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マニラKTV☆カラオケ物語20


『島田様、もしよろしければアンジーとアフターしませんか?』

店長のマードックは、アンジーからまだ確認は取っていないが確たる自信があった

『えっ?えっ?本当かよ!』

部長は信じられないという表情を見せ、素っ頓狂な声を上げた

『その代わりテキーラのボトルを入れてもらえせんか?』

『そうして頂ければ、私のほうからアンジーに言い含めておきますから』

店長は、微笑を携えながら自信ありげな表情で言い放った

『よし!OKだ!でも彼女は過去に誰ともアフターしてないけど大丈夫かな?』

部長は、半信半疑な表情ながら嬉しさを隠しきれない様子である

『心配御無用です、もうすぐ席に戻ってきますから直接確認下さい』

そう言うと店長は、VIPルームから出て行った


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部長が言った「アンジーはまだ一度もアフターしたことがない」というのは事実ではない。
アンジーには、3人の太いパトロンが居て、それぞれから毎月5万ペソのお手当てを貰ってる。
3人の渡比が重ならないように、そのあたりは巧みな手腕でコントロールしている。
全員が日本人の旅行者で、その内の一人からは、マラテの高級コンドの家賃を負担させている。
コンドを利用するのは、その客が渡比してきた時だけで、普段はパラニャーケの自宅に帰る。

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アンジーの別の指名客が、もう一箇所のVIPルームからトイレの為、出てきた。

『今月も、トップの座は安泰のようだな』

お客に続きおしぼりを手にVIPルームから出てきたアンジーに、店長は語りかけた。

『私はまだ一度も負けたことが無いの、それにまだまだ稼ぎたいし』

アンジーが、貪欲に光る目で店長を見据えた。

『ちょっと頼みがあるんだが・・』

店長の言葉にアンジーは首を傾げ、言葉の続きを待った。

『アヤラカンパニーの島田部長とアフターしてくれないか?』店長は、素っ気なく言った。

『まさか、私に部長と寝ろって言ってるわけ?』アンジーが、目を見開いた。

このリアクションは、店長の想定内だった、お客を焦らし、期待を抱かせ、しかし、最後の一線を越えさせない・・

お客と寝ずにどう店に呼び続けるかが、キャストの腕のみせどころだ。

一般的に、多くの店は、CCA達にそう教えている。

通常どの店のトップキャスト達も、みな恋人や特別なパトロン以外は、枕営業せずにお客を繋いでいる。

肉体を開いた瞬間に、お客から男に変貌し、憧れのキャストが「所有物」という感覚になる。

何しろ男の「性」を知り尽くしているからこそ、CCA達は「最後の聖域」を死守しなければならないのだ。

『寝る必要はない、アフターで食事くらい付き合ってやれ』

『それと来月、お前の妹が入店するが、何かと便宜を図ってやる』

店長は、アンジーの瞳をまっすぐに見据えて言った。

『ギブアンドテイクってわけね、私が嫌だって言ったらどうする?』

アンジーが、ため息交じりに言った・・

『いや、無理強いはしない・・』

『ナーサ イヨ アン デシション (お前の判断にまかせる)』

困惑した表情のアンジーの肩を叩き、店長は店の奥へ消えていった。

そして数分後、VIPルームへ戻ったアンジーに島田部長が『アフター本当に大丈夫なんだよね??』

ギラついた眼でアンジーをみつめている。

『いいわよ、私のことを味わいたいなら・・』

『ラストまでもっとお金を使ってくれなきゃいや』

アンジーが、部長の耳朶を甘噛みしながらささやいた。

『参ったな、テキーラのボトルもう一本入れてくれ』

普段は、部下のサトシ君にコーヒーさえ奢らない部長が完全に翻弄されている。

『きゃ~ありがとう!嬉しい!』

アンジーが、部長に抱きつき、頬にキスをした。

『今夜の、アンジーはやけに飛ばしてますよ』サトシ君が小声で俺に語りかけた。

この時点で午前2時半を過ぎ、まもなく閉店の時間が迫っている。

俺は、アンジーの巧みな手腕に感心しながらも、ぼんやりとした思考を巡らせていた。

眼を閉じると、サラとラーニャのシルエットが、俺を見下ろし、無意識のうちに、歩み寄ってくる錯覚に捉われた。

隣にいるカイラを抱きしめ、ふたたび眼を閉じた俺は、まどろみの世界に静かに身を預けた。


つづく




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