気軽に自作クラフトビール
IPA好きで、色んなところでブリューワリー見学したり飲んだりしてはいたけど、ふと、作ってみたいな、と。
アメリカに出張に行くと、これでもかというぐらい数多くのブリューワリーのビールが生でも瓶でもどこでも飲めるし、ガレージでビールを作り始めて有名になった、なんて話も。そこで、Amazonなどでもビール自作キットも買えるし、日本でも自宅で簡単に作れるはずだという妄想からスタートするも、すぐに壁に直面。
巨大な壁、日本の法律。
・1.0%以上のアルコールが入ったお酒を作るにはライセンスが必要
・自家醸造するといろいろな罰則…
以下、国税庁のページから引用:
酒類の製造免許を受けないで酒類を製造した場合は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられるほか、製造した酒類、原料、器具等は没収されることになります。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/qa/06/34.htm
ちなみに、アメリカ、例えばカリフォルニア州だと 年間200ガロン (757リットル) まで (一人暮らしの場合は100ガロンまで) はライセンスなしで製造可能です。これならクラフトビールが流行る理由もわかります。
https://www.homebrewersassociation.org/homebrewing-rights/statutes/california/
では、日本でライセンスを取るのはどうか?
先ほどの国税庁のページに戻ってみると、
「ただ、ビールの製造免許は、年間の製造見込数量が60キロリットルに達しない場合には受けることができません。」とある。
60キロリットル = 500ml缶が12万本、1日330本も作らないとアウト。そんな設備を作るのも大変だし、個人で消費は不可能、販売も厳しい (販売免許も必要)。酒税を守るためなのか、既存ビジネスを守るためなのか、いかにも日本らしい法律の様な気がする。日本では、なんでクラフトビールがどんどん出てこないのかと思っていたけど、法律が邪魔をしてたのか。。。
それでも自分でビールを作ってみたいという人の選択肢は以下。
1. 60kl 製造可能な設備を持ち、免許を取る
2. 海外で作って輸入、もしくは移住
普通に働いている人には無理!ですが、ここで朗報。既存のブリューワリーに委託製造をお願いすることは法律的にokです。デンマーク発の有名なブリューワリーのMikkellerも醸造場をもたない「ファントムブリューワリー」として有名ですね。
ただ、委託するとなると、最低でも1,000リットルからなどとそれでもかなり多くなってしまいます。月に80本強を消費するのもなかなか大変ですね。
そんな時の強い味方が、手作りビール体験を提供しているブリューワリーたち。ということで、今回はネストビールで有名な木内酒造さんへ行ってきました。ここでは15リットルから製造可能です。個人でクラフトビールを作りたい人にとても優しいです。少量を製造可能な他のブリューワリーは知らないのですが、他にもあれば教えてください!
それでは、木内酒造さんの手作りビール工房の紹介。まずはSuicaが使えないレトロな常陸鴻巣駅からスタート。
駅から7分程度歩くと到着。
木内酒造さんでは、モルト (ベース)、ホップ、IBU、アルコール度数、SRM、副原料が選べます。 テイスティングして、好きな味のベースを選ぶところからスタート。ホッピーなIPAがすきなので、ペールエールベース、IBUはMAXの80、アルコール8%、モルトはCascade, Amarillo, Hallertau (後からさらにAmarilloのドライホップ追加)を選択。ついでにコリアンダーの隠し味。
選んだモルト達とコリアンダー。
そして複数種類混ぜたモルトを粉砕。今回はペール9.2kg、クリスタル180g。
粉砕したモルトをぬるま湯が入ったタンクに投入し、モルトを浸からすべく混ぜる。
ろ過タンクの上側にモルトが溜まっているため、同じ濃さにするため、下から麦汁を出して、タンクに戻す作業を5回。
麦汁を試飲できますが... 水に麦の味を付けた温かい飲み物。
63度になるまで麦汁を混ぜます。余熱で65-7度まで上げることで、酵素が働き始め、デンプンを食べて糖を作ります。温度が高すぎると酵素が死んでしまうので気をつけます。
モルトのデンプンが糖に変わるまで、ポップと副原料を計量して待ちます。ポップによってかなり香りが違います。
取り出した麦汁に要素をかけ、色が変化しない (デンプンが残っていない) ことを確認、76度まで温度を上げて、酵素の動きを止めます。 その後、麦汁を静かに循環させてろ過します。この時にできたものが1番麦汁!
一番麦汁!
今度はお湯を足しながらろ過した麦汁を隣のタンクに移します。
隣のタンクに20リットル程度のろ過した麦汁を移したら、1回目のホップ投入!これは香りではなく、苦味を加えるため。20分沸騰させて苦味抽出。その間に、元のタンクの麦汁を全て捨てて、モルトを回収して(肥料や資料になるらしい)お掃除。
ホップ投入♪
ランチを食べながら、この後、コリアンダー、2回目(香り付け)、3回目(香り付け)のホップを加えて、完成した麦汁を一定方向に10回混ぜてポップなどを沈殿させるために15分待ち。バーでビールや日本酒の購入も可能です。
最後に急速冷却して軽く周りをアルコール除菌して、タッパに詰めて終了です。あとはお店の人がさらなるホッピー感を出すためのドライホップの投入や、酵母を入れての発酵はやってくれます。1ヶ月〜1ヶ月半待つと配送されます。あー楽しみ。
最後の麦汁も試飲できます。酵素がデンプンを分解し、糖を作っていて甘い、ただ、ホップで苦味も追加され、コリアンダーの風味もする。炭酸もアルコールも入っていないので、正直美味しくない(笑)
初めての(ほぼ)自作ビール体験はとても楽しくて大満足でした。手作りでやると、意外と作業が大変なのも作ってる感があってよかったです。
木内酒造さんの手作りビール工房: http://hitachino.cc/visit/tezukuri.html
ちなみに好きなビールは、サンフランシスコにあるBoomtownのlimelightです。