見出し画像

ロッキーさん

ボクシングジムでたまに会う
50歳過ぎのオジサン

おそらく映画「ロッキー」に憧れて
いつも上下グレーのスウェットを着ている

そんな風貌なので心の中だけで
その人を「ロッキーさん」と呼んでいる

ロッキーさんはジムに来ても
ほとんど練習はせずに
誰かと会話ばかりをしている

ロッキーさんは
元気で明るく人懐っこい性格で
誰にでも気さくに話しかける
ジムの主のような存在です

✳︎

ある日
黙々とサンドバッグを叩いていると
ロッキーさんに初めて話しかけられた

「ちょっといいかな?」
『はい。大丈夫ですよ』

「腰をひねって下半身からパンチを撃つイメージの方がキレが出るよ」

ロッキーさんはアドバイスをしてくれた
自分は話しかけづらいタイプの人間なのに
その自然な距離の詰め方に新鮮さを感じた
そして的確なアドバイスも含めて嬉しかった

・パンチを打つときガードが下がるクセがある
・パンチは突き刺すイメージの方が強く打てる
・上半身の筋肉が付き過ぎてるからキレが悪い

ロッキーさんは、真剣な表情で
自分の動きを見ながら手取り足取り
ボクシングの基礎を教えてくれた

話を聞くとロッキーさんは
ボクシングを見るのが大好きで
ずっと昔からボクシングを愛し
今もボクシングに没頭しているらしい

実際にボクシングを始めて15年程で
今は腰を痛めてしまったらしく
自分でボクシングをやる事よりも
人に教える方が好きらしい

ロッキーさんは
人をやる気にさせるのが上手く
的確なアドバイスと叱咤激励で
とてもモチベーションが上がった

✳︎

ロッキーさんと休憩中に雑談をしていると
”ボクサーは目が命なんだ"と言っていた

「視力とか動体視力の事ですか?」と聞くと
キッパリと「違う!」と言った

良いボクサーは野生の飢えた肉食動物のような
「闘争心のある鋭い目」を持ってるらしい

ロッキーさんが言うには
その「鋭い目」は先天的で本能的なもので
努力や練習では身に付かないらしい

「君はいい目をしてるよ」
ロッキーさんは褒めてくれた
だから声を掛けてくれ
アドバイスをしてくれたみたいだった

その”鋭い目"が人間として良いのかは
わからなかったけど嬉しかった

✳︎

練習後、更衣室で
ロッキーさんと今日の
トレーニングの振り返りをした

ロッキーさんは自分の事のように
真剣にアドバイスをくれた

また、日々のトレーニング方法や
食事なども事細かく教えてもらえた

ロッキーさんは
「君は教え甲斐があるよ」
と嬉しそうに言ってくれた

そしてロッキーさんは
「もっと早くボクシングやってたらなー」
と残念そうに言っていた

ロッキーさんから見たら
自分は恵まれた体型や運動神経を
持っているらしい

そんな自分を見てロッキーさんは
もっと若い頃から
ボクシングをやっていたら
良いボクサーになってたと思うよ
と少し残念な感じで言っていた

そんな会話をしてジムを出た

✳︎

ジムの帰り道
もっと早くボクシングやってたらなー
この言葉がずっと頭に中に残っていた

本当にそうなのだろうか?
と自問自答してしまった

自分の人生の目標は
毎日1ミリでもいいから成長する"
という課題を課していて
日々学び成長したいと思って生活をしてます

自分なりですが
精神的にも肉体的にも思考的にも
いま現在の自分が自分史上では
いちばん最強だと思っています

なのでロッキーさんの
「もっと早くボクシングやってたらなー」
この言葉に引っ掛かってしまった

自分はこのタイミングでしか
ボクシングはやらなかっただろうし
過去の自分には負けてないと思っている

俺のベストは今だぞ!

そんな事を強く思いながら
ロッキーさんに感謝しつつ
高揚した気分で帰宅しました

そんなロッキーさんとの
小さなエピソードでした。


それではまたCiao!



【後記】

ロッキーさんは腰の調子が良いときは
3分間サンドバッグに
激しくパンチを打ち続けている

2分を越えた辺りから息が切れてきて
AV男優みたいな声を出すロッキーさん

わざとやってるのではないかと
そう思えるほど見事な男優っぷりで
いつも笑ってしまいそうになる

そんなロッキーさんの
剥き出しの闘志が好きです。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集