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知っておきたい狩猟犬の受傷時の応急処置法
本稿は『けもの道 2020秋号』(2020年9月刊)に掲載された記事を note 向けに編集したものです。掲載内容は刊行当時のものとなっております。あらかじめご了承ください。
犬と一緒に狩りをしていると、犬も人も思わぬ怪我をすることがあります。今回は人間の怪我はともかく犬が怪我をした時に、可能な限り猟野の段階で行った方が良い応急処置法をご紹介したいと思います。
文|グリーンピース動物病院(兵庫県)院長 遠藤 貴壽氏 獣医師・猪猟師
猟犬の受傷例
猟犬が受傷した時にまず考えなければならないことは、その場で、もしくは帰宅後数日以内に死ぬことを何とかして防ぐことでしょう。そしてその次に、受けてしまった外傷が、出来れば後遺障害が残らずになるべく早くに治癒出来るようにすることです。
では、猟犬が狩猟をしていて怪我をするのはどんな場合なのでしょうか。
野生動物相手の受傷
まず野生動物が原因の怪我では猪や鹿を狩る場合に、猪に切られたり体当たりされたりして切り傷、骨折、内臓損傷を負うことが圧倒的に多いように感じます。
次に聞くのは、本州鹿の角に引っ掛けられたり刺されたりすることですが、こちらの方は鹿の性質がそんなに攻撃的でないためか少ないように感じます。
角で突いて来て侮れないのはニホンカモシカでして、天然記念物で狩猟獣ではないのですが、犬にはそんな区別は理解できずカモシカに絡むことが時々あります。カモシカは見た目よりも攻撃的で、その短い角で猟犬を突いて怪我をさせたり、カモシカが得意な場所である切り立った岸壁の上に逃げ、そこまで追いかけて来た猟犬を岩棚の上から突き落として殺してしまうことがあると聞きます。
カモシカによる突き傷は、表面的には小さなもので大した怪我には見えないのですが、肝臓や肺など重要な臓器に達して致命傷になっていることがあります。私自身、私の繁殖した犬で、行った先でよく仕事をすると高い評価を得ていたのがいたのですが、カモシカに突かれて3日後に死んだということも経験しています。
私は熊猟はやりませんので、ツキノワグマやヒグマに絡んで自分の犬が受傷した経験はありませんが、熊猟をやる犬の場合にはクマに咬まれたり強力な前足で叩かれたりして怪我を負うことはあるかと思います。
マムシによる咬傷も比較的多い怪我で、大物猟犬だけでなく鳥猟犬でもしばしば経験することと思います。犬がマムシに咬まれるとその部分がひどく腫れますので、「またやられたか」となりますが、犬はマムシ毒に対してはそんなに反応しないようで、ほとんどの犬は放置していても3日から1週間程度で回復します。ただ、犬によってはマムシに咬まれた後、肝機能に異常を来たす事例がありますのでご注意ください。
交通事故
その次に多く感じるのが交通事故です。
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