マニラKTV☆カラオケ物語28
「ちょっとトイレに」と言い俺は席をたった。
トイレの入り口におしぼりを持ち、お客の初老の男性を待つために立っているノエルが居た。
目の前で改めて見ると、ゾクッとするような美しさが、いっそう際立って見えた。
ノエルの前を通り過ぎ、扉の前で待つ、2分、3分、しびれを切らした俺は苦笑いしながらトイレの外に一旦出た。
サラとノエル、二人の美女がおしぼりを持ち、並んで談笑していた。
俺はおもむろにノエルの前に立ち、「さっき焼肉SAKURAで君を見かけたんだけど、僕の友達がどうしても会いたいそうだ。ご迷惑でなければ、23時半くらいに連れてくるけど」
ノエルの表情がパっと明るくなり「本当に?嬉しい~待ってるね!」と一点の曇りもない澄んだ瞳で俺を見つめた。
明るさの中に誠実さが垣間見えるような笑顔に、複数のお客さんから指名される理由が分かったような気がした。
ようやくトイレから出てきた初老の男性客に寄り添い、席に向かうノエルの後ろ姿を無意識に目で追っていた。
やや呆れた表情のサラが、俺の脇腹を軽くつねり「あなた、パルパロ(浮気)ダメだから」と口を尖らせた。
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22時50分、俺はデジャヴを一旦出てタクシーでマカティのヘラルドスイートホテルに向かっていた。
タクシーの中から島田部長に電話をすると「玄関前で待ってます!よろしくお願いします!」やたらと気合の入った声が聞こえてきた。
23時を少し過ぎたあたりでホテルの玄関前に到着した。
窓を開けて「島田さん、こっちこっちと手招きした」
小走りに駆けてきた部長がタクシーに乗り込むと、独特の汗と体臭の混じった悪臭が漂ってきた。
俺は換気のために窓を5センチくらい開けながら「やはり人気のある子だから指名が何人か被ってますよ、まさに難攻不落の城みたいな感じかな、、」
「そうですよね、でもアンジーの時もそんなんだったんで大丈夫ですよ!頑張ります!」
乗車して10分くらいで、パサイのエドサ通りに出てMRTのタフト駅を通過すると、派手なネオンのゴーゴーバー(エドコン)が右手に見えてきた。
「島田さん、以前にサトシとエドコンに来たことあったでしょ?」
「はぁ・・でもあの時はせっかくホテルまでバーファイン(お店に料金支払い女の子を連れ出す)したんですが、何もしなかったし何も出来なかったです・・」
「どんなに美人でも、この子はお金さえ出せばどんな男とでも寝るんだと考えちゃうと、全く欲望がわかなくなってしまうんですよね・・」
やれやれ、そんなに潔癖症ならシャワー位ちゃんと浴びてコロンでもつけとけよと、俺は心の中で苦笑した。
つづく
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