マニラKTV☆カラオケ物語25
雨季が終わったフィリピンは、連日うだるような暑さであった。
目が覚めると全身にびっしょりと汗をかいていた。
俺は慌ててリモコンキーでエアコンのスイッチを入れた。
時計を見ると午後13時を過ぎていた。
携帯はマナーモードにしていたが、たくさんのメールと着信履歴が入っていた。
バスルームに入りゆっくりとシャワーを浴びながら、今後の展開を考えていた。
部屋に戻り携帯をチェックすると、サラとラーニャから会いたいとメッセージ入っていた。
やれやれと苦笑しながらも、無意識に心をときめかせる自分がいた。
タータワッグ アコ ウーリット マーマヤ(後で電話するね)と二人に同時送信した。
好きな人がそばにいるだけで幸せ・・こんな言葉は詭弁である。
そんな言葉は映画やドラマの世界の作り話である。
人間という生き物は、何かの見返りを期待したり、義務か演技で異性を愛する。
いや・・そもそもその女を愛していると錯覚するのである。
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ハーバービューの焼肉SAKURAは、フィリピン文化センターにほど近く、コレヒドールに渡る船舶の船着き場も近い。
この付近からのマニラ湾の夕景はまさに絶品である。
俺はサトシ君と島田部長の3人で談笑しながら焼肉を食べていたが、斜め左手にひときわ目を引く2人の美女と、初老の男性の3人組のお客がいた。
そのうちの一人の美女に、何となく見覚えがあったのだが思い出せずにいた。
島田部長は初老の男性に寄り添ってるもう一人の美女に釘付けになっていた。
「いや~まいったな・・あんな美女とお近づきになりたいよ」と深いため息をついた。
部長はアンジーにかれこれ数百万はつぎ込んでいたのだが、キスさえさせてもらえていなかった。
実は今日の昼間に、見かねたサトシ君がアンジーには旦那も子供もいるし、複数の愛人にも囲まれてるから諦めて下さいと言い含めていた。
ここの焼肉SAKURAは、オープンテラスもあり食事中にでも気ままに出られて、マニラ湾の絶景を眺められる。
初老の男性と寄り添ってる美女が、席を立ちドアを開けてオープンテラスに出て行った。
俺はトイレに向かうために席を立った。
ちょうど、女性用の化粧室からもう一人の美女と出くわした。
反射的に「ハイ キラーラ モバ アコ?(やあ 僕のこと覚えてる?)」という言葉が出ていた。
「シェンプレ ナマン(もちろんよ)今日は私は休みだけど、みんなでデジャヴに来てね」
美女はややハイテンション気味で言った。
「シノ アン カサーマ ニニョ?(君のお連れさんはどういう関係?)」
俺はフィリピーナの記憶力に困惑しながら聞いた。
「同じお店のノエルがお客さんと焼肉に行くから連れてきてもらったの」
「私はナンシー、サラから私に乗り換えてもいいのよ」
悪びれた様子もなく、おどけた態度で笑い席に戻っていった。
俺が席に戻ると、一部始終を見ていた部長から質問攻めにあった。
「彼女たちの正体が分かったから、近日中に行きますか?」
「行きますよっ!」
部長は多少酔いも入ってたが、相当に気合が入った状態でまくしたてた。
つづく
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