マニラKTV☆カラオケ物語7
タクシーは右左折を繰り返した後、エルミタのマビニ通りを進む。
深夜なので渋滞はない、5分ほどでホテルに到着した。
このシティガーデンホテルは、マビニ通りのはずれにある。
ランク的にはパールガーデンと同等くらいの中級ホテルである。
部屋にはセキュリティボックスも完備されてあり、スタッフもフレンドリーで
日本語も比較的通用し、宿泊客の日本人の占める割合は多いほうである。
部屋に入ってシャワーを浴びた、カラオケを5軒も梯子するなんて初めてのことである。
アラームのスイッチを9時にセットしてベッドにもぐりこんだ。
俺は、ラーニャとサラのことを考えていた。
ラーニャの柔らかな唇と舌の感覚がまだ残ってる、いったい何なんだ、この気持ちは・・
あの瞳の奥に潜んだ魔力のようなものに、引きずり込まれてしまいそうな感じだ。
もちろんサラの美しさと、天真爛漫な明るさもなんとも比べ難い魅力だ。
二人をもし囲ったらいったいいくらあったら足りるんだろう?
そんなことを考えている内に、俺はいつしか深い眠りについていた。
けたたましく目覚ましのアラームが鳴り、目が覚めた。
携帯をチェックすると何件かメールが入っていた。
藤田さんからと、ラーニャ、サラ、カイラからであった。
『お先に朝食を食べてるよ』、とのメッセージだったので
俺は朝は食欲がないので、時間になったらロビーにおりますと返信した。
彼女達からのメールを確認した、タガログ語でしかもショートカットの文章である。
何となく意味は理解できた、共通しているのは、love u の文字が必ず入っていることだ。
それを眺めながら思わず噴き出してしまった。
シャワーを浴びて身支度をし、9時40分くらいにロビーに降りた。
ロビーのソファーには既に、藤田さんとミシェルが座っていた。
俺は挨拶をして二人の対面に座った。
藤田さんは丸顔ででっぷりと、肥っていて、まるで恵比寿様のような風貌である。
非常に優しくて気前がいいので、女の子からの受けは抜群である。
ミシェルは俺が日本のPPで、通い詰めていたお店に在籍していた子で顔なじみである。
ミシェルはフィリピーナにしては長身である。
168㎝しかない俺よりさらに上背がある。
俺はラーニャの件も含めて、昨日の出来事を簡単に説明した。
そして、たぶん時間通りにはきっと来れないでしょうから、待たずに出発しましょうと言った。
藤田さんはニコニコしながら『いいからいいから、少しぐらい遅れたって構わないよ』
『それに健太が選んだ子を是非見てみたいしな』
『まあ大体想像がつくけどな』、と言って豪快に笑った。
しばらくして藤田さんが現地でいつも世話になっている、運転手のケビンがあらわれた。
彼は自己所有のヒュンダイのワンボックスで、レンタカーの業務をしている。
時間は10時5分を過ぎた、やっぱり来ないなと思っていたところ
ロビーの自動ドアが開き、ちょっと恥ずかしそうな笑顔を浮かべながら、ラーニャが入って来た。
俺は、あの子がそうですと言うと『やっぱりな、健太の好みそうな顔だ』と藤田さんは大笑いした。
皆立ち上がって玄関へと向かった、ラーニャが俺の腕に
絡みついてきた、なぜか石鹸の香りのようないい匂いがした。
『遅れてごめんなさい』と、天使のような笑顔を浮かべた。
そのラーニャの表情を見て、俺はこのまま時間が永遠に止まってくれないだろうかと、本気で思った。
つづく
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