焼きそばの目玉焼き
つい先日、知り合いの部屋に数人で集まり、タコパならぬソバパ、もとい、焼きそばパーティーをした。知り合いの1人が普段から焼きそばを作るから集まるなら振る舞うとのことで、焼きそばパーティーになったらしい。その焼きそば作りを提案した知り合いを、仮にA君としよう。A君は、私より年下の20代半ばの男性だ。私の体調不良を気遣ってくれる、優しくて純粋な性格だ。そんな彼と接していて、少し思うことがあったので書いてみようと思う。
調理を担当するのは、私とA君になった。初めは提案したA君のみだったのだが、数人分の調理を彼だけに任せるのは負担が大きいのではないかと思い、私も手伝いを申し出た。
みんなで買い出しをした後部屋に戻り、私たちは調理を開始した。分担しながら野菜と肉を切って炒め、麺を混ぜてソースで味付けする。最後に目玉焼きを焼き、焼きそばに盛り付けて完成だ。
目玉焼きを作る段階になり、A君がフライパンに卵を3つ割り入れた。しばらくして、A君が目玉焼きを裏返して焼こうとしたのを見て、私は驚いて声をあげた。
「えっ、裏返すの!?目玉焼き作るんだよね。大丈夫なの?」
私の考えでは、目玉焼きは片面焼きが当たり前だったので、両面焼こうとするA君の行動に驚いてしまったのだ。すると、私の慌てぶりを見たA君も、まずいことをしたという感じで中途半端に裏返すのをやめてしまった。裏返しに失敗した目玉焼きは、形がぐちゃぐちゃになってしまった。それを見た私は、すぐにA君に謝った。
「ごめんね、A君のやり方があったのに、余計なこと言っちゃったね。うちでは片面焼きが当たり前だったから、驚いちゃったんだ。ほんとごめんね。」
A君は優しく純粋だ。自分のやり方があったのに、私が驚いたので、私に合わせようとしてくれたのだろう。私が年上だということも、彼を慌てさせた原因だったと思う。年上からの意見は重視するものだろうし、それが非難ならば慌ててしまって当然だ。ちなみに、あとで調べてわかったが、目玉焼きの焼き方にはいくつか種類があり、名前までついているそうだ。両面焼きもその中の1つ。わざとではないにしろ、私は彼を慌てさせてしまったことを少し反省した。
A君の調理について気になったことはまだある。再三言うが、彼は優しくて気遣いのできる良い青年だ。しかし、調理に関しては雑なところを感じるのだ。
例えば、卵をフライパンに割り入れるとき、力加減や距離感を気にせず、黄身を割ってしまったことや、それを他人に出すというのに気にするそぶりがなかったこと。乱雑さは男の料理だからと言えばそうかもしれないし、気の知れた仲間同士だからいちいち気にしなかったのかもしれない。けれど、私はそういった、無意識の人の仕草や行動が気になってしまうタチなのだ。A君がいくら良い子だと分かっていても、気になる部分があると幻滅したり、引き気味になってしまう。別に迷惑をかけられているわけではないのだが、そういった引っかかる行動とる人は、何かの拍子に問題になる可能性があると思えてしまう。
人間誰しも、完璧ではないのは分かっている。私自身、他人のことをとやかく言えるほど、能力が高いわけでもない。分かっちゃいるけれど、気になってしまうのだ。この性分のおかげで色々なことに気づけたりプラスに働くときもあるけれど、引っかかってしまって幻滅したりマイナスに働くときもある。厄介な性質だ。
また、その他気づいたこととしては、他のメンバーはさほど調理の出来を気にしていなかったことだ。気の知れた仲間であることや、男性ばかりだったこともあるかもしれない。男性でも気にする人は気にすると思うが。それでも、自分が思ってるより、他人は案外気にしないものなんだなと思った。
特に結論はないが、このヤキパを通して、また少し人間を知れて良かったと思う。