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イシュタルの塔3 両価愛着な天秤の女神
書くかどうか迷ったし、何度も書き直して消してをしている。
誰でも目に出来る場所に置いていいか分からないからだ。
境界性パーソナリティ障害を発症したイベントがあった事は前にも書いた。
俺はその女性と交際する時
「誰かを傷受けてしまうかも知れない俺の剣を預ける」
と宣言した。
初めて心を開いた女性だった。
穏やかで理知的で、それでいてユーモアを忘れない、そしてスイッチが入ると非常に情熱的な女性だった。
普段は穏やかであるものの、彼女から関心を離した、と彼女が感じると豹変し、人権的にいかがなものか、というレベルの束縛や無茶な提案を受ける事があった。見捨てられ不安が非常に強い人だった。
ただ、穏やかな時は優しく肯定的に俺を受け入れてくれていた。
そして手酷い心変わりを受けた。
今にしてみれば俺の愛着をズタズタに引き裂いて、ロードローラーでぺたんこに伸ばすような出来事だった。
彼女は臨床心理士を目指していた。
彼女には父親との葛藤や家庭問題があった。
だからその道を目指したのだと言った。
おそらく俺もあったのだろうが彼女もまた「ためし行為」が酷かった。
そして究極の「ためし行為」をされた。
俺は「預けた剣を返してもらう」と宣言した。
様々な事があって一度きりの自殺未遂を起こした。
大量に服薬してウィスキーを原酒のまま飲んだ。
痛いのは嫌だった。
酩酊はするも気は失わず、自分で救急車を呼んでしまった。
そこで「安心して」気を失った。胃洗浄を受けて2日入院した。
それでも気が晴れる事なんてなかった。
しかしもう一度未遂を繰り返す勇気もなかった。
今思えば、この時初めてイマジネーションを使ったように思う。
その女性を守るために預けた俺の内なる剣。
様々な想いが到来して本当に苦しかった。
そんな中、その女性から剣を引き抜いたイメージを持った。
黒かった。
鉄の黒さと血の色をしていた。
なぜか俺はそれに啓示めいた安堵感とゾクゾクと背筋を震わせるような、睦む時と似た愉悦を覚えた。手に入れた事が嬉しかった。
なぜだか俺はその剣に名を与えた。
「黒の剣」という名を。