進め、ヌートリア道! 〜 実録エアライフル猟
“四つ足動物” ヌートリア猟のすすめ
狩猟でいう “四つ足動物” と言えば、四足歩行する猪、鹿または熊というのが一般的だが、経験の浅い初心者猟師にはなかなか射獲のチャンスに恵まれない。仮に獲れたとしても、その個体の大きさから、回収には多大な労力が必要で、その後の剥皮や解体スペースを自宅に持ち合わせている猟師も少ない。
しかし、もっと小さく、労力が掛からずに狩猟ができる四つ足動物がヌートリアだ。
文・写真|佐茂規彦
ヌートアとは?
ヌートリアによる生態系に関わる被害 …… 生態系に関わる被害 日本では本種と同じニッチを占める哺乳類は生息しないために、食草である水生植物を大量に捕食し、水鳥などと餌資源をめぐる競合関係が生じる可能性がある。
ヌートリアによる農林水産業に関わる被害 …… 西日本地域で農作物に対する被害が報告されており、食害や岸辺への営巣(巣穴)により、水田のイネや畑の根菜類に大きな被害を及ぼしている。
ヌートリアの観察
「ヌートリアは、流れがゆったりとした川の水辺に巣穴を掘って生息しています」
今回、同行取材させていただいた宮部さんは、普段は鹿・猪の巻き狩りグループに参加するほか、空気銃で鴨猟をしている。ヌートリアも獲り始めてすでに5、6年経つというが、観察し続けた結果、猟師目線でヌートリアの生態がかなり分かって来たという。
「彼らの動きは遅く、川沿いの草むらの中にいたり、川をプカプカ泳いでいたりします。水中を移動するせいか体にダニは付いていないので、獲る側には助かります。
ヌートリアが多数生息している川辺では、ケモノ道ならぬ『ヌートリア道』が出来ていて、ヌートリアは基本的にその『道』から外れずに移動し、周囲の草を食べます。
キツネなどに襲われることはあるようですが、基本的に天敵がいないので警戒心は低いようです。皆さん興味がないので、あまり見たことがないかも知れませんが、静かに増えている感じがします」
これがヌル〜いヌートリア猟だ
ヌートリアは初心者猟師向け
宮部さんが初めてヌートリアを獲ったのは狩猟を始めて3年目、空気銃で鴨猟に出かけていたときだった。
「鴨が全然獲れなくて、手ぶらで帰るのは嫌だな~と思っていたら、ヌートリアの姿を見つけました。動かないし距離も近いし、『これ、獲れるかも?』と思って撃ったら、簡単に獲れたんですよ」
それ以来、宮部さんは空気銃猟の初心者に、お勧めの狩猟獣としてヌートリアを紹介している。あまり動かず、出会いも多い。警戒心が低く、ラクに接近することが可能で、落ち着いて照準できる。
さらに大型獣の狩猟の練習にもなるという。哺乳類なので基本的な骨格は鹿や猪と似ており、解体の経験を積めるだけでなく、体が小さいので特別な解体施設を必要とせず、残滓の処理もしやすいのだ。
水質の良い川に生息しているヌートリアであれば肉は柔らかく、臭みも少ないので、美味しく食べられる。もともと毛皮をとるために輸入されているだけあって、毛の密度が濃く、剥皮後は毛皮にしてもいいだろう。
探さなくてもいるのがヌートリア
12月初旬、早朝から集合した宮部さんと私たち取材スタッフは、岐阜県某所の道路脇に車を停めた。ここは地元住民の車も普通に行き交っている場所だ。
「まだ山に入ってませんが、こんなところに『ヌー』がいるんですか?」
「ええ。特に山奥というわけではなく、山に近い川辺に普通にいますよ」
車を降りて身支度を整えて、道路沿いを流れる川の方へ未舗装の農道を歩いて行く。道路から50メートルも進んだだろうか。
「あ、いますいます」
進行方向の先20メートルほどのところで、何か黒いものが見えたと思ったら、すかさず川へ向かって草むらへ姿を消した。
「あんな感じで、日が昇ると道端で日向ぼっこをしている姿を見かけます」
ヌートリアの道
そこから川の方へ草むらを進む。生い茂る草むらのあちこちに、草が倒れたり生えていない何条もの道。幅は20センチほどだろうか。
「これが『ヌートリア道』です」
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