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待てば必ずやって来る。秘密の待ち撃ち猟
本稿は『けもの道 2020秋号』(2020年9月刊)に掲載された記事を note 向けに編集したものです。掲載内容は刊行当時のものとなっております。あらかじめご了承ください。
「鹿や猪の通り道で待ち、来たときに撃てば簡単に獲れるのでは……」
銃で鹿や猪を獲る狩猟者にとって、こんなラクな方法で獲物を得ようと考えたことは一度や二度ではないだろう。とはいえ、山に入ればケモノの通り道は分かるものの、実際にはどんな時間帯、状況下でそこを通るのかまでは分からない。しかし、いつ通るか分からない獲物のためにいつまでも待ち続けることも出来ない。──「待ち撃ち猟」が可能なのは〝いつ〟なのか?
そんな疑問に一つの答えを与えてくれる取材がついに実現した。猟果が得られる待ち撃ち猟の実際をお届けする。
文・写真|佐茂規彦
「待ち撃ち猟」に触れる一通の手紙
令和2年5月、編集部に届いた一通の手紙。内容は、市販のアルミ作業台を加工したオリジナルの猪皮剥ぎ台を紹介する投稿だった。ベテランの猪猟師の多くはオリジナルの皮剥ぎ台を自作していて、そこには長年の経験から得た工夫が凝らされている。その実物を見られることはとても興味深い。
しかし、さらに気になることがその手紙には書かれていた。
その投稿者は皮剥ぎ台を早く使ってみたいため、忍び猟に出かけたという。そこは「待ち撃ち場」で、「待つこと20分」で猪がやって来たそうだ。風向きが悪くその猪は獲り逃したものの、さらに「それから約30分後」に「またもや猪」がやって来たという。
手紙の主が「待ち撃ち猟」を実践している様子がその手紙にサイドストーリーとして書かれていた。しかし、本当にこんな猟法が可能なのか? 可能ならばどうしてもその現場を見てみたい。普通は誰にも教えたくない猟法、猟場とは思うものの、手紙を読み終わった筆者はさっそく投稿者である中野宏文さんに連絡し、詳しい場所を明かさないことを条件に同行取材の許可を取り付けた。
「待つ」だけではない待ち撃ち猟
待ち撃ち猟で最も大事なことは「待ち場」の選定だろうことは誰でも容易に想像できる。もちろんそれは間違いではない。しかし、猟果を得られるファクターは場所だけではないのだ。
取材初日。出発時間はまだ夜明けも迎えていない午前4時前。そこから車と徒歩で1時間ほどかけ、夜明けを迎える直前までに秘密の待ち場にひっそりと辿り着かねばならない。
「動物の気持ちになって考えることがまず大事やね」
車を停め、暗い林道を歩いて登りながら中野さんが待ち撃ち猟の心構えを小声でつぶやく。人里が近く、定期的に有害駆除などで人が山に入っている中で動物がいつ、どこを歩くのか。彼らは人間との接触を嫌うため、基本的には夜間にエサを食べ、明るくなるまでには暗い道を通って山中の寝床に帰る。そのとおり道の途中で待ち伏せれば、「こんな時間に人間はいない」と油断した動物と出会えるわけだ。
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