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ラブラドール・レトリーバーにカモ回収を任せるひと 〜 愛玩犬を狩猟に連れ出す意味とは

本稿は『けもの道 2018秋号』(2018年9月刊)に掲載されたものを note 向けに編集したものです。掲載内容は刊行当時のものとなっております。あらかじめご了承ください。


ラブラドール・レトリーバー2頭と猟へ行くひと

「実猟におけるレトリーバーの主な任務は “retrieve” (=レトリーブ、回収する)だ」と説明したところで、現在、日本におけるレトリーバーは一般の家庭犬であるほか、盲導犬などサービスドッグとしての活躍が中心であり、狩猟犬として紹介することはナンセンスと感じる人が大半だろう。

しかし、それは杞憂に過ぎないと言える。今回ご紹介する大分県大分市在住の広畑美加さんは、愛犬のラブラドール・レトリーバー2頭とともに出猟し、実際に獲物の回収を任せている。

レトリーバーにカモを回収してもらうには? レトリーバーを猟に連れ出す意味とは?

非猟期中の様子からその答えを探してみよう。

広畑さんとテラとシエルと

テラ(奥) ラブラドール・レトリーバー、4才、オス。母犬はイギリス、父犬はドイツ生まれのショードッグ。指示に基づいた的確な回収作業は熟練の域。猟欲強めで猪や鹿のニオイを追うこともある。筆者が知る限り、山で猪による受傷経験を持つ日本唯一のレトリーバー。

シエル(手前)ラブラドール・レトリーバー、2才、オス。母犬は盲導犬(ガイドドッグ)の系統犬で、父犬はイギリス生まれのショードッグ。回収作業は大いに楽しむ。以前に咬まれたことがあってカワウが嫌い。

文・写真|佐茂規彦

ラブラドール・レトリーバー
原産地はイギリス。賢く、明るく、人を喜ばせようとする性格が特徴。作業をするのが好きで、学習意欲も高く、水に入ること、物を咥えることが大好き。作業犬としても家庭犬としても優れており、海外だけでなく日本でも愛好家が多く、各地でレトリーブ能力(ダミーなどの回収技能)を競う競技会も開催されている。(参考文献|誠文堂新光社「最新世界の犬種大図鑑」)

コンパニオンドッグの延長にある狩猟犬

幼少時から愛読書は『愛犬の友』(誠文堂新光社)だったという犬好きの広畑さん。特に大きな犬を飼うことに憧れがあり、学生時代に親にせがんで買ってもらった子犬はドーベルマンだった。

レトリーバーとの出会いは社会人になってから。仕事の都合で福岡に7年滞在する間に、盲導犬の繁殖ボランティアから1頭を譲り受けた。

自宅庭で仲良く座るシエル(左)とテラ(右)。気が優しく、ケンカをすることはないという。日中は自由に動ける庭で過ごし、夕方からは家の中で家族とともに過ごす

その犬は「ほとんど人間だった」というぐらい賢く、家族として生活を共に過ごすことで、その後の広畑さんにとってレトリーバーが無くてはならない存在になった。

結婚して大分に移り住むと、周りには自然と猟師たちが住んでいて、猪肉やカモ肉などを分けてもらって食べた。大阪にいたころ丹波篠山たんばささやまの猪肉はご馳走のひとつで、その味を大人になっても忘れてはいなかったのだ。

野生肉を喜んで持って帰る姿を見た周りの猟師たちは「そんなに好きなら自分でも猟をすればいいのに」と広畑さんに勧め、夫婦そろって狩猟を始めた。

自分たちで実際にカモ猟をしてみるとネックとなるのは撃ち獲ったカモの回収方法。しかし、もともと水が好き、物を咥えるのが好きな自宅のレトリーバーに目を向けるまで時間は掛からなかった。

「私にとってレトリーバーはコンパニオンドッグ(愛玩犬)であり家族です。狩猟犬としての姿はその延長でしかないんです」

夫婦で出猟し、撃ち落としたカモは愛犬が回収してくれる。憧れさえ抱く、狩猟一家の理想的な画だ(写真提供|広畑美加)

広畑さんはオーナーハンドラーとして訓練士の指導を受け、犬の訓練技術を身に付けている。ただ訓練以前に、家の中で子犬のころから一緒にいると、犬も人の言っていることが分かっているそうで、逆もまたしかり。

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