マニラKTV☆カラオケ物語13
席についてサラから、一週間後のことを色々と聞かれたが、まだ何とも言えないからと、曖昧に答えていた。
『健太はどこのホテルに泊まってるの?? 明日の朝、行ってもいい?』
サラは目をキラキラ輝かせながら、上目遣いで聞いてきた。
『ありがとう、でもごめんね・・早朝のノースウエスト(現デルタ航空)で帰るから』
俺は嘘をつき『5時過ぎにはチェックアウトして出発する必要があるんだ』とても残念だという表情を作り、ジェスチャーを交え答えた。
サラは微笑を浮べて、俺の首に両腕を回し、『そう・・残念だわ、一週間後を楽しみにしてるわね』と耳元で甘く匂うため息とともに、言葉をもらした。
そして1セット終了まで30分を切った頃に、携帯が鳴った。
藤田さんからだ、俺はトイレに移動して電話に出た『健太か?色々面倒かけてすまんな、いまホテルに帰ったよ』
藤田さんの声は気のせいか、どことなく重かったが、俺は安堵のため息をついた。
やっとグレイスから開放される・・
『お疲れ様です、いま俺は出先なんですが、グレイスは部屋に居ます』
『さっそくミシェルに迎えに行かせてください』
俺は早く厄介払いしたい気持ちを、抑えきれず言った
しかし藤田さんからの返答は、俺の期待に沿うものではなかった。
『いや、実はな・・ミシェルなんだが・・』
『姉の子供が具合が悪いって言うんでな』
『2時間前から別行動なんだ・・』
『それで一人でラグナから帰って来たところなんだ・・』
藤田さんの言葉は、どことなく歯切れが悪く、何か隠し事でもしているかのようにも感じられた。
『分かりました、グレイスはとりあえず部屋で預かっておきます』俺は落胆を悟られないように言った。
『すまんな・・ミシェルが帰り次第、迎えに行かすよ』やや自嘲気味な感じで、藤田さんは答えた。
俺は一時間前に、ミシェルが男と、腕を組んでドリアティコ通りを歩いていたことを、藤田さんに言おうか迷ったが止めた。
俺は人違いではなく、さっき見かけたのは間違いなくミシェルと確信していた。
このまま藤田さんを、お店に呼び出そうか考えたが、どうも疲れてそうだったからやめることにした。
そしてサラには『ごめん明日早いから帰るよ』と言いチェックして店を出た。
俺は通りすがりのタクシーに乗り込み、マカテイのリトル東京に向かった。
何故なら部屋にはグレイスがいる、このままホテルに帰ったら欲望を抑え切れる自信がない・・
サウナで、マッサージでもしてもらいリフレッシュしようと考えた。
すると乗車して10分ほどで携帯がなった。
つづく
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