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マニラKTV☆カラオケ物語27

時間は19時55分を、タクシーのインパネの時計が表示していた。

休みで同行していたナンシーは、早々にネットワールドホテル付近で降り、車内にはノエルと初老の男性客の二人だけとなった。

「もう!このお客ったら最低、最悪よ!加齢臭は酷いし、あちこち触りまくるし・・」

「でももう少しの辛抱だわ、貴方と夢だったカフェを持てるんだし、愛してるわ・・」

「うんうん、わかってるよ」

ノエルは故郷のダバオ在住であるフィアンセの男と、携帯電話で話していたのだが3分ほどで終了した。

早口のビサヤ語で話してる為、当然ながら初老の男性客は理解できない。

「ごめんなさいね、弟がどうしてもノキアの新型の携帯電話をねだるもんだから、叱りつけるつもりでちょっと強い口調で喋っちゃった」

ノエルは上目遣いで男性客の顔を見つめ、流暢な日本語で首に手を廻し耳たぶを甘噛みしながら囁いた。

男は穏やかな笑顔でノエルを見つめ「心配しないで大丈夫だよ、今日もボトルを入れてあげるしチップも弾むよ」

「きゃー嬉しいわ!、ねぇキスして・・」

ちょうど信号待ちのタクシー後部座席の窓には、物乞いの二人の少年が窓枠を掴み、何かを訴える様に見つめていた。

「えっ?でも・・今はちょっと・・」

照れながら躊躇する男の両頬を掴みながら、ノエルの唇が男の口を塞いだ。

「くそったれが!」

走り出したタクシーを睨みつけながら、物乞いの少年は吐き捨てた。

タクシーはデルピラール通りを突っ走り、左手のアマルダホテルを越えるとデジャヴのネオンが見えてきた。

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デジャヴの店内は、約6割り程度の客入りであった。

店内入口右側には、15名ほどのCCAが待機してるのだが、ノエルには3名の指名客が付いていた。

ノエルと男の入店から約20分ほど経ったくらいだろうか、俺は店内の奥のテーブルに座りサラと至福のひと時を過ごしていた。


つづく

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