ラブラドール・レトリーバーにカモ回収を任せるひと 〜 愛玩犬を狩猟に連れ出す意味とは
ラブラドール・レトリーバー2頭と猟へ行くひと
「実猟におけるレトリーバーの主な任務は “retrieve” (=レトリーブ、回収する)だ」と説明したところで、現在、日本におけるレトリーバーは一般の家庭犬であるほか、盲導犬などサービスドッグとしての活躍が中心であり、狩猟犬として紹介することはナンセンスと感じる人が大半だろう。
しかし、それは杞憂に過ぎないと言える。今回ご紹介する大分県大分市在住の広畑美加さんは、愛犬のラブラドール・レトリーバー2頭とともに出猟し、実際に獲物の回収を任せている。
レトリーバーにカモを回収してもらうには? レトリーバーを猟に連れ出す意味とは?
非猟期中の様子からその答えを探してみよう。
広畑さんとテラとシエルと
テラ(奥) ラブラドール・レトリーバー、4才、オス。母犬はイギリス、父犬はドイツ生まれのショードッグ。指示に基づいた的確な回収作業は熟練の域。猟欲強めで猪や鹿のニオイを追うこともある。筆者が知る限り、山で猪による受傷経験を持つ日本唯一のレトリーバー。
シエル(手前)ラブラドール・レトリーバー、2才、オス。母犬は盲導犬(ガイドドッグ)の系統犬で、父犬はイギリス生まれのショードッグ。回収作業は大いに楽しむ。以前に咬まれたことがあってカワウが嫌い。
文・写真|佐茂規彦
コンパニオンドッグの延長にある狩猟犬
幼少時から愛読書は『愛犬の友』(誠文堂新光社)だったという犬好きの広畑さん。特に大きな犬を飼うことに憧れがあり、学生時代に親にせがんで買ってもらった子犬はドーベルマンだった。
レトリーバーとの出会いは社会人になってから。仕事の都合で福岡に7年滞在する間に、盲導犬の繁殖ボランティアから1頭を譲り受けた。
その犬は「ほとんど人間だった」というぐらい賢く、家族として生活を共に過ごすことで、その後の広畑さんにとってレトリーバーが無くてはならない存在になった。
結婚して大分に移り住むと、周りには自然と猟師たちが住んでいて、猪肉やカモ肉などを分けてもらって食べた。大阪にいたころ丹波篠山の猪肉はご馳走のひとつで、その味を大人になっても忘れてはいなかったのだ。
野生肉を喜んで持って帰る姿を見た周りの猟師たちは「そんなに好きなら自分でも猟をすればいいのに」と広畑さんに勧め、夫婦そろって狩猟を始めた。
自分たちで実際にカモ猟をしてみるとネックとなるのは撃ち獲ったカモの回収方法。しかし、もともと水が好き、物を咥えるのが好きな自宅のレトリーバーに目を向けるまで時間は掛からなかった。
「私にとってレトリーバーはコンパニオンドッグ(愛玩犬)であり家族です。狩猟犬としての姿はその延長でしかないんです」
広畑さんはオーナーハンドラーとして訓練士の指導を受け、犬の訓練技術を身に付けている。ただ訓練以前に、家の中で子犬のころから一緒にいると、犬も人の言っていることが分かっているそうで、逆もまたしかり。
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