マニラKTV☆カラオケ物語23
俺は弾かれたように上体を起こし、液晶ディスプレイを覗く。
サラ・・・・小さなため息が口から漏れる、通話ボタンを押した。
通話ボタンを押すと同時に、枕もとの固定電話が鳴り響いた。
サラからの通話をいったん切り、ホテル備え付けの電話に出た。
フロントのスタッフから、ミシェルがロビーで待ってると報告を受けた。
俺はホッとしたような、ガッカリしたような複雑な気持ちになり、グレイスを連れて一階のロビーに降りた。
ミシェルは、バツの悪そうな顔をしていたものの、悪びれた様子もなく「ごめんね」と言ってグレイスを連れて出て行った。
やれやれ、疲れがどっと出てきた俺は部屋に戻り、サラに電話を掛けた。
サラは電話にすぐに出た、「ごめんなさい、ミーティングが長引いて・・」
俺はサラからの言い訳を半分、上の空で聞いていた。
どうも負の連鎖が続いてるみたいだ。
俺は苦笑しながら、エアコンのスイッチを切り、スウェットに着替えてシャワーも浴びずにベッドに横になり爆睡した。
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時間は既に午前11時を過ぎている。
アヤラレジデンシャルはメトロマニラのマカティ市内に営業所を構えている。
サトシ君と島田部長は、会社が用意してくれたニノイアキノ国際空港にほど近い、ラスピニャスの1LDKの社宅アパートに1室づつ2人で住んでいる。
いつもは社宅からバスなどで会社に通勤しているが、1週間ほど前から会社から徒歩圏内のヘラルドスイートホテルに滞在している。
6日ぶりの休みとあってか、前日は恋人のマリアが勤務しているKTVファーストステージで、オープンラスト+ブルゴスのカフェバーに部長らと行ってしまい、帰宅したのが午前5時である。
爆睡から目覚めたサトシは、まだ寝たりなかったが、エクゼクティブ スイートの寝室からリビングルームに移動した。
てっきり部長はまだ別の寝室で寝てるのかと思ったら、リビングで携帯と睨めっこしながらあぐらをかいていた。
左手に携帯、右手にタバコ、目の前の灰皿は吸い殻で、てんこ盛りになっていた。
「メールが来ん!!」
「は??どうしたんです?」
「いいかよく聞け!俺は最後にカフェバーでアンジーと別れた後に(また後で夢の中で逢おうね)と言うメッセージを送ったんだよ!」
「返信が無い!どうなってんだ!ありえないよな!」
どうやら一睡もせず、おまけにシャワーも浴びずにずっとメールの返信を待ち続けていたようだ。
「そんな心配しなくてもそのうち返信来ますよ、それより夕方に健太さんとハーバービューの焼肉屋に行くんですが、一緒に行きます?」
「う~ん、そうだな一人では何処にも行けないし一緒に行くよ、さすがに眠くなってきたから寝る」
部長はシャワーも浴びずに寝室ベッドに横たわり、1分もしないうちに大きなイビキをかいて爆睡していた。
サトシの彼女であるマリアは、マカティ市のすぐ隣り町のパサイ市に母親と二人で住んでいる。
部長のオキニのアンジーは、自称独身で22歳となってるが、実際は28歳でニノイアキノ国際空港のすぐ隣のパラニャーケの自宅で旦那と息子の3人暮らしである。
この手の話は、フィリピンでは珍しくもなんともない。
サトシの恋人のマリアも、アンジーの腹黒さに嫌気がさしており、他店に移籍を検討しているところだ。
つづく
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