【猪犬訓練競技大会レポート】平成30年度徳島県猟友会
文・写真|佐茂規彦
安全狩猟のための訓練
猟期開始1ヶ月前の平成30(西暦2018)年10月7日、吉野川猪犬訓練所(徳島県)では恒例の猪犬訓練競技大会が開催された。
猪犬に関する競技会が少なくなる中、この大会は全国でも珍しく県猟友会主催で毎年、猟期前に行われている。猟師の減少に伴い、競技会の規模も縮小傾向にあるものの、今回も実猟犬たちが大猪を前に立ち回り、猟期に向けて弾みをつけた。
開会前には徳島県猟友会の濱口靖徳会長が参加者たちに、猪犬による咬傷事故防止を強く呼びかけた。徳島県では平成30年3月17日、猪猟中に1頭の猟犬が住宅敷地に入り込み、小学生の女児ら3人に咬みつくという痛ましい事故が発生している。猪猟における最優先事項は猪を獲ることではなく、安全に事故なく終猟を迎えることであることは言うまでもない。
猪猟師は訓練を通じて犬に対猪の経験を積ませるだけでなく、安全に猟を行うために自分の犬の性格や行動を知り、コントロールする技量や手段の研鑽にも努めなければならない。
採点方法
本大会はベテラン猟師でもある猟友会役員の審査員3名、それぞれ持ち点30点ずつ、合計90点満点で争われた。審査は猪犬の猟芸のポイントとなる次の3項目(各10点満点)について行われる。
捜索
「捜索」とは猪を探そうとする行動であり、偶然の場合を除き、猪猟において「捜索」行動無しに猪を獲れることはあり得ない。
審査のポイント …… 高鼻、地鼻などの鼻の使い方、ラウンドしてからの発見なのか、鼻による捜索なしでの目視による発見なのか、など。鳴き
発見した猪に対する行動の1つ。「咬み」一辺倒の犬では猪を走らせるだけであったり、犬自身も受傷する確率が高くなるため、実猟では「鳴き」の態様が重視される。
審査のポイント …… 吠え込み時の猪までの距離(直前・相当の距離・遠方)、鳴き声の迫力の有無、そもそもの鳴きの有無、など。止め(咬み)
猪の逃走を阻止するための「止め(とめ)」(※「とどめ」ではない)の猟芸こそ猪犬の真骨頂だ。派手に「咬み」さえ入ればいいというものではなく、その部位や頻度、「鳴き」との絡み具合に見どころがある。
審査のポイント …… 咬みの部位(鼻・耳・頚部・脇下・前脚・後脚・その他)、そもそもの咬みの有無、など。
出場犬と大会結果
結果は出犬20頭中、ベテラン猟師の十河隆史さんのヤマ号が78点(90点満点)で優勝した。若手の上野浩嗣さんがムク号で惜しくも70点の第2位に選ばれた。そして紅一点の出犬者である宍戸優美さんはキング号で65点の第3位につけるという、昨今の狩猟界を反映したかのように、若手・女性の存在感がキラリと光った大会結果となった。
【迫真!】優勝・ヤマ号のフットワーク
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