心象風景の旅0 真なる終わりをもたらす者
「女神の塔の探索」が終わって数ヶ月。
細かく内世界の変遷はあったものの大きな変革はなかった。
俺はどうやら父性と母性の調和が取れ安定しているようだ。
仕事で悩む事は数あれどクライシスと呼べる類のものはなかった。
ああ「ユンギアンなのに見えない世界を肯定出来ない」という葛藤はあったけどね。
あるオフの日の午後、あまりに平和過ぎて猫どもと一緒にデッキにキャンプチェアを出して日向ぼっこをしながらただぼーっとしていた。
先住猫のソーマがトタっと俺の膝に乗った。
くんくんと俺の鼻を彼の鼻が嗅いだ。
目を瞑り安穏を楽しむ。
俺にもこんな日があっていいんだな、と自分の平安を嬉しく思った。
目を瞑っているとふわっと像を結んだものがあった。
しかもこの神剣は俺が感情を昂らせるかパニックにならないと出てこない神出鬼没のイマジネーションだ。
これはまた珍しい客人が来たものだ、と少し嬉しくなった。
さまざまなイマジネーションは役目を終えて俺の中に思い出としてしまわれている。
それらは「過去」であり、俺の内世界の「現実」として現れる事はほぼない。
それ故に「かむがたり」が出て来たのは嬉しくもあったし、こいつの「預言の剣」としての側面を考えると「なんかちょっとヤダ」とも思った。
嬉しくもあるけど、もう俺安定してますから。
そこから数日「かむがたり」は何か起こす事なく俺の中に居座った。
簡単に消えてくれないあたり「やっぱなんかちょっとヤダ」と思った。
騒動が起きるの予見してるみたいじゃん。
そんな事がありながら箱庭療法を受け、数日間ああでもないこうでもないとウンウン唸っていた。
で、ふと箱庭の画像を見て
「あっ」となった。
太陽の周りにある4枚のカード。
「嵐」「星」「占い師」「交流」
これ…4本の剣だ。
しかも御大層に「まだ力は失ってない」とばかりカードの前に宝玉まで置かれている。
そう思った瞬間
「降魔刀」が轟音と共に現れ「かむがたり」が瞑想もなしに白昼夢のように頭の中に現れた。
2本の剣は乳白色の霧のような場所の中で中空に浮かんでいた。
「マジかて。」
と思わず呟いた。
これから起こる事が解ったからだ。
2本の剣は乳白色の中優しく神々しい光に照らされ上手くは言えないがまるで婚礼を行っているようだった。
それらは徐々に重なり合い完全に重なり合ったあと乳白色の世界は虹色の闇へとブラックアウトした。
そして闇の中から青白く光るものが現れた。
なんの変哲もないただの長剣。
名前が浮かんだ。
「true end」
そういうことですか。
けっこう冷静だった。
打ち止めっつーことですか?イマジネーションさん。
よござんしょ。
俺も暇だったし、久しぶりに楽しんでみようか。
名前も悪くない。
だかこれで真のエンディング見られんかったら訴えるからな。
と、思ったらtrue endはどこかに飛び去ってしまった。
まさかの剣消失からのスタート。
この展開は新しいな、と思いながら
俺の新たなアクティブイマジネーションは始まった。