ってから、サラが着替え終わってやってきた。

そしてタイミングよく、ナンシーに指名が入り、他のお客さんの席に移動して行った。

今回は、時間をたっぷり使って口説くつもりはなかった。

俺は短期決戦で、一気に勝負に出ることにした。

駄目なら駄目で、別の方法を模索すればいい。


つづく



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