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【猪犬閑話】姿芸両全を考える

本稿は『けもの道 2018秋号』(2018年9月刊)に掲載された記事を note 向けに編集したものです。掲載内容は刊行当時のものとなっております。あらかじめご了承ください。


文・写真|八木進

猟師が追求する姿芸両全とは

猪犬ししいぬを使っての猪猟師にとって「姿芸両全しげいりょうぜん」は魅力ある言葉である。日本犬の愛好家にとっては特に「姿」に固執する猟人が多く、「姿芸両全」は究極の目標とも言える。

日本犬を例にとると「姿」が良い犬とは一般的には日本犬保存会(以下、日保)の日本犬標準が基になっているようである。日本各地の地犬を日本土着の「日本犬」として保存が開始されたころ、当然として体型の基準が必要となり、当時の状況を詳細に調査した理想の体型を標準とし、昔も今も不変となっている。

しかし、現在の日保の日本犬は展覧会を主眼に累代された「優秀な体型」の犬であるが、猟芸も変わらず保存されているとは言い難い。我々猪猟師にとっていくら体型が素晴らしくとも猪が獲れなくては猪犬とは言えないし、姿よりも猟芸が第一となる要因ともいえる。

現在、血統登録犬ではないが「姿芸両全」を追求する日本犬愛好家は少数存在する。但し、猪犬としての理想の姿は日本犬標準に合わない点もある。私個人としてその点は「ギャップ」と感じているが、90年前に日本犬標準を策定した優秀な人たちが「優秀な猟人」では無かった為であろう。

その「ギャップ」を文章にするのは難しいが、例えば、日保標準では中型犬雄犬の体型を「猪犬型」(がっしりした体型)、反面、細身タイプを「鹿犬型」というイメージで捉えている。

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