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マニラKTV☆カラオケ物語12


この日は、月曜日ということもあって、お客さんが3組ほどしか入っていない。

席についてから1分ほどで、ラーニャがあらわれ『ずっと待ってたのよ』

『携帯に掛けても全然つながらないし・・』

だがラーニャが妖艶な瞳で見つめてくると、やはり思考が停止しそうになった・・

俺は『ごめん』と一言だけいい、そのまま抱き寄せた。

『健太は明日帰国でしょう? 見送りにいってもいい?』

『あぁ、君の好きなようにしなよ、昼前にはチェックアウトするから』

正直なところ俺はあまりあてにしていなかった、どうせ来ないだろうと・・

だが1セットの90分はあっという間に過ぎ去った。

しかしラーニャが俺の耳のそばで放つささやきも、抱き寄せた時に、聞える胸の鼓動もすべて偽りだらけに感じてしまった・・

そしてお店のスタッフから『お時間ですが、延長なさいますか?』と聞かれたが帰ることにした。

ラーニャはかなり不服そうであったが、チェックして店を出た。

お店の前からタクシーを拾い『デジャヴ』へと向かったが、乗車してしばらくして渋滞に巻き込まれた。

何気なく車窓に見えるフィリピンレストランの看板を眺めていたら、二人組みのカップルが目に入った。

女のほうが、藤田さんの彼女のミシェルに見えた。

俺はウインドウを全開にして女の顔を凝視すると、目が合い女の顔があっ!と驚くのが確認できた。

俺はドライバーに、ここで降りる(ディトナラン)と言い、多めにチップを払ってタクシーから急いで下車した。

ところがどういうわけか、その姿が跡形もなく消えていた。

わけが分からず呆然と立ち尽くしていたが、きっと他人の空似だろうと自分に言い聞かせた。

俺はアドリアティコ通りからマニラ湾沿いに向かう縦の通りを歩き、マニラ湾に向かう感じで歩きだした。

ハイアット(ニューワールドマニラベイ)とけん太が見えた。

たくさんの客引きが、通りを歩いてる人達に、声を枯らして営業してる様子が見えた。

まとわりつく客引きを、適当にあしらいながら、そのままデルピラール通りまで歩いた。

どういうわけかタクシーが中々こないので、ジプニーに飛び乗り3分ほどの乗車で「デジャヴ」の前に到着した。

「ライムライト」よりもお客が入っている、おおよそ8割くらいの入りだろう。

しかし人気者のサラは、何故かウエイティングの席にいた

俺を見つけると、笑顔で駆け寄ってきた

俺はサラを抱き寄せて耳元で、君が好きだ、君だけ(グストキタ イカウラン)とささやいた。

それはこの時の偽らざる本心であった。

正直、ラーニャのことはこの時点ではほとんど見限っていた。

そしてこの数時間後に起こる事件のことも、まだ知る由がなかった。


つづく


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