リアルか? バーチャルか? 最新シューティングシミュレーター『シムターゲット』の実力
『シムターゲット』とは?
取材|米山博
株式会社ヒーローズインク代表取締役
ヒーローズインク(猟銃・狩猟用品取扱店)
『シムターゲット(SIM TARGET)』は、スウェーデンのシムターゲット社が開発したシューティングシミュレーターだ。誰もが安全に使用できるので、射撃のトレーニングをはじめ、スウェーデンでは銃の講習やスポーツ施設でも活用されている。
単なるゲーム感覚のシミュレーターとは異なり、散弾銃・ライフル銃の射撃を、猟場や射撃場を再現した状況下でシミュレーションして楽しむだけでなく、システムにはプレイヤーの射撃のデータが記録される。実銃では確認不可能な銃の挙動や弾の軌道などを簡単に知ることができるのだ。
例えば、狙点の軌跡を確認することで、スイングの滑らかさや、引き止まりの程度などを知ることが可能だ。散弾やライフル弾の号数や初速の設定を変えることで、弾速なども自動的に変更され、より実射に近い状態を再現できる。
『シムターゲット』で、まだ銃を所持していない人が射撃の疑似体験ができるのはもちろんのこと、銃所持者でも近くに射撃場がない人には、時間的・場所的制限を受けずに実射に近い環境で射撃の練習が可能だ。
『シムターゲット』への期待
シミュレーションだけで銃猟や射撃のレベルを実証できるわけではないが、「当たった」「外れた」を理論的・視覚的に理解することで、一層の上達が見込まれるだろう。
現在、銃刀法で義務付けられている技能講習では、以前の講習内容とは違い「安全講習」がメインとなっているので、シミュレーターを使っての講習でもその効果を得られるだろう。銃砲保安協会や猟友会が行う銃器を交えての各種講習にももちろん有効だ。
また日本の場合、銃の非所持者が気軽に銃猟や射撃を体験することが出来ないため、シミュレーターでそれらの楽しさを知ってもらい、所持へと進んでもらうことも期待できる。
『シムターゲット』の機器構成は、パソコン本体(ソフトインストール済み)、CCDカメラ、プロジェクター、ダミー銃(上下二連散弾銃タイプ、ボルト式ライフル銃タイプ)から成る。
設置場所を選定し、機器同士を接続、パソコン起動後に、スクリーン映像やCCDカメラの位置調整を行えばプレー可能だ。
使用場所が狭い場合は、プロジェクターの映像反転機能を使い、映像を鏡で反射させてスクリーンに投影させる方法もある(これで距離を稼ぐことができ、投影映像が大きくなる)
実射=散弾銃
ダミーの散弾銃では、クレー射撃やカモ撃ちを体験できる。ダミー銃は実銃に比べると軽く作られており、これにより長時間のプレーでも体への負担が少なく済む。
引鉄の引き味は実銃にかなり近い。見た目もかなり本格的で、元台・先台には天然木が使われており、高級感もある。
はじめにキャリブレーション(照準合わせ)を行ってからプレーを開始する。そのため、実際のクレー射撃などと同様、しっかりと狙点を定めてスイングしないと失中してしまう。ゲームセンターなどでよく見た懐かしのクレー射撃ゲームとは全く異なるので、往年の「ゲームシューター」は要注意だ。
実銃との最も大きな違いは、リコイル(反動)がないことだろう。さらにはダミー銃の軽さもあって、フリンチング(いわゆる「ガク引き」)が起こりやすいが、慣れれば問題ないだろう。もっとも、実銃を撃つに当たってはフリンチングしない撃ち方が求められるので、良い練習になる。
プレー後には、対象物(クレーやカモ)に対する散弾の軌道、パターンやコロンの発生状況をリプレイすることができ、失中・命中のメカニズムを確認することができる。
実射=ライフル銃
ライフル銃では大物猟を体験できる。標準の照準器はスコープではなく、ドットサイトが装備されている。形状はボルト式(ボルト部分の可動はしない)。散弾銃と同じく高級感のある天然木のウッドストックで、実銃より軽め、引鉄は実銃に近い。
プレーの対象動物はヒグマ、イノシシ、ヘラジカなど数種類の中から選ぶことができる。スクリーンに出てくる動物たちは、止まる、歩く、走るなどの動作をしており、猟場が忠実に再現されている。
しかも当たれば倒れる、というものではなく、しっかりとバイタルゾーン(急所)に弾が当たらないと一撃必倒というわけにはいかない。ヒグマに至っては、半矢にすると怒って襲ってくるというリアルな緊張感が漂う設定になっている。
もちろん、プレー後に弾の軌道などの確認もできる。フリンチングしやすいのは散弾銃と同じだが、ライフル射撃こそ克服しなければならない課題であり、シムターゲットでの練習は実猟にはかなり有効だろう。
日本では猟用ライフル銃の所持には、散弾銃での猟歴10年が必要だ。シムターゲットなら猟歴に関係なくライフル銃の実射感覚を、早期に知ることもできる。
(了)
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