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ラブ・ポエム

ある日授業でペーパークリップを渡された。「これを何か別の物と交換して来て下さい」。

「Bigger & Better」(より大きく、より良い)な物を得るために一週間、知り合い以外の人と物々交換をして下さい、という大学院の課題である。

最初に手っ取り早く交換できたハンドソープを持ち、私とパートナーは街に出た。赤の他人にいきなり物々交換をしてほしいと提案するのは勇気がいるものだ。話ぐらいは聞いてくれそうな若者をターゲットに話しかけてみた。

最初に話しかけた人は、話こそちゃんと聞いてくれたが、残念ながら「何も交換できる物を持ち歩いていない」という理由で交換はできずに終わった。しかし、意外と面白おかしく笑顔で話を聞いてくれた事、そして交換できる物がないという事を申し訳そうにしていた事はとても驚いた。案外うけがいいぞ。そういう感触を得た。

次に話しかけた人は、説明後に何が交換できるかどうか考えてくれた。バッグを開けて何かあるかな・・と探る。       どきどき。
それを見る私とパートナーは待つ。しかし、何も「物」がない。あきらめかけた時に彼女から提案があった。

「私が書いた詩を交換することは可能ですが、欲しいですか?」

彼女は以前書いた詩をiPhoneに保存してあった。物々交換をしなくてはいけない私たちのために、彼女はわざわざノートのに書きだしてくれた。

その場で詩を読ませてもらった。せっかく書いてくれた詩なので、作者である彼女本人から少し背景を聞いてみた。どんな詩なのか。なぜ書いたのか。

彼女は高校生の時に付き合っていた幼馴染と付き合っていたとのこと。家族ぐるみで仲良かったそうだが、付き合っていた事は内緒にしていたらしい。理由は述べなかったが色々複雑な理由があり、数年付き合った後に別れたそうだ。しかし、今でも「ベスト・フレンド」であり「昔の恋人」でもある彼に、昨年の夏、ラブ・ポエム(愛の詩)書いたというのがバックストーリーだ。彼にもすでにプレゼントしたそうだ。

予期せぬ代物が奇跡的に懐に落ちてきたかのような感覚だった。しかも街にでてからたったの10分程度。課題を出された時に想像していたシナリオとは全く違った。

「Bigger & Better」なものとは何なんだろう。私とパートナーは詩を見ながら同じことを思っていた。これが私たちにとってのBigger &Betterのものであり、ここでゲームは終了だと。

私たちが手に入れたものはラブ・ポエム(愛の詩)となった。

早く活動が終わったこともあり、あまり話したことのないパートナーと近くのカフェで1時間ほど話をしてから帰宅した。ーーーーーーーーーーーーー

1週間後、生徒たちは最終成果物を発表した。1m程度ある植物を持ってきた人もいれば、折り畳みベッド、なんとマウンテンバイクを得た人もいた。全員で発表した後に、誰の成果物が一番好きかを投票した。第一位はニューヨーク・ヤンキースの野球のチケットであった。私とパートナーは一位がとれなくて残念だねと笑いながらクラスを後にした。

後日、教授からメールがきた。ラブ・ポエムは全体で第二位の投票数を得た事、そしてとても美しい成果物であり、授業の最終成績にエキストラでポイントを追加してくれるとのこと。他の生徒、そして教授も私たちと同じく、ラブ・ポエムと彼女のストーリーに心をうたれたようだ。

あなたにとっての、Bigger & Betterなものとは何ですか? 

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