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「クマの通り道」知らず? 町外から山菜採り夫婦が母グマと遭遇|北海道・厚岸町|令和3年

本記事は書籍『日本クマ事件簿 〜臆病で賢い山の主は、なぜ人を襲ったのか〜』(2022年・三才ブックス刊)の内容をエピソードごとにお読みいただけるように編集したものです。


はじめに

本稿では、明治から令和にいたるまで、クマによって起こされた死亡事故のうち、新聞など当時の文献によって一定の記録が残っている事件を取り上げている。

内容が内容ゆえに、文中には目を背けたくなるような凄惨な描写もある。それらは全て、事実をなるべく、ありのままに伝えるよう努めたためだ。そのことが読者にとって、クマに対する正しい知識を得ることにつながることを期待する。万一、山でクマに遭遇した際にも、冷静に対処するための一助となることを企図している。

本稿で触れる熊害ゆうがい事件は実際に起こったものばかりだが、お亡くなりになった方々に配慮し、文中では実名とは無関係のアルファベット表記とさせて頂いた。御本人、およびご遺族の方々には、謹んでお悔やみを申し上げたい。

事件データ

  • 事件発生年:2021(令和3)年4月10日

  • 現場:北海道厚岸町

  • 死者数:1人

のどかな山菜採りから一変
夫婦を引き裂いたクマの爪

北海道厚岸町あっけしちょうの中心部から南東に約7km、太平洋に突き出た半島のような部分にある山林は、春になるとアイヌネギを求めて多くの人が訪れる。

釧路市に住む当時60代の夫婦もこの日、午前10時頃から入山し、山菜採りを楽しんでいた。

30分ほど経った頃だろうか、突然「ギャー!」という男性の悲鳴が聞こえ、妻が振り返ると、100mほど先にいた夫がクマと揉み合いになっているのを目撃した。

妻は慌ててその場から離れ、道路脇に停めていた車に戻り、「夫がクマに襲われている」と110番通報をした。

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